第136話 知らされる
バルディオさんとリーグさんのおかげで、ようやく鈍感系中年であるダグさんはトリシャさんから好意を向けられているという事実を知った。
彼らは見張りも兼ねてキャンプ中の夜の街道横の空き地にて焚き火を囲み秋の夜長を語り明かしたのであるが、かなり直球で二人から、
「トリシャさんの事はどう思っているんだ?」
と聞かれてもダグさんは、
「料理好きだし、人の目をしっかり見て話してくれる礼儀正しい女性…かな?」
ぐらいの認識であり、
『これは長くなるな…』
と判断した僕は、
「もしかしたら明日はあの三人は寝不足気味になるだろうから、みんなで先に寝ましょう…」
と提案すると、アル君も、
「気にはなりますが、ダグさんがあの感じならば、まだまだ本題に入らないでしょうしね」
と少し離れて焚き火を囲むオジサン三人を眺めており、
「では明日は彼らが寝不足で動けない事も考えて、我々は馬車の準備やらの為に少し早めに起きる感じでよろしいですか?」
と聞くルーベルさん達に、僕は、
「大丈夫、もうすぐカルセルの町だから出発が遅れても昼過ぎに着くのが夕方になるか、最悪到着が夜で門が閉まっていても町の外でまたキャンプすれば良いだけだから…」
と告げて、本日は先に眠る事にしたのであった。
そして翌朝、案の定オジサン達の話し合いは難航し、バルディオさんとリーグさんは、
「またまたぁ~、冗談を言わないでくださいよ…」
などと二人からの話を信じないダグさんに手こずり、1つずつ丁寧に周囲にはマル解りだったトリシャさんからダグさんへの猛アピールの数々を説明し、本人が、
「えっ、あれはそういう…」
と、やっと少し理解したのが今朝方らしく、僕は二人に、
「お疲れ様、朝ごはん食べたら幌馬車の荷台で寝て…今日は僕たちが馬車の操作や警戒にあたるから」
と労うと、バルディオさんは、
「ダグ殿もまだ頭の整理が上手く出来ないまま朝食を作っておられますので、我々も出発の準備は手伝わせて下さい」
と言ってくれ、リーグさんも、
「では、こっちはブドウパン達にご飯を食べさせてから馬車に繋ぎますので…」
と何時もの様に出発の準備をはじめてくれたので、予定どおりに出発してカルセルへと向かえたのだった。
ただ、ダグさんの作ってくれた朝ごはんのスープの味だけは寝不足と考え事のダブルパンチにより何時もの出来映えとは程遠く、塩っ辛かったので、
『まぁ、動揺もするか…』
と、察する事が出来たのである。
そんな事がありながらもイビキをかいて眠る三人のオジサンを乗せたアル君の操る幌馬車は、カルセルの町近くまでやってきて、大きな街道には行き交う人や馬車も増えており、僕も馬車を操るアル君の隣で、
『こんなに人が居れば飛び出してくる魔物も居ないだろう』
などと緊張感なく見張り役をしていたのであるが、昼過ぎ頃に到着したカルセルの町の前で僕たちは思いもよらない出迎えに会ったのであった。
それは戦闘用のカサールタイプのゴーレム二体に守られる様に並ぶ『カサール建設』とペインティングしてある建設用ゴーレム達とテント郡である。
カルセルの壁を越えた先にある外町にゴーレムを並べるには数も多く、町の壁の外の街道沿いにまるで町の入り口で旅人を迎える様に並ぶゴーレム達は少し離れた位置からも見えており、町に入る為に門の前に並ぶ人や馬車の列と、町の中からの見物客で入り口付近はいつになく賑わっていたが、
『凄い人の数だけど、入門の為の列に並ばなくてもカサールから来た皆さんには会えそうだな…』
と、あの長い列に並ぶ事なくゴーレム達の側に設営されているテントに幌馬車を進めたのであった。
そして到着したカサール建設のテント郡の中でも一際大きなテントが事務所がわりの物で、中ではニコニコ顔のクリスト様達が僕たちを待ち構えており、カイン様とゼルエルガさんの師弟の再会もそこそこに、
