第128話 なんかキレちゃう
自分の優位をふりかざし威張り散らす冒険者という少し嫌な物を見せられた僕は、
『特に歳も違わない荷物係の少年を見下している奴らだって、あの時のイケイケ貴族達と同じだな…自分より格下の者を見つけたり、無理やり作り出しては安心する為に、まるで周りや自分に言い聞かせる様に威張り散らすって…』
などと、リント王国での短い学生時代を思いだしては少しイライラしてしまうのであった。
しかし、不愉快な気分だったのは僕だけではなく、アル君もムカついてはいたが自分よりも露骨に荷物係の少年の扱いに憤慨していたロイド君を、
「解りますが、ここはダンジョンの中ですので…どうか…」
と、アル君は宥めながらあの場から離れるように促していたのであった。
それは、アル君達が組んでいた子供冒険者チームの引率担当としてリーグさんから、
『ダンジョン内では他の冒険者と揉めるな…喧嘩するなら地上でしろ』
という教えを受けていたらしく、僕もリーグさんに我慢する様に促されて下の階層に向かう階段に誘導された後に、彼から、
「冒険者の集まる町の下町の子供なんてあんな扱いです…こちらに害がある場合は仕方ないですが、しかし、見るに見かねたという理解だけであの者達に注意なんてすれば、我々が居なくなった途端にあのポーターの少年は冒険者達から腹いせに何をされるか…目撃者も法律も周りに無い場所では人なんて平気で魔物になっちまいます…」
と、教えてくれたのであった。
僕はその言葉で、
「そうか…注意する事で僕の怒りはスッと消えるが、あの子には結局不利益になるんだな…」
と、無理やりに飲み込み難い現実を飲み込んではみたが、やはり後味は悪い…しかし、我々のチームの中でロイド君だけが、
「ダンジョンだとてアレは!」
と、今まで勉強ばかりで友達もおらず、しかも公爵家のお坊ちゃんに喧嘩を売る馬鹿も居なかった為に、ピュアピュアのまま真っ直ぐに育った彼だけはどうしても納得出来なかったらしく、ルーベルさんが初めて困った様子で、
「ロイド様…ロイド様のお気持ちは解りますが…」
などと、必死にUターンでもして文句を言いたげなロイド君を止めていたのであった。
しかし、中層の最初から嫌な冒険者を見てしまったが、そこから先で出会った冒険者達はマジックバッグ持ちが増えはじめ、ポーターを連れている者を見なくなり、たとえポーターを連れている冒険者であっても、
「倒した魔物の魔石なんて後から拾ったら良いから、もう暫く隠れてろ」
などと荷物係を気遣う様子も見られ、全ての冒険者が荷物係を虐めているのでは無い事に少し安心したのであるが、
『だとすると、あの少年は…』
と、益々気の毒になってしまう気持ちもあり、ダンジョン攻略も楽しめないままに縄張りを持ち、専業でダンジョンでドロップ品を狙っている冒険者が獲物を倒した安全なだけのフロアを進み、20階層のボス部屋もリポップ待ちの留守の間にすり抜け、
「敵も居ないし、なんだか楽しくないからチャチャッとボスを倒して帰って町ブラでもする?」
と提案する僕に、ロイド君も、
「そうですね…初日は調べものばかりでしたし、二日目からはダンジョンでしたのでワグナの町を巡ってみたいです」
と、このジーナダンジョンで狩りをする意味が見えなくなった僕たちは、
『さっさと踏破して気分転換をしよう!』
という意見になったのである。
そうと決まれば手元にダンジョンの地図もあるので、最短距離でこのダンジョンの最下層となる30階層を目指して突き進んだのだが、29階層にて、
「おっ、珍しいな29階層に他の冒険者が来るなんて…悪いがここのブラックブルは全部倒したからあと四時間程は出て来ないぜ」
などと冒険者チームが僕たちに話しかけてきたので、僕は、
「そうですか…では…」
