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風呂にとりつく
「ふれてみるといい」
いわれたとおり、男は石に手をおいた。
「お、・・・・あたたかい?」
そのかたくつめたいはずの石は、なぜかあたたかかった。
「おぬしのいえの、《風呂》につかったあとだからの」
「 ―― うちの? で、では、」
男はあわてて石から手をはなし、あらためて提灯をかざし、その石をながめる。
腰の高さよりやや上まである細長い石には、右と左に、街道と峠の名が刻まれている。
「雪がふるたびに《風呂》にかよってきた女というのは、この《道標の石》で、これが『とりついて』おったのは、おぬしの家の、あの立派な《風呂》だ」
「・・・・ふろに とりつく?」




