5話:恋はハートだユニコーン
「行ってきま~す。」
俺はいつも通り家族に朝の礼を捧げ、学び舎への道を歩み始めた。
昨日ピンクのユニコーンと対決するにあたり有用なアイデアを姉上殿から得たこともあり、割と上機嫌であった。
鳥は空に歌い、太陽は優しく微笑み、タンポポは道端で風に踊っている。
穏やかで素敵な朝の風景が広がっていた、だがここに黒いピンクの影が迫っていた。
「何かいいことあったのかな☆、ダーリン♡」
最も聞きたくない声が聞こえて来た...。後ろから。
全く気配もなかったのに一体どうやって俺の後ろをとったというのか。
「ねえ、昨日何か僕のことを考えてたでしょ♡」
サッ、と血の気が引く音がした。
もしかすると俺と姉のやり取りがバレているのではないかと思ったからだ。
こいつは人間の常識が通用しないユニコーンだ、何か特殊能力があっても不思議ではない。
心臓がバクバクと跳ね回り、脈拍はさらに加速していった。
そんな俺の様子を見たユニコーンはいたずらっぽく笑うと、頭を俺の胸に近づけ、ぴったりと耳を当てた。
「ふふ...、君のここ。こんなに激しく反応してる。ドキドキしてるでしょ♡」
うん、してる。ものすごく。だから早く消えてくれ、ユニコーンよ。
「どうして、俺に付きまとうんだ!。一体何がもくて...」
「ごまかさないで!!」
急に大きな声を出されて驚いた。だが奴の言う通りだ。
「昨日家で何があったのか」について答えたくないがために、俺は質問を投げつけたのだから。
どうやらユニコーンはそんなことはお見通しのようであった。
「分かる、分かるよ、何かを隠そうとしているんだね。君の心に直接聞いちゃえばごまかせないんだから♡」
心に直接聞いているというか、"心臓"に直接聞いているというか。
単に心拍数で判断しているだけではないか、コイツ的にはうそ発見器は「心で会話をしている」という事になるのだろうか?。
「まあいいよ、これ以上は何も聞かないであげる。でもね、あんまり変なことを考えない方がいいと思うよ?。もし、裏切ったら..."こう"だから。」
人間の姿に化けているユニコーンの額に、一本の角が出現していた。
誰もが思い浮かべるようなユニコーンの象徴である立派な角、それが目の前の可憐な美少年の額から飛び出していた。
どうも身体の一部だけ元の姿に戻すこともできるようだ。
「お、お前まさか...、その"角"で...。」
「言わなくても分かるよね☆、この角で君の心臓を打ち抜いちゃうよ♡」
俺は想像してみた、こいつが俺を始末しようとする時のことを。
頭の角を突き刺すために必死にヘドバンを繰り返し、鬼気迫る表情で絶叫しながら突撃してくるだろう。
なんとおぞましい光景...か?。わりとシュールだな、想像してみると。
「物理的に心臓を打ち抜くのはやめてくれ、今俺が出来る範囲であればいう事を聞いてやるからさ。」
「じゃあ手を握ってくれる?、一度やってみたかったんだぁ~♡」
こうして俺は最期を見届けてくれるかもしれない人と手をつなぎながら学校へ向かった。