と、話を切り上げて下に向かう為に進もうとするが、総勢10名近い冒険者グループは、
「ちょ、まてよ」
と僕たちを呼び止めた後に、
「ブラックブルの肉を取りに来たんじゃねぇのか?」
と質問してきたので、僕もだがウチのメンバーも、
「ブラックブル?」
と首を傾げる中、ロイド君だけが、
「あぁ、なんだか依頼が出てましたよね…ブラックブルの希少部位の肉…」
と、冒険者ギルドのクエストボードをチェックしていたようで、僕やアル君が、
「ダンジョンに潜るから依頼なんて見てなかったよ…」
などと、時間停止のマジックバッグも有るので普通に潜って手に入れた食材など、
『後で納品依頼を見てから提出しても大丈夫だし…』
と、クエストボードをチェックしないままだったのだが、ロイド君としては許せなかったらしく、
「いや、緊急事態とかの情報が出てるかも知れないから毎回活動前にチェックするように冒険者ギルドの職員さんが冒険者登録の時に言ってたでしょ…」
と、言われた基本を守るように注意されてしまい、それには冒険者経験値のあるバルディオさんやリーグさんも、
『そうだ、そうだ…』
みたいに頷き、僕たちの行動に呆れていたのである。
まぁ、ダグさんだけは、
「ブラックブルって高級食材ですよね…使ってみてぇ~、煮込み…いや、焼きだな…」
と自分の妄想を膨らませていたのであるが、そんな会話をしているのを、
「破格の報酬を狙ってブラックブルを狩りに来たのなら残念だったな…3日後までは俺達が押さえているし、その後も予約している冒険者でいっぱいだ…」
などと横から冒険者の方々が話してくるのを、僕は、
「あぁ、ご心配なく…ボスを倒してチャッチャと帰る予定なんで」
と遮り下に向かう階段へと移動しようとすると、あちらのリーダーらしい冒険者の男性が、
「悪い事は言わないから止めておけ」
と忠告してくれ、僕たちを見回した後に、ロイド君に、
「お前さん多分どこぞのお坊ちゃまだろう…まぁ、冒険者を雇ってダンジョン踏破の箔をつけに来たのだろうが、20階層のハンマーシープでも十分自慢できるから…」
と言って説得をはじめたのである。
『多分ではあるが、彼なりの優しさからだろう…』
と思い黙って聞いていた僕であったが、アチラのリーダーさんは、ロイド君に、
「三人の中で多分君が一番お兄ちゃんなんだから二人の年下の子分を危険に晒すなんて…下の階のボスってレッドオーガだよオーガの中でも強い方のレッドオーガ…ジーナダンジョンの中で30階層のボスとやり合うなんて馬鹿しか居ないんだから、マジでマジックアイテムのドロップ率が高くても割りが合わないんだからな」
と言った後に、僕を指差して、
「こっちのチビっこいのなんてレッドオーガの一撃で死んじゃうんだぞ!」
と大変失礼な事を言ってくるのである。
『はいはい、成長期に少々食料事情が悪くて成長しておりませんよ…歳も19歳になり、あぁ、もうこの身長のままか…なんて思う今日この頃ですよ…だけど…』
と僕の中で本日二回目となるイライラが再びグラグラと熱をおびてしまい、気がつくと、
「だれがチビだと!? おう、レッドオーガがナンボのモンじゃい次にブラックブルが湧くまでの間にチャと行って倒してやらぁ!!」
と、僕は中身が人生2周目おじさんなはずなのに、身長以上に小物な所を皆さんに披露する様に見事なまでにガキっぽく騒いでいたのであった。
『あれだな…11階層で威張っているガキを見てイライラしていたのがイケなかった…僕の中の喧嘩上等遺伝子が活性化してたんだよきっと…』
とキレて叫んだ自分に理由をつけていたのであるが、結局
『もうこうなったらヤケクソだ…暴れてやる!』
と腹をくくる自分がいたのだった。
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