135話 『この町の七不思議 その5』口裂け女①
※アラト視点
夕方。
帰り道。
「……。」
なんでこうなった。
「……。」
隣。
キクエ。
その前。
セイコさん。
「……。」
帰るだけだったはずだ。
普通に。
普通に帰るだけ。
「……。」
なのに。
「……。」
「……いるね。」
セイコさんが小さく言う。
たまたまセイコさんに会えてよかった。
「……。」
「……。」
いる。
後ろ。
「……。」
振り向かない。
振り向いたらダメな気がする。
「……。」
でも。
「……。」
分かる。
距離。
「……。」
さっきより、
近い。
「……。」
キクエがノートを開く。
「対象、確認。」
「対象で決定!?」
思わず小声で言う。
「……。」
「落ち着いてください。」
「落ち着きすぎだろ。」
「状況を把握する必要があります。」
「把握してどうすんだよ。」
「対処します。」
「……。」
できるのか?
ほんとに?
「……。」
セイコさんが、少しだけ立ち止まる。
「……。」
やめろって。
止まるなって。
「……。」
空気が、変わる。
「……。」
重い。
「……。」
後ろ。
「……。」
足音。
コツ。
コツ。
コツ。
「……。」
いや、待て。
こんな歩き方、
してたか?
「……。」
さっきまで、もっと、
自然だった気がする。
「……。」
なんか、違う。
「……。」
「……ねえ。」
セイコさん。
「……。」
「……見る?」
「見ない。」
即答。
「……。」
「……そうだね。」
軽い。
軽いけど。
「……。」
ちょっとだけ、怖い。
「……。」
キクエが小さく言う。
「条件、成立しています。」
「……は?」
「遭遇条件を満たしています。」
「だろうねぇ!?」
「重要です。」
「……。」
重要なのはこれからなんだよ!
きさらぎ駅みたいなのはまっぴらごめんだ!!
「……。」
その時。
「……ねえ。」
後ろから、声。
「……。」
止まる。
「……。」
空気が、固まる。
「……。」
聞こえた。
はっきり。
「……。」
「……ねえ。」
女の声。
「……。」
「……あたし、きれい?」
「……。」
「……。」
誰も、答えない。
「……。」
あぁ、これ、知ってるやつだ。
答えたらダメなやつだろ、これ。
絶対。
「……。」
「……ねえって。」
少しだけ、
近い。
「……。」
「……あたし、きれい?」
「……。」
「……。」
喉が、乾く。
「……。」
どうする。
これ。
「……。」
その時。
「……。」
セイコさんが、
少しだけ前に出る。
「……。」
「……きれい、ですよ。」
!?
正気!?セイコさん!!
「……。」
「……。」
少しだけ、間。
「……。」
「……ほんと?」
「……。」
声が、変わる。
「……。」
近い。
「……。」
やばい。
「……。」
「……じゃあ。」
「……。」
「……これでも?」
「……。」
見てない。
見てないけど。
分かる。
「……。」
“何か”が、
変わった。
「……。」
空気が、
歪む。
「……。」
キクエが小さく言う。
「……対象、変化。」
「実況すんなよ!」
「記録です。アラト君もカメラを」
「できるかよ!!」
「必要です。」
「……。」
あぁ、いいよ。
わかったよ。
死んだら化けてやる。
「……。」
その時。
「……。」
セイコさんが、小さく言う。
「……。」
「……大丈夫。」
「……。」
何が?
「……。」
「……まだ、いける。」
「……。」
「……。」
意味は分からない。
でも。
「……。」
少しだけ、落ち着く。
「……。」
その時。
「……。」
キクエが、ぽつりと言う。
「……ポマード、あります。」
「……。」
「……。」
「……ぽまーど?」
「はい。」
「……。」
セイコさんが、小さく笑う。
「……。」
「……じゃあ、使おうか。」
「……。」
ぽまーどって何?
「……。」
分からない。
分からないけど。
「……。」
やるしかないらしい。
一個もわかんないけど。
「……。」
その時。
「……。」
遠く。
誰かが、こっちを見ている気がした。




