130話 『この町の七不思議 その4』きさらぎ駅①
夜。
駅。
「……。」
静か。
いや、静かすぎる。
「……。」
風さえ吹いていない。
「……。」
「……なあ。」
小さく言う。
「……ここ、どこ?」
「きさらぎ駅です。」
キクエ。
即答。
「……いや、それは聞いた。」
「存在しない駅です。」
「……。」
「……は?」
「都市伝説です。」
キクエは、いつも通りの調子で言う。
「電車に乗車中、見知らぬ駅に到着する事例が報告されています。」
「……。」
「そのまま降車し、状況を記録するケースが多いです。」
「……記録?」
「はい。」
「主に、インターネット掲示板です。」
「……。」
「実況形式で投稿される傾向があります。」
「……。」
周りを見る。
暗い。
俺達以外、誰もいない。
「……。」
「報告内容は、概ね共通しています。」
キクエは続ける。
「現在位置不明。」
「周囲に人がいない。」
「異常な静寂。」
「……。」
「……それ、今じゃね?」
「一致しています。」
「一致してますじゃねぇ!?」
「また、」
キクエは一拍置く。
「通信状況の悪化が確認されています。」
「……。」
「携帯電話が圏外になる、または通話が成立しない等の事例です。」
ポケットからスマホを取り出す。
「……。」
圏外。
「……。」
「……おいおい。」
「はい。」
「……まじ?」
「さらに、」
キクエは止まらない。
「周囲環境についても異常が報告されています。」
「……。」
「周囲の音が存在しない。」
「時間の感覚が曖昧になる。」
「外部との接触が困難になる。」
「……。」
「……。」
セイコさんが、小さく呟く。
「……。」
「……ほんとだね。」
「……なあ。」
「……。」
「……帰れる、よな?」
「帰還したとされる事例も、存在します。」
「あるの!?」
「はい。」
「線路を辿ることで、元の世界に戻ったとする報告があります。」
「……線路?」
「はい。」
「来た方向へ進むと、“光”が確認されるとされています。」
「……。」
「その光を通過することで、帰還が可能であると記述されています。」
「……。」
「……じゃあ、そうしようぜ。」
思わず言う。
「はい。」
キクエは頷く。
「ただし、」
一拍。
「帰還後の時間経過に関して、異常が報告されています。」
「……。」
「……ん?」
「数日から、数十年の経過が確認された事例があります。」
「……。」
「また、」
「本人の記憶と現実の時間が一致しないケースも存在します。」
「……。」
「……。」
「……いや、」
「……それ戻れてるの?」
「定義によります。」
「定義!?」
「……。」
静寂。
「……なあ。」
「……。」
「……それ、どっちがマシなんだよ。」
「とりあえず、アラト君。」
キクエはにっこり笑った。
「写真、もしくは動画をお願いします。」
幼馴染みの通常運転が少しだけ、ありがたかった。
130話まで来ました。
おじさん不足ですがお付き合いください。
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