121話 『この町の七不思議 その2』踏切①
※アラト視点
夜。
パチンコ屋の前。
結局今日も来てる。
断れない。
いや、断った方が怖いというか。
キクエ。
「……今日で二つ目です。」
「そうだな。あと五つもあるのか。」
「楽しいですね。」
何がだよ。
「場所はこの先です。」
「……。」
行きたくない。
「行こっか。」
セイコさんは軽い。
「……。」
その横。
おじさん。
「……俺“は”行かん。」
「え?」
セイコ。
「なんで!?」
「……毎回付き合ってられん。」
それだけ。
「……。」
そりゃそうだ。
「えー。」
「……好きにしろ。」
くるっと背を向ける。
そのまま店の方へ戻っていく。
「……。」
ほんとにいっちゃったわ、あの人。
ちなみにサクラさんも今回はいない。
「……。」
「じゃあ、行こっか!」
セイコさん。
軽いなぁ。
「……。」
結局、歩き出す。
夜の道。
街灯。
住宅街。
「……。」
静か。
「……。」
後ろ。
「……。」
……なんとなく。
「……。」
振り向く。
「……。」
何もいない。
「……。」
気のせいか。
「……。」
歩く。
「……。」
キクエがメモを見ながら言う。
「今回は、踏切の音です。」
「……音?」
「はい。」
「……。」
「遮断機が下りていないのに、警報音だけが鳴る。」
「……。」
それ、単純に故障じゃねぇの?
「発生時間は、夜間。」
「……。」
「……。」
しばらく歩く。
「……。」
見えてきた。
踏切。
「……。」
「因みにここは、飛び込みが異様に多いそうです。」
「……。」
やめろよ、ギリギリでそういうこと言うの。
キクエをジト目で睨んどく。
すごくいい顔を返してきやがった。
線路。
遮断機。
信号。
全部、普通。
「……。」
「……ここです。」
キクエ。
「……。」
止まる。
「……。」
音はしない。
「……。」
何も起きてない。
「……。」
「……ねえ。」
セイコさん。
「……なに。」
「静かすぎない?」
「……。」
言われて気づく。
「……。」
確かに。
「……。」
音がない。
虫の声も。
車の音も。
風の音も。
「……。」
ない。
「……。」
「……。」
キクエはメモを取っている。
「環境音、極めて少ない。」
「いや少ないとかじゃねえよ。」
「無音に近いです。」
「……。」
「アラト君は、カメラを構えておいてください。」
「お、おう。」
スマホを動画モードで構えておく。
しばらく。
「……。」
……カン、カン、カン。
「……!」
鳴った。
踏切の音。
「……!」
反射で見る。
「……。」
遮断機。
上がったまま。
「……。」
ランプ。
点滅してない。
「……。」
でも。
音だけ。
鳴ってる。
カン、カン、カン。
「……。」
「……鳴ってますね。」
キクエ。
「……何でそんな普通なの?」
セイコさんが小さく言う。
「……変だね。」
「……。」
変だよ。
明らかに。
「……。」
セイコさん。
じっと見てる。
「……。」
踏切じゃない。
「……。」
その奥。
「……。」
「……。」
「……ズレてる。」
小さく。
それだけ。
「……。」
意味が分からない。
「……。」
音は続く。
カン、カン、カン。
「……。」
誰も来ない。
電車も。
人も。
「……。」
なのに。
「……。」
止まらない。
「……。」
「……。」
ふと。
「……。」
「あっ!」
セイコさんの声。
飛び上がる俺の心臓。
口から出るとこだった。
その時。
音が止まる。
「……。」
静か。
また。
静かすぎる夜。
「……。」
「……。」
キクエがノートを閉じる。
「……音、確認しました。」
「……。」
よしよし、今回は音だけだったな。
こわかったけど。
「……。」
踏切を見る。
「……。」
何もない。
「……。」
でも。
「……。」
何で二人とも帰ろうとしないんですかね?
「……。」
帰っていい、よね?