「ジョン君のおかげでカサール子爵家はかなり儲かっているよ。 ありがとう!」
と、カルセル近くの村での仕事も無事に終わり、正式に国王陛下から獣人族の住むビスティア地方にあるニルバ王国傘下となったコーチャー王国への壁建設の依頼が入った事の報告を受けたのだ。
『建設用ゴーレムのフレームも訓練用にしていたパンチャーゴーレムからの流用が出来たし、前に使っていたゴーレム用のショベルハンドや荷車も既に有ったから殆ど追加費用も無くて公共事業を請け負えているのだから興奮したくなるのも解るが…ゼルエルガさんとカイン君の再会をもっとゆっくりとさせてあげてよ…』
などと思いながらも話を聞いている僕に、クリスト様は、
「実は、村での仕事が終わって皆を待ってる間にねカルセルの中町にある古い建物の解体依頼が飛び込んできてね、『これは良い!』と引き受けたのはいいが建設用ゴーレムは中町の門をギリギリ通れなくてさ…」
などと困った様に語り、そして、
「コアだけ持って行って私が普通のゴーレムを起動させて潰せたから良かったんだけど、小型の建設用ゴーレムも必要だと思うから帰ったらバラッド殿に依頼したいんだ」
と、言っているので僕はアル君に、
「馬車からアレを…」
とお願いすると、アル君はテントの外へと向かい、幌馬車から2つばかり時間停止機能の無い大容量のマジックバッグを抱えて戻り、クリスト様の前のテーブルに置いてくれたのである。
僕はクリスト様に、
「ワグナにて仕入れた壊れたマジックバッグの中でも大容量の物を修復した物です。 これをゴーレム用にクリスト様にプレゼントしますね」
と告げて、僕が持ち歩いているジェロニモ号のように、これが有ればゴーレムを何処にでも連れて入れる事を説明すると、クリスト様は、
「良いのかい? こんな貴重な物を…」
と恐縮していたのだが、僕は旅の荷物入れに散々使った上で、まだ10個ほど色々なマジックバッグを使わずに持っている事を伏せたまま、
「まぁ、大きな仕事が無事に1つ終わったお祝いと、ゼルエルガさんとクリスト様の結婚祝いだと思って、どうか受け取って下さい」
と告げるとクリスト様は、王都の学校を飛び級で卒業した報告を師匠にしているカイン君と、弟子からの報告を嬉しそうに聞いているゼルエルガさんの方をチラリと見た後に、僕にコッソリと、
「今回の件が終わって国からの報酬が入ったらやっと式をあげる事が出来るよ…ジョン君からのお祝いはカサール建設という知恵を出してくれた事で十分もらっているのに…ありがとう」
と、苦しかったカサール子爵家の懐事情では公爵家の息子の師匠であるゼルエルガさんとのパーティーを開く事が少し難しかった件を耳打ちして、感謝してくれたのであった。
なので僕は、
「いえいえ、クリスト様には僕や我が家の家族達も助けていただいております…それにリント王国に居た我が家のメンバーはクリスト様がバートン様に話を通して下さったおかげで再会できたのですから、僕にとっては家族に合わせて下さった恩人…これぐらい…」
と話すとクリスト様は、
「本当に、税金免除などという契約を父上と交わしたと聞いた時は、裏切られた気分だったが、ジョン君はそこまで私の事を…」
と瞳を潤ませて僕に抱きつき、
「兄弟というよりは親子ほどの歳の差があるが、こんなに私の事を思ってくれる友がいる事を神々に感謝するよ…」
と言って下さったのであるが、僕としては、
『やっぱり、あの契約の件は根に持ってたんだ…』
と知って、改めて少し反省したのであった。
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