127話 『この町の七不思議 その3 花子さん』
『この町の七不思議 その3
――公園のトイレに現れる“花子さん”――』
新聞部 記者:キクエ
本町において、「公園の公衆トイレにおいて、呼びかけに応答する存在が確認される」という目撃情報が報告されています。
本紙では、当該現象の実在性および詳細を確認するため、現地調査を行いました。
■観測結果
対象の多目的トイレ内において、ノックに対する応答が確認されました。
さらに、内部に人物と見られる存在が確認され、簡単な会話が成立することを確認しました。
■対象の特徴
対象は幼い女性の姿をしており、外見的には一般的な人間と大きな差異は見られませんでした。
しかしながら、以下の点において通常とは異なる挙動が確認されています。
・自己の名称を持たない、もしくは認識していない
・自らを「花子さん」と認識していない
・現在位置を否定する発言を行う
■発言内容について
対象は、「ここではない」「待っている」といった発言を確認しています。
これらの発言から、当該存在は特定の場所や対象に対して何らかの関係性を持っている可能性が考えられますが、詳細は不明です。
■行動
対象は突如として移動を開始し、観測者の視界から消失しました。
なお、移動の契機となる要因については特定に至っていません。
■総括
本現象は、一般的に知られる「トイレの花子さん」とは性質が異なる可能性があります。
本町における七不思議の一つとして記録するにあたり、今後は分類の再検討および追加観測が必要であると考えられます。
なお、『この町の七不思議シリーズその1~3』までの情報と、取材時に収録した動画を下記ホームページにて掲載しております。
是非ご覧になってください。
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放課後。
部室。
「……。」
紙を机に置く。
「どうでしたか。」
キクエ。
「……いや。」
言葉に詰まる。
「……本当に自治体のホームページに掲載するんだな。」
「はい。」
「……大丈夫なの?これ。」
「問題ありません。」
「そうなのか?」
「はい。」
即答だった。
「……。」
キクエはノートを閉じる。
「今回の対象は、従来の花子さんとは異なる個体です。」
「個体って言うな。」
「分類上必要です。」
「……。」
なんかもう疲れた。
「……。」
「……あれさ。」
「何でしょう。」
「“待ってる”って言ってたじゃん。」
「はい。」
「……何待ってんだよ。」
「不明です。」
「……。」
「ですが、」
キクエが少しだけ考える。
「踏切の現象と類似点があります。」
「……は?」
「“通過”もしくは“移動”を前提とした挙動です。」
「……。」
「対象は、特定の何かを待機している可能性があります。」
「……。」
いや。
「……。」
分かるかそんなもん。
「……。」
「……。」
少しだけ、間。
「……。」
「……次は?」
「はい。」
キクエはすぐに次のページを開く。
「四つ目です。」
「まだ四つ目か。」
「継続が重要です。」
「……。」
やる気がみちみちている。
「……何やんの。」
「口裂け女です。」
「……。」
来た。
「……それ、どうすんだよ。」
「対策が必要です。」
「対策?」
「はい。」
キクエはノートを見ながら言う。
「目撃情報をまとめると、対象は“飴”に反応していると考えられます。」
「……。」
「……飴?」
「はい。」
「……なんで。」
「不明です。」
即答だった。
「遭遇した方々は同じ飴を所持、もしくは口に含んでいたそうです。」
キクエは少しだけ顔を上げる。
「都内でしか買えない、ある飴です。」
「……。」
飴、か。
「……それ、買いに行くの?」
「はい。」
「……。」
「都内か、結構遠出になるな。」
「問題ありません。」
おめーはそーだろーよ。
「……。」
キクエが言う。
「取得に向かいます。」
「……。」
なんでこんなことになってるんだろう。
「……。」
でも。
「……。」
都内か。
少し楽しみではある。




