117話 『この町の七不思議 その1』人面犬①
水曜日。
夜。
パチンコ屋の前。
「ご無沙汰してます。セイコさん。」
「キクエちゃん!ひさしぶり!」
きゃぴきゃぴしている。
「セイコさん、なんで集合場所ここにしたの?」
「分かりやすいでしょ?」
分かりやすいけども。
なんか場違い感がすごい。
その時。
入り口の扉が開く。
中からおじさんが出てきた。
何となく気だるそうに見える。
そのおじさんは、こっちを見た途端分かりやすくビクンってなった。
「おじさん!来てくれたの!?」
セイコさん。
なんか嬉しそう?
「……出口、ここしかないだろ。」
そのおじさんはぶっきらぼうに言う。
「じゃあ一緒に行こうか!」
「え?……あぁーー。……今回だけだぞ。」
心なしか、おじさんガックリしている?
別に嫌なら来なくていいのにな……。
なんだ?この人。
なんか、すごい普通。
なのに。
「……。」
なんか、変だ。
理由は分からない。
でも。
「……。」
目に残る。
「……。」
「あ、サクラも!来てくれたんだ!」
いつの間にか、いた。
女。
セイコさんと同じくらい?
たぶん。
「……。」
近い。
距離が。
なんで?
こわいんだけど。
「……。」
じっと見てる。
俺を。
キクエを。
「……。」
「……サクラ。」
サクラ?さん?が言った。
「キクエです。」
「……アラトです。」
「……。」
また、見る。
じっと。
「……。」
何だろう、この感じ。
落ち着かない。
「……。」
「アラト君。」
「……なに。」
「今日はカメラマンをお願いしますね。スマホで大丈夫なので。必要に応じて動画もお願いします。記事を書くときの説得力が段違いなので。」
あー、キクエ、テンション上がってるなぁ。
早口ですごいよくしゃべる。
ボソッと。
「この方たちも、取材対象にします。」
「やめろ。」
「なぜですか。」
「対象にすんな。」
「記録です。」
「記録すんな。」
「……。」
キクエはもうノートを取り出していた。
早い。
おじさんの方へトテトテ走っていき、
「ご職業は何ですか。」
取材?を始めた。
「……。」
おじさん。
少しだけ間を置いて、
「……確率の宇宙を泳いでいる。」
「?具体的には?」
「……スロットだ。」
「なるほど。」
なるほどじゃねえよ。
ただのクズじゃねーか。
このおっさん。
「……なんで普通に聞いてんだよ。」
「取材です。」
「違うだろこれ。」
下手したらいじめに近い何かだぞ。
サクラさんが小さく言う。
「……おもしろい。」
「え?」
思わず見る。
「おもしろい、君たち。」
キクエを見る。
「……。」
キクエ、ペンを走らせてる。
「ご職業は何ですか?」
だからやめろってそれ。
「……ごーすとばすたーず?」
だからなんなんだよ、こいつら。
セイコさんの周り大丈夫?
「なるほど。」
「だから、なるほどじゃねーって!」
あー、なんか頭痛くなってきた。
帰りてぇ。
「……。」
サクラさんが一歩近づく。
「……。」
近い。
さらに。
「……。」
俺を見る。
じっと。
「……なに。」
「……君は、普通。」
「は?」
「普通だね。」
「……。」
え?ディス?ディスなの?
「……。」
よく分からない。
「……。」
おじさんがぼそっと言う。
「……そろそろ行くぞ。」
「……。」
なんで確率の宇宙で溺れてる人が仕切ってるんですかね?
「そうだね。」
セイコさんが軽く言う。
「時間もいいし。」
「……。」
キクエが顔を上げる。
「移動ですね。」
「……わかった。」
歩き出す。
夜の道へ。
「……。」
なんか。
「……。」
すでにおかしい。
まだ何も起きてないのに。
帰りたさがすごい。
「……。」
その時。
サクラさんがぼそっと言う。
「……いるよ。」
「……え?」
「前。」
「……。」
見る。
暗い道。
街灯。
その先。
「……。」
何か。
いる。
「……。」
まだ、はっきりしない。
でも。
「……。」
見られてる。
「……。」
キクエが小さく笑う。
「……来ましたね。ほら、アラト君。スマホスマホ。」
慌ててスマホを構える。
スマホ越しに写ったそれは……。




