鎧とキザな色男
「おーい! 勇者様! 大丈夫か? 何があったんだ?」
緑色の外套に身を包み、腰には剣をさし、背には弓を担いでいる男が駆け足でニルスに近づき、声をかけてくる。
男は目はサファイアのような色をしており、頭につけている白いバンダナで黒い艶のある髪をかきあげている。男ながらも妖艶さが溢れ出ているが年はニルスよりは少し年上だろう。
「ソキウス! まったくお前が武器を店に見に行ってる間に酷い目にあったぞ」
「そんなことより、その腕大丈夫か? 完全に千切れてるぞ……」
「これはもう大丈夫だ、俺は勇者だ」
ニルスがそう言うと肩から先が消滅していた右腕がゆっくりと生えてきた。肩先が形を変えて腕の形に変化していったのだ。それと同時にニルスが腕を抱え込んで地面にうずくまり、汗を流し苦痛をあらわにする。
「なんなら傷自体よりも再生する方が痛いんだ」
30秒ほどニルスが苦痛でうずくまっていると、腕は指の先まで傷ひとつなく完全に生えきり、痛みは治りニルスはすでに立ち上がることができていた。
「やはり勇者は凄いものだな、それで何があったんだ?」
ソキウスがニルスが落ち着いた時を見計らって尋ねる。
「こんな街中に竜、しかも地竜さ」
魔物は魔王が生み出している。そして魔王領との戦線には教国の騎士たちが滞在しており、魔物を封じ込めているはずだった。それにもかかわらず竜が、しかも翼を持たない地竜が現れたのだ。
「翼を持っている飛竜が前線の騎士を飛んでこえてきたならまだ分かるが翼を持たない地竜がなぜこんな内陸地まで……魔王が何か特別な力を使って魔物を送り込んでくるというのは伝説で聞いたことがあるが……」
「それは伝説だろう? それが本当ならとっくに街の一つや二つは滅んでるさ。にしても地竜が現れるとはね……」
「早く魔王を封印しなくては……」
「意思が強いのはいいが気負いすぎるなよ勇者様」
話しているニルスとソキウスのそばに全身を鎧に包んでいる者が近づいてきていた。
その鎧には傷がところどころについており、タバードの裾の一部は焦げている。
純白の鎧には教国の紋章である、「鉄で造られた竜」が金でところどころに装飾されている。
この模様はニルスの着ているローブについている模様と同じものである。
鎧がニルスとソキウスの前まで来た時に竜の翼の装飾が付けられているヘルムを頭から取り外す。ヘルムの中に押し込まれていた長髪がなびく。
見るだけでわかる絹のような美しい黄金色の髪、瞳は少し見つめたら飲み込まれてしまいそうな濃く鮮やかな緑色だ。
身長はニルスより少し小さいくらいで、若干見上げるようにして声を掛けてくる。
「助かりました勇者様」
その言葉に、ニルスは少し笑顔がこぼれた。
が、直後アリアは顔をしかめ、一層強くニルスの目を見つめながら口を開いた。
「ですが、どうせ治るからといって自分の腕を犠牲にするような事はやめていただきたい」
「でもどうせ治るんだし、俺の腕一本で解決するならそれでいいだろう」
「そういうことでは……」
アリアが続けて声を上げようとするのを、ニルスが意図して遮るようにソキウスに声を掛けた。
「それよりも、いい弓は見つかったかい?ソキウス」
「なかなかいい物もあったんだが、俺が使うに足る物はなかったな」
「ならばどうするか、今持ってる適当に買った弓のままというわけにはいかないだろう?」
「そうだな……東の国境線を超えた先のボドリウス共和国は武具の生産が盛んだ、しかも僕は何回か行ったことがあり案内ができる……どうだい?」
「わかった、ならそうしよう」
次の目的地の話題に熱を上げていた2人の後ろではアリアが不服そうに視線を地面へと向けていた。




