第4話 うっかり
「どうぞ」
穏やかな声で入室を許可される。
サイラス先生。どんな人なんだろう。さっきの猫獣人さんみたいに優しい人だといいな。そう思いながら扉を開いた。
扉の向こうは教員室と言うより、温室みたいな空間だった。というか森?の方がいいんじゃないかと思うくらい植物がたくさんあって。魔術学園ともなると規格外なんだなって思った。
「アイリスさんだね」
どこにいるのかも分からない。声だけを頼りにその森を進もうとする。
「あっ、来なくて大丈夫だよ。僕が行くから」
そう聞こえた瞬間、茂みが揺れてそこから人が飛び出してきた。
「えっと、サイラス先生で合っていますか?」
流石に聞かずにはいられなかった。地元の学校にはこんな草だらけの先生いなかったから。
「そうだよ。よろしくね」
私のそばにある棚までやってきてサイラス先生は何かを探しているようだった。
「何を探しているんですか?」
「鍵だよ」
鍵?この教員室のかな_
「アイリスさんの寮のカギどこにやったかな」
_思考していたらなにか聞き捨てならないセリフが聞こえてきた。
「私のカギ失くしちゃったんですか⁉」
「いやぁ、この部屋のどこかにはあると思うんだけどね」
悪びれもなく、っていうわけじゃないからまだ救いようがあるけど、結構どうしようもない人な気がする。っていうか
「探し物を見つける魔術ってないんですか?」
「あるにはあるんだけど…」
何か言いにくそうにする先生の姿を見て、ちょっぴり申し訳なくなる。
「あっ!あったあった」
結局机の引き出しの中に入れていただけみたいで一安心。
「先生は一度整理整頓をするべきですっ!」
初対面だけどそれだけは言いたかった。なんならその権利が私にはあると思う。
「そうだね。いつかはやろうと思っていたんだけど…ってそんなことよりよくここに来れたね?」
私と向き合った瞬間先生はそんなことを言う。どういうこと?意味が分からず首をかしげる。
「あれ、聞いてない?この学園さ、関係者以外が教員室や重要な教室にたどり着けないよう魔術がかかってるんだよ」
後ろ手に広がる植物たちを手で示しながら先生は言う。
「こうやって研究室を兼ねている教員も多いからね」
そういうことか、と理解すると同時にもう一つ疑問が浮かぶ。
「先生。私、生徒なので関係者ですよ?」
「今、君は寮のカギを持っていないでしょ?生徒の通行証は寮のカギが担ってるんだ。」
えっ?そうだとしたら_
「私、先生のところに絶対たどり着かないはずだったんですか?」
やっぱり迷子じゃない。この学園の仕組みなら仕方ないはず、そう思っていると
「あ、たしかに」
うっかり、といった様子で先生は目をそらす。
うーん、大丈夫なのかな、この先生。




