第161話 僕が出来ること
僕的にはリント王国の王都を目指す旅の中でバートン様への感謝を伝えるという一番の目的は果たされ、今年の社交シーズンのパーティー料理としてカレーなどのスパイスの買い付けやレシピの指導の件も上手く手配出来て大変満足している。
まぁ、バートン様のお屋敷にて行われたカレーの試食の時に夕食後でお腹がいっぱいなのと、初見のカレーのビジュアルから、
「これは…その…」
と、バートン様が奥歯に大量にナニかが引っ掛かったように、もの凄く言いにくそうにカレーのビジュアルを例えようとしながら、隣の奥様や料理長さんと微妙な表情でお互いを見ており、なかなかカレーを食べようとしなかった為に、
『あれか…料理のチョイスをミスったかな? 見慣れない料理だし、知っている人間としてもカレー味のアレか…などと言う二択で有名だもんな…』
と不安になったのであるが、料理人であるダグさんの一番弟子の現在のこのお屋敷の料理長さんは、暫く皿のカレーを見つめ、
「これを…師匠が…」
とスプーンでその茶色い汁を掬い上げて呟いた後に、
「自分、師匠のならイケます!」
と少々不穏な台詞と共にカレーを頬張ると、
「う…旨い!」
と掻き込むのをバートン様とイザベラ奥様が何とも言えない顔で見つめていたのであるが、その後、恐る恐るではあったがお二人もカレーを口に運んでくれたのであった。
とまぁ、食べはじめない為に思い通りに話が進まないという小さなトラブルこそ有ったが、イザベラ奥様の実家が薬草などの栽培について詳しく、上手くすればわざわざビスティア地方からスパイスを仕入れなくても幾つかのスパイスはリント王国でも栽培出来る可能性があり、ペアの新しい産業としてスパイスとそのスパイスを使った食事という新たな強みをプレゼントする事が出来たのである。
ペアの町から次の町を目指す馬車の中でベルが、
「お兄ちゃん、嬉しそうだね」
というぐらい僕は晴れやかな表情をしているらしく、それもその筈で、
「ずっと気になっていた恩返しの目処が立ったからね…ずっと借金をしていた気分だったから返済出来たような清々しさがあるよ」
と説明すると、ベルも嬉しそうに笑いながら、
「良かったね」
と喜んでくれたのであった。
そんなこんなで馬車は幾つかの町や村を経由しながら王都へと向かい後はリント王様に謁見して、リント王国のゴーレムマスターの操るゴーレムと、ニルバ王国から一緒に旅してきたゴーレム騎士団の操る新型ゴーレムとの模擬戦闘を済ませれば追放者として背負わされた厄介な義理も全て果たして、晴れて一般人として誰に気兼ねすること無く生きて行ける為に、今後僕はニルバ王国が厄介な事を言ってきたら、
「リント王国に引っ越します!」
という脅しも使えるし、何より僕が追放者でなくなったので、リント王国での商売も冒険者仕事もギルドを使ったと同時に通報される心配がなくなり、それこそやりたい放題になったのである。
『今までも金が稼げそうならテイカーさんだけをリント王国に派遣して支社を作る手もあったが、オーナーが追放された僕だと解ればリント王国の指示とかでギルド銀行の資産を差し押さえられたら困るから我慢してただけだからな…』
と、既にこの瞬間にでも支社をつくれる状況になっている事にニヤケてしまいそうになる。
それにリント王国はエルフ族寄りの国である為に壊れたマジックアイテムの中でミスリルの物はエルフ族が多く住む大陸の東の方へと回収されていくが、エルフ族が忌み嫌うドワーフ族が作った魔合金のマジックアイテムはゴミとして捨てられているという野良修復師として稼いでいる僕にしたら新たなフロンティアなのである。
『これは稼げるチャンスだ!』
と、ダンジョンなどが近くにあるリント王国側の大都市に宿泊する度に、修復して持ち歩いているマジックアイテムのエルフのマントなどで気配を消して、もう何となく雰囲気で分かる様になったゴミ置き場の場所を目指して空き時間を使い抜け出しては、
「なんでコソコソしてるの?」
と少し不満なベルに、
「他国からの国賓待遇の人間がゴミ漁りなんてしてたら何て言われるか…」
などとコソコソ話しながらゴミ置き場をチェックしては直せそうなマジックアイテムを回収し、なに食わぬ顔で戻った本日のお宿となるお屋敷では、領主の方等にリント王国で儲かりそうな情報を仕入れる毎日で、最初のうちは視察団のメンバーの方々にも、
「ジョン殿は、しばしば何処に行かれているのですか?」
などと言われていたが、我が家の稼ぎになる壊れたマジックアイテムの調査という理由を偽り無く伝えて、マジックバッグに詰め込んで来た魔力供給装置を使いベルとゴミ置き場で回収した中で効果の解る見覚えのある魔合金のマジックアイテムをチャチャっと修復して賄賂として渡すと、今では彼らは僕の為に儲かりそうな情報収集までしてくれる仲間となってくれている。
そして、ある大きな町にて視察団のリーダーである外交担当のソルドナット伯爵様が僕に、
「ジョン殿、この町はエルフ族と直接貿易をしている商会があるらしく、普通ならダンジョンで手に入れるかエルフの国でしか買えないマジックアイテムを限られた者にだけ特別に販売している店があるそうで、領主である侯爵様が気になるのであれば紹介をすると申されてますが…」
と言ってきたのであるが、僕としては、
「えっ…それって、交換条件とか有りませんか?」
と、厄介な貴族との柵を警戒すると、ソルドナット伯爵様は申し訳なさそうに、
「実は、侯爵様のお孫さんの件でジョン殿に相談したい事があるそうで…」
というので僕は、
「ムリムリ、平民の僕に何を相談するの…マジックアイテム屋さんは魅力的だけど…」
と提案を却下しようとしたのであるが、僕の隣でそのやり取りを聞いていたベルが、
「でもお兄ちゃん…困ってるのなら話だけでも聞いてあげたらは?」
と言うので、可愛い妹にいわれたからにはお兄ちゃんとして動かない訳には行かず、ソルドナット伯爵様に僕は
「とりあえず話だけでも…商会への口利きは相談事の成功報酬にしてもらって、借りを作らない様にした上で、勿論ソルドナット伯爵様も同席してくれますよね…」
とお願いすると、ソルドナット伯爵様としても、
「ニルバ王国の外交担当としても助かる…他国の貴族に恩は売れるだけ売りたいからな…」
と、領主からの相談の席に同席してくれる事となったのだが、
『まぁ、ソルドナット伯爵様という貴族の助っ人は心強いが…わざわざ追放者から一般人にやっと戻った僕なんかに相談って…何だろう…』
という不安だけはどうしても消えなかったのであった。
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