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血染めのカンナエ平原

めっちゃ遅れました! すいません! これからもこういうことあるカモです。許してくれると自分が嬉しがります。



日が天高く輝いていた真昼から時間はたち、深夜と言っていい時間になった。日は既に沈み、日の代わりの月は今日は三日月しか上がっていない。月の明かりが少ないため周囲は暗く明かりをつけなくては少し先すら見ることが困難だ。


「再び通告する!! 戦争はザナドゥス教の教えにおいて、最も忌むべき愚かな行為である!! さらに兵の足を進ませるのならば神に代わり我らが天罰を与えよう!!」


「何が、”神に代わり”だ。本当に神がいるなら直接罰を与えてくるだろうよ」


双刀のデラニアが向かい合っている両軍に対し叫んでいるのに対し、北大陸同盟の最前線で待機していたホスローが大剣を持ったままの右手を天高く上げ声を高らかにし、周りにいる兵士たちに言い聞かせるように声を上げた。


緊張していた周りの兵士たちからも笑い声が上がり、先ほどまでの陰鬱な空気が嘘のようであった。ホスローは盗賊討伐などの時も空気を良くするのだが、それを狙ってやっているのか素でやっているのかはホスロー以外は誰も知らない。


顎に白髭を蓄え、皺が凄まじい数になっている大将軍ヴァルンニバルが王に一礼し、ニバルカ王に報告した。


「陛下、騎兵五十三万、歩兵百二十七万、飛竜兵二千。全て戦う準備はできております」


「うむ」


ニバルカ王のデラニアに勝るとも劣らない程の大きさの声が平原一帯に響き渡った。


「カルサージュの千年の歴史に沈んでいった歴代の王よ! 英雄王にして勇者ミルガルよ! 我が軍を守りたまえ!!」


「「わが軍を守りたまえ!!」」


親衛隊が王に続き、声をあげた。軍の後方から最前線にまで声の波が広がっていく。


王が右手を上げ振り下ろした。



「全軍!! 突撃!!!」



王の命令に呼応し、視界の果てまで戦列が続いている北大陸同盟軍の兵士たちが突撃を開始した。


王の周囲やホスローの周囲にはカルサージュ王国を象徴する大樹が描かれている旗がなびいており、他の国の場所ではその国の旗がそれぞれ使われており、兵士とともに縦横に揺れ前へ突き進んでいる。


突撃を開始した様子を対面で見ていた西方公路同盟の兵士たちも少し遅れて突撃を開始した。


両軍合わせて約百八十万の軍が動き出したのである。人々の大地を踏みつける音、馬蹄の轟が世界を揺らすようであった。


馬と人が空気を裂き、上がる体温によって裂かれた空気は冷える夜の空気を熱のこもったものへと変えた。


両同盟軍はそれぞれを攻撃対象として見据えていたはずだった。

教国のデラニア将軍には両軍が衝突し、戦争が開幕する。そしてそこに介入する自分たちの姿まで見えていただろう。


だがそんな幻想は一瞬にして消えてしまった。


「くそ! 奴らおっぱじめやがった! 仕方ないか、これより我らは武力による強制介入に移る! 騎兵隊ついてこい! 歩兵はその後に続……」


歩兵に対する命令はデラニア将軍の口から発せられることはなかった。

将軍のその目は教国兵の正面を穴が開くように見つめていた。


その視線の先には軍の矛先を変え、歪ながらも隊列を組んでいる横に広い松明で照らされた壁があった。


「あいつら、元からこれが狙いか……」


すぐそこで槍を持って待機している兵が明らかに慌てた様子で将軍に対して声を上げる。


「将軍! 両同盟が結託しています! どうしますか?」


「慌てるな! 奴らが協力しようと、所詮は実戦経験のない雑兵! 我らが負ける道理はない!」


そう兵士に言うとデラニアは先ほどのニバルカ王と同じように教国軍全体に届くように声を響かせた。


「我らには絶対神にして唯一神であるザナドゥス様の加護ぞあらん!!」


「「加護ぞあらん!!」


「全軍!! 突撃!!!」


教国に逆らうということは神に逆らう異教徒だということ。

迫りくる異教徒どもを殲滅するために白銀の鎧に包まれた教国兵達が突撃を開始した。兵士と共に「鉄でつくられた竜」が描かれた旗も進み始める。


教国兵の先頭は全て重装甲騎兵で固められており、この重装甲騎兵の突撃の時の馬蹄の轟を聞くだけで恐怖に駆られ、浮足立つ。そしてそこに殺到する教国兵の剣や槍の前に、今まで教国の前に立ち向かった軍はなすすべなく倒されていた。


