119話 『この町の七不思議 その1 人面犬』
『この町の七不思議 その1
――夜の道路に現れる“人面犬”――』
新聞部 記者:キクエ
本町において、「夜の道路に人の顔をした犬が現れる」という目撃情報が複数確認されています。
本紙では、当該現象の実在性および詳細を確認するため、現地取材を行いました。
■外見的特徴
対象は犬の形状をしていますが、顔面が人間に酷似している点が特徴です。
取材時に確認された個体は、中年男性のような顔立ちをしており、視線を合わせることが可能でした。
■行動・性質
対象は人間に対して接近しますが、攻撃性は確認されていません。
また、簡単な会話が成立することを確認しましたが、その内容は断片的であり、明確な意思を持つものではないと考えられます。
■危険性について
現時点において、直接的な危害は確認されていません。
過度に恐れる必要はないものの、夜間の外出には注意が必要です。
■総括
本件は都市伝説「人面犬」に類似する現象であり、本町における七不思議の一つとして記録するに値すると判断します。
なお、当日は映像記録の取得にも成功しており、今後の検証材料として活用予定です。
――――――――――
放課後。
部室。
「……。」
紙を机に置く。
「どうでしたか。」
キクエ。
「……ちゃんとしてる。」
「はい。」
「ちゃんとしてるけど。」
「はい。」
「……なんか違くね?」
「違いません。」
即答だった。
「事実のみを記述しています。」
「……。」
まあ、そうなんだけど。
「……。」
キクエはもう次のページを開いている。
「次です。」
「早いな。」
「継続が重要です。」
「……。」
やる気が怖い。
「……何やんの。」
「踏切です。」
「……あー。」
嫌な予感。
「遮断機が下りていないのに、音だけ鳴る現象が確認されています。」
「……。」
やめたい。
「夜間の観測が必要です。」
「……また夜かよ。」
「はい。」
「……。」
即答だった。
「アラト君。」
「……なに。」
「今回の映像も、後で確認します。」
「……。」
ああ、そういえば。
「……撮ってたな。」
「はい。」
「……。」
静か。
部室。
風が入る。
カーテンが揺れる。
「……。」
次も、行くんだろうな。
「……。」
踏切。
何もないはずの場所。
「……。」
これもまた、
嫌な予感がする。




