第18話 美人さん
「書類整理を手伝わせてはもらえませんか?」
説明会が終わって、他の人が立ち去って。私は思わずそう言った。
でも、順番を間違えた。本当は片付けないんですか?って聞くつもりだったのに!
生徒会長は笑顔のままだけど、さっきよりどこかぎこちない。
重要書類なんかはさっきの状態ではしまってたと思うし、あれくらいの量ならちょっとづつやれば私でも片付けられそうだと思ったからこその提案だった。
「君に押し付けるわけには」
優しく諭すように言ってくれたけど、きっと心の中は不信感でいっぱいだと思う。私が会長なら、急にそんな提案されたら怖いもん。
突然だったし、押し付けがましいとは分かっていたから、やっぱりなんでもないです、と言おうとしたタイミングだった。綺麗な女の人が私と会長の間に滑り込むように立つ。
「いいじゃありませんか。生徒会は年中人手不足です。」
美人さんは気まずい空気をばっさり切り捨てるように言った。重くなりかけていた空気が、スッと明るくなる。生徒会長はいじけたような顔になって、
「だって、これで彼女が悪い子だったらどうするの?」
と、もっともなことを言った。けれど会長さんの言葉もむなしく、美人さんの一声でとんとん拍子に話が進んでいく。あれよあれよという間に、生徒会長か副会長の美人さんがいる時にお手伝いすることになった。
「毎週来ますね!」
よくわからないまま私は大きく返事をして生徒会室を出る。
誰もいないと思っていたそこにはエーテルが立っていて。
「待っててくれたの?」
そう尋ねるけど、知り合いがいない、ひとりきりの場所だったから、エーテルの優しさがすごく嬉しい。
「アイリスと一緒に帰りたくて」
爽やかな微笑を浮かべるエーテル。うっ!天使だ!天使がいる!
巻き込みすぎるのもよくないと思いつつ、エーテルの優しさを返せる人でありたい。
外はそれなりに暗くなっているにも関わらず、女子寮まで送ると言うエーテルに、さすがに叱った。心配してくれているのは分かるけど、今から寄り道してはエーテルが帰る頃にはすっかり暗くなってしまう。心を鬼にしてエーテルを見送る。
寮へ向かう道の途中でふと、足を止めた。何かが視界の端できらりと光った気がした。けれど見渡す限り青々とした低木しか無くて。
…勘違い、かな?