大量の人馬が大地を揺らす。


教国軍の先頭を走る重装甲騎兵が教国に反逆する異教徒達と正面から激突した。


その結果は見るも無残なものだった。強靭な重装甲騎兵の前に立ちはだかった勇気あるものは、自らの愚かさをその身で味わうことになった。


馬上での剣術の腕も装備においても勝っていなかった異教徒達の連合軍は教国の敵ではなかった。

連合軍兵の死体だけが積み重なり、その上を重装甲騎兵が踏みつけながら走り去っていく。


戦局はすべての場所において一方的だった。薄く広く広がった連合軍の中央部に重装甲騎兵による突撃で穴をあけ、周囲は歩兵によって連合軍の足を止める。中央がこれだけ突破されているというのに左右の連合兵たちは動く素振りすら見せない。

デラニアが自慢の双刀を振るい、前方の連合兵をなぎ倒しながらつぶやく。やはり実戦経験のない素人どもではこんなものか。


「このまま本陣まで行き、異教徒の王を討ち取るぞ!!」


重装甲騎兵の突撃のあとには文字通り「屍の道」が作り上げられていた。


勢いそのままに重装甲騎兵は小高い丘に堂々とそびえたっている数個の絹のテントを目指し始めた。絹のテントの周りには本陣を示すひときわ巨大な旗と、かなり手前に親衛隊であろう兵たちがテントを守るように左右に長い人の壁を築き上げている。


二千メートル、千五百メートル……距離が近づくにつれ、兵の数が明らかになってくる。


先ほどの失敗から何も学んでいないな。横に軍を広げすぎて薄くなっている。おそらく数万程度だろう、対してこちらは後続が「屍の道」を通り続々と前線を突破してきている。余裕だ、そう思った。


その予想は当たった。外れるわけがなかった。重装甲騎兵の突撃は親衛隊に一切の反撃を許さず完封した。あった被害は少しの打撲程度であった。


絹のテント群の中でも一際豪華な装飾がなされているテントを馬を駆けさせながら切り裂き、そのまま中へと走りこむ。


だがそこには王どころか人っ子一人いなかった。人どころか物すら何も置かれていなく、それに何故かやけに油臭い。


「油? まさか……」


その瞬間、テントの外側より炎の壁が舞い上がった。テント周辺、各所にあらかじめまかれていた油に火矢が放たれたのだ。丘の奥よりさらに大量の火矢が飛翔してくる。そのうちの一本がデラニアのいる巨大なテントの天井を切り裂き地面に突き刺さる。


先ほど舞い上がった炎の壁などとは比べ物にならないほどの高さの炎の壁が天高く空中へ吹き上がった。


連合軍のテントまで侵攻してきていた今教国軍を巨大な炎の牢獄が捕らえる。何重にもまかれた火炎の壁が重装甲騎兵を分断した。炎の壁が騎兵の長所である機動力を奪い、意思の統一をさせなくした。後方に下がろうとした兵たちは先ほど打ち倒した親衛隊たちの死体が豪快に燃え上がっているのを見つめるのみだった。


既に鎧に油が付着していた騎兵たちに火が移り、叫び声をあげながら燃え上がる。

有毒なガスを吸いすぎて気絶する者、そして鎧が極限まで熱され中にいる人間たちが生きながら焼かれ始めた。


鎧を脱ごうとする者も数多くいたがそんな簡単に脱げる代物ではない。教国の誇る重装甲騎兵たちは戦う前にそれぞれがそれぞれの方法で非業の死を遂げていった。


奇跡的に油が付着していなかった者たちも上空を飛ぶワイバーン兵が投下した油によって強制的に燃え上がらされた。

地上にいる兵士たちは炎の壁によって移動を制限されているため、上空から見下ろすワイバーン兵にとってはまだ燃えていない場所に油を投下するだけで面白いほど燃え上がる。


重装甲騎兵隊の指揮官たちは撤退や回避を連呼したが、炎の壁によってどこにも逃げ道はない。数人、奇跡的に壁を超えるものが現れたが奥に待機していた連合国の兵たちによってなぶり殺された。


もはや戦争とは言いづらく、一方的な虐殺だった。教国の旗のみが地に倒れ、カンナエ平原は教国兵の血に染められた。


手前にいる、左右の連合軍は旗と槍を持たされた案山子で、連合の主戦力は小高い丘の本陣の奥に隠していたっていう感じです。一番端っこを起点として教国の方面へと向きを変えたので端っこの兵は動かなくていいんですね。それで多少動くところは少量の部隊や輸送要員に大量の旗と松明を持たせてあたかもいる様に。


重装甲騎兵による突撃を敢行してくることは連合側も分かっていたので、本陣の前で死んだ親衛隊たちに油を付着させてたり、隠し持たせたりしておき、そのまま教国の兵の鎧に抱き着き油を付着させました。鎧に付着しても装甲が全身を覆っておりわからず。油の独特の匂いは親衛隊の血の匂いによってかき消され、わかりませんでした。

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