114話 放棄のお化け
夜。
帰り道。
イングラム。
ギィ、と鳴る。
風は涼しい。
「……。」
若いのが増えたな。
一人。 二人。
いや、もっとか。
一人死んでるけど。
「……。」
別に数えたわけじゃない。
ただ、なんとなく。
「……。」
ペダルを踏む。
「……。」
まあ、いいけどな。
「……。」
もっとマシなことやれよ、とも思う。
思うだけで、別に言わない。
「……。」
言ったところで、どうにもならんしな。
あー、煙草吸いたい。
止まる。
河原。
イングラムを立てる。
カチ、と軽い音。
ポケットを探る。
煙草。
100円ライター。
火。
「……。」
吸う。
吐く。
あーーー。
「……うまい。」
煙が、ゆっくり流れる。
夜は静かだ。
遠くで車の音。
川の水が、かすかに動く音。
それだけ。
「……。」
まぁ、いいか。
ぽつりと出る。
「……。」
あいつらの人生だしな。
好きにやるだろ。
勝手に来て。
勝手に居て。
勝手にどうにかする。
「……。」
そんなもんだ。
別に困ってないしな。
むしろ。
「……。」
気は紛れるかもしれない。
と、少しだけ思って、やめる。
「……だるい。」
考えるのも面倒だ。
煙草をもう一口。
「……。」
みんな、好きにしたらいい。
「……。」
俺も、好きにやる。
それだけだ。
それでいい。
煙を吐く。
空に溶けていく。
「……。」
しばらく、そのまま。
何も考えない。
何も起きない。
「……。」
イングラムにまたがる。
ギィ、と鳴る。
「……行くか、イングラム。」
ペダルを踏む。
夜の道。
さっきと、何も変わらない。
「……。」
……まあ、いい。
そのまま、走り出した。




