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虹の乙女アイリスの 愛しい日々  作者: 紫悠
第一章 新生活と出会い
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第19話 猫さん

なぁ

とどこからか鳴き声が聞こえて。かわいらしい猫の声に、集中力がなくなる。

「ね、今聞こえた?」

どこにいるのか気になってクロノに聞いてみるけど、クロノは気づかなかったらしい。

「何の話?」

迷惑そうな顔、ではなかったけど、不思議そうにきかれる。自習時間とは言え、なんだか少し恥ずかしい。それでも声の主が気になったから

「今ね、猫さんの声が聞こえた気がして」

そう伝えた。すると驚いたように目を見開いたクロノが、私の後ろを指さす。なんだろう?と振り返ってみればそこには真っ黒な毛並みの猫さんがいて。

その子?と聞くクロノに全力で頷く。

艶々の黒い毛並みも。スタイリッシュな体も。全部

「っ〜超かわいい!」

ゆっくり近づいて、そっーと触れる。

「ね、クロノ!この子すごく人なれしてる!」

猫さんはしょうがないなぁとでも言うかのように私の机の上に登ってきて、背中を撫でさせてくれた。

「よかったね」

優しい微笑を浮かべて、一緒に喜んでくれるクロノ。

「猫吸い…できると思う?」

神妙な面持ちで聞いてみると、クロノは一瞬キョトンとして、それから隣を見て言った。

「その猫は嫌そうにしてるね…」

クロノの言う通り猫さんはさっきより身をかがめて、警戒しているようにも見えた。

「そっかぁ…ざんねん」

猫を飼ってる友達が毎日のように猫吸いしてるって言ってたから気になったけど、この子は私の飼い猫じゃないもんね。仕方ないか。

「でもその猫、首輪がないね」

捨て猫かな、とクロノが言う。確かに人なれしていて、毛並みが整っているわりには首輪をつけてない。

「寮で飼えると思う?」

なんだかこのまま返すのも忍びなく思って、そっと抱き上げようとしたら

「にゃー!!!」

すごい勢いで怒られる。

「もしかしたら使い魔なのかもしれないよ?」

クロノの声にYESとでも言うかのように猫さんはあた人鳴きした。

「主のもとに帰らなくて大丈夫?」

時計を指して猫さんに話しかける。もし、授業の合間にこっそり脱走してきた猫さんなら、そろそろ帰らないと授業が終わってしまうから。

猫さんはするりと私の手の間をすり抜けて。ありがとう、とでも言うかのように

「なぁう」

と鳴いて華麗に去っていった。


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