125話 『この町の七不思議 その3』花子さん①
※アラト視点
夜。
公園。
「……。」
暗い。
昼間は普通の公園なのに、夜だと別の場所みたいに見える。
「ここです。」
キクエ。
「……ほんとにここ?」
「はい。」
「……。」
その奥。
トイレ。
「……。」
多目的トイレ。
一つだけ、ぽつんとある。
古い。
ちょっと汚い。
それだけ。
「……。」
それだけのはずなんだけど。
「……。」
なんか、嫌だ。
「……。」
少し離れたベンチ。
「……。」
おじさんが座ってる。
煙草。
こっちは見てない。
「……。」
その横。
サクラさん。
立ったまま。
こっちを見てる。
「……。」
何しに来たの?あの人たち。
「……。」
「では、始めます。」
キクエ。
早い。
「いや、待て待て待て。」
「何ですか。」
「早い。」
「時間がもったいないです。」
「いや、でもほらさ?」
「問題ありません。」
「きけよ、せめて。」
「……。」
会話にならない。
「……。」
キクエはノートを開く。
「対象は、個室内の存在。」
「……。」
「ノックに応答するかどうかを確認します。」
「……嫌だな。」
「なぜですか。」
「怖いからだよ。」
「大丈夫です。」
「何が大丈夫なの!?」
「……。」
通じない。
「……。」
セイコさんが小さく笑う。
「まあまあ。」
「……。」
よく笑ってられるな。
「……。」
キクエがトイレの前に立つ。
もう何言っても無駄なのでカメラを回している。
「では。」
「……。」
「一回目。」
すごいな。
コンコン。
「……。」
静か。
「……。」
ほらな。
「……。」
「……反応なし。」
キクエが淡々と言う。
「当たり前だろ。」
「再試行します。」
「……。」
「二回目です。」
コンコン。
「……。」
静か。
「……。」
やっぱり。
「……。」
ほらな、何も——
「……はい。」
「……。」
「……え?」
小さい声。
中から。
「……。」
「……今、なんか言った?」
「言いましたね。」
キクエ。
普通に返すな。
「……。」
セイコさんが少しだけ顔を上げる。
「……。」
ベンチの方。
「……。」
おじさん、動かない。
煙草の煙だけ。
ゆっくり流れてる。
「……。」
サクラさんだけ、
少しだけ目を細めた。
「……。」
「……もう一度、確認します。」
キクエ。
「やめろって!!」
止める前に。
コンコン。
「……。」
少しだけ、間。
「……。」
「……ちがう。」
「……。」
「……は?」
違う?
「……。」
「……花子さんですか?」
キクエ。
冷静すぎるだろ。
「……。」
中。
少しだけ、沈黙。
「……。」
「……ちがう。」
「……。」
「……違うの!?」
思わず声が出る。
「……。」
何がだ。
「……。」
セイコさんが、小さく言う。
「……なんか。」
「……。」
「……違うらしいね。」
「……。」
キクエはペンを走らせる。
「対象、自己を花子と認識していない可能性。」
「果たしてそういうことなのかな。」
「記録は重要です。」
「……。」
そうかなあ?
「……。」
その時。
「……。」
トイレの中。
奥。
「……。」
ドン。
「……!?」
何かが、当たる音。
「……。」
「……。」
誰も動かない。
「……。」
もう一回。
ドン。
「……。」
「……なあ。」
「なんでしょう。」
「……今の、なに。」
「不明です。」
即答。
「……。」
セイコさんがじっと奥を見る。
「……。」
キクエも、見る。
「……。」
俺も、見る。
「……。」
ベンチ。
「……。」
おじさん、動かない。
「……。」
サクラさんだけ、
少しだけ前に出た。
「……。」
でも、止まる。
「……。」
「……。」
トイレの中。
「……。」
その時。
「……。」
コン。
「……。」
ノック。
「……。」
今度は、
「……。」
向こうから。




