122話 『この町の七不思議 その2』踏切②
静か。
さっきまで鳴っていた音は、もうない。
「……。」
早く帰ろうよ。
そう思ってる。
思ってるんだけど。
「……。」
誰も、動かない。
セイコさんは思案顔。
キクエ。
「さっき。」
「……。」
「……何か、いました。」
「……。」
え、
何急に。
「……。」
でも。
「……見えたわけじゃない。」
「……。」
「……。」
キクエはノートを見ている。
「検証に移行します。」
「……移行すんの?」
「必要です。」
「……。」
即答だった。
「……何すんの。」
「確認です。」
「……何の。」
「現象の条件。」
「……。」
怖い言い方すんな。
「……。」
キクエは踏切を見る。
「遮断機は上がったまま。」
「ランプは点灯していない。」
「音のみ発生。」
「……。」
ぶつぶつ言ってる。
「……。」
「アラト君。」
「……なに。」
「踏切の中に入ってください。」
「は?」
「一歩で構いません。」
「……。」
は?
「……やだ。」
「なぜですか。」
「呪われそうじゃない?」
「合理的ではありません。」
「非合理が起きてんだよ!」
「……。」
キクエは少しだけ考えて、
「では、私が。」
「やめろって!」
一歩、踏み出そうとする。
反射で腕を掴む。
「……。」
「……危険性は低いです。」
「わかんねぇだろ!?」
「……。」
その時。
「……二人とも。」
セイコさん。
「……なに。」
「……私が入ってみるよ。」
「……。」
キクエ、こっち見る。
やめろ、その目。
「……。」
「……いや、俺が行くよ。」
変な汗が出てくる。
「一歩だけな。」
「はい。」
キクエが頷く。
「……。」
踏切を見る。
「……。」
何もない。
「……。」
ゆっくり。
足を上げる。
「……。」
踏み込む。
カン。
「……?」
音。
一回だけ。
鳴る。
「……?」
振り向く。
「……。」
何もない。
「……。」
もう一歩。
踏み込もうとした、その時。
カン、カン、カン。
「……!」
音が、戻る。
「……!」
慌てて戻る。
「……!」
音。
止まる。
「……。」
「……。」
「……。」
「……俺が入ると、止まった?」
「……。」
キクエがノートを見る。
「……逆です。」
「は?」
「アラト君が入った時のみ、“単発の音”に変化しました。」
「……。」
「継続音ではない。」
「……。」
セイコさんが小さく言う。
「……。」
「……これ。」
「……。」
「来る音じゃない。」
「……は?」
「……。」
「……待ってる音。」
「……。」
空気が、少し変わる。
「……。」
誰もいない踏切。
「……。」
なのに。
「……。」
“通るのを待ってる”。
「……。」
キクエが静かに言う。
「……条件が見えてきました。」
「見えてきた?」
なんか置いてかれてる感覚。
「現象は、通過を前提としています。」
「……通過。」
「音は、合図です。」
「……。」
「“通れ”という。」
「……。」
その時。
ふと、さっきのことを思い出した。
その考察が正しいとすれば
“俺たちは誰も通っていない。”
“なのに音は止まった。”
考察が間違っている可能性もある。
だけど、これが正しいと仮定するなら。
さっき、この踏み切りを、
“何かが、通った?”




