133話 『この町の七不思議 その4 きさらぎ駅』
※アラト視点
『この町の七不思議 その4
――存在しない駅“きさらぎ”――』
新聞部 記者:キクエ
本町において、「電車に乗車中、存在しない駅へ到達する」という現象が報告されています。
本紙では、当該現象の実在性および挙動の確認を目的とし、現地調査を行いました。
■観測結果
夜間、通常の路線を利用中、名称不明の駅に到達する事例を確認しました。
当該駅は周囲に人影が存在せず、環境音も極めて少ない状態でした。
また、通信機器は圏外となり、外部との連絡が困難な状況が確認されています。
■既存報告との比較
従来の事例においては、「線路を辿ることで帰還する」という報告が一般的とされています。
しかし本件では、線路を利用せず、駅構内を進行することで元の場所へ帰還する結果となりました。
■帰還について
当該現象からの帰還は確認されています。
ただし、帰還時には時間経過の不一致が発生しており、現実の時間との間に差異が生じている可能性があります。
■考察
本現象は、単一の条件で成立するものではなく、複数の要因が関与している可能性が考えられます。
また、帰還方法についても再現性は確認されておらず、偶発的な要素を含む可能性があります。
■総括
本件は、いわゆる「きさらぎ駅」と類似する現象であり、本町における七不思議の一つとして記録するに値すると判断します。
なお、現象の詳細および再現条件については不明点が多く、引き続き検証が必要です。
なお今回は収録の動画はございません。
画像は何枚か残っておりますのでご了承ください。
――――――――――
放課後。
部室。
「……。」
紙を机に置く。
「どうでしたか。」
キクエ。
「……どうもこうもねぇよ。」
思わず出る。
「……意味分かんなかった。」
「そうですね。」
「認めんのかよ。」
「事実です。」
「……。」
それはそうだけど。
「……。」
少しだけ、間。
「……なあ。」
「何でしょう。」
「……なんで帰れたんだよ。」
「……。」
キクエは少し考える。
「従来の事例とは異なります。」
「いやそういうことじゃなくて。」
「線路ではなく、駅構内を進行した点が特徴です。」
「……。」
「帰還条件は不明です。」
「……。」
即答に近い。
「……。」
「……なあ。」
「はい。」
「……あれ、もう一回やれって言われたら。」
「……。」
少しだけ、間。
「……行きますか?」
「行かねぇよ!!」
反射で叫ぶ。
「……。」
キクエは頷く。
「合理的です。」
「どの口が言ってんだ。」
「……。」
「せっかく動画も撮ってたのに。何も写ってねぇし。」
ぼやく。
あの『不思議世界』での出来事は数枚の写真でしか伝えられない。
部室。
静か。
「……。」
窓の外。
部活の声。
風の音。
ちゃんと、ある。
「……。」
「……。」
少しだけ、安心する。
「……。」
キクエがノートを閉じる。
「次です。」
「……もうよくない?こないだの朝帰りで、親に死ぬほど怒られたんだけど?」
「まだ四つ目です。」
「……聞いて?キクエは怒られなかったのかよ。」
「……。」
「……。」
「黙秘します。」
絶対怒られてんじゃん。
「……で?次こそ口裂け女?」
「そうです。」
「……。」
来た。
「……それ、どうすんだよ。」
「出現条件は満たしています。」
「……それを買いに行ったわけだしな。」
「はい。」
即答。
「……。」
キクエはノートを見る。
「……ちょっと休まない?」
「駄目です。」
「……。」
即答だった。
「……。」
どうやったらこの幼馴染みを止められるか。
石臼を箸で突くようなものか。
ため息は静かにこぼれて消えた。




