132話 『この町の七不思議 その4』きさらぎ駅③
駅の奥。
「……。」
暗い。
何も見えない。
「……。」
でも。
「……。」
分かる。
感じる。
「……行くよ。」
そのまま歩き出す。
「ちょ、ちょっと待ってって!」
アラト君。
「ほんとにそっち行くの!?」
「……うん。」
「何があんの!?」
「……分かんない。」
正直に言う。
「分かんないのかよ!!」
「……でも。」
止まらない。
「……こっちが、“ズレてない”。」
「は?」
「……。」
うまく説明できない。
でも。
「……こっちだけ、変じゃない。」
「……。」
キクエちゃんが、小さく呟く。
「……興味深いです。」
「え?」
「……。」
「いや分かんねぇよ!!」
「……。」
少しだけ、笑いそうになる。
「……大丈夫。」
「何が!?」
「……多分。」
震えるアラト君の手を握る。
ビクンとして、すぐ握り返してきた。
必要ないかもだけど、キクエちゃんも。
少ししっとりしてた。
歩く。
一歩。
また一歩。
「……。」
暗い。
でも。
「……。」
さっきより、怖くない。
口の中の飴を転がす。
「……。」
味が、
また変わる。
「……。」
層が、
変わる。
「……!」
アラト君が声を上げる。
「なんか今、寒くなかった!?」
「……。」
答えない。
「……。」
進む。
「……。」
ふと、前を見る。
「……。」
いる。
「……。」
ユウト?
「……。」
さっきより、
はっきり分かる。
「……。」
少しだけ、
安心する。
「……。」
やっぱり。
「……ここだ。」
そのまま、
手を伸ばす。
「え?」
アラト君。
「……何してんの?」
「……触る。」
「は!?」
「何を触るの!?」
「……大丈夫。」
「だから何が!!」
そのまま、
前に。
触れる。
「……。」
何もないはずの場所。
でも。
「……。」
触れた。
一瞬。
空気が、
弾ける。
「……っ!?」
視界が、
白くなる。
音が、
戻る。
——ウィーン。
「……!?」
目を開ける。
光。
朝。
自動ドア。
「……は?」
アラト君が飛び出す。
「朝!?さっき夜だったよな!?」
「……。」
外。
明るい。
人の声。
車の音。
「……。」
振り返る。
そこには、
ただのホールの入口。
「……。」
何もない。
「……。」
キクエちゃんが言う。
「帰還しましたね。」
「軽いな!!」
「……。」
少しだけ、息を吐く。
「……。」
中を見る。
いつもの音。
いつもの光。
「……。」
ユウト。
「……。」
いる。
「……。」
小さく頷く。
「……戻った。」
やっぱりちゃんとは見えないけど。
いつもより見えた。
そう思った。




