第14話 小さな子ども
お昼を食べて、今度はエーテルの欲しいものを探しに行く。
御目当てのものがみつかったのか、エーテルが「少し待ってて」と言うから、私はその間にユリウスに渡すのにちょうどいいものはないかな、と出店を見て回った。
「あれっ?」
気がつけば人通りも少なくて、売っている品も日用品が多くなっていて。
おかしいな、と思って近くの曲がり角を曲がる。その瞬間だった。
「危ないっ!」
力強い声と共に私の体は後ろへと引っ張られる。
目の前を馬車が通り過ぎ、風が鼻先をくすぐった。
遠くで盗人よ、と叫び声が聞こえる。
私があの馬車にひかれそうになっていたのだと気づいたのは、それから数秒後の事だった。
大丈夫?と心配そうに声をかけてくるその男性は、小さな子どもにやるように私の頭を撫でた。
「ここはあまり治安が良くないからね、君みたいな子が一人で歩くのは危ないよ」
ローランドと名乗るその人は、やっぱり私を子ども扱いしていて。
私の行動は軽率だったから、それに反抗するのも出来なかった。
ローランドは優しく私の腕を引いて、職人街へ連れて行ってくれた。できるだけ大きな道で、人の目が多い道を選んでくれるから。優しい人だな、と思った。知らない男性と話すことなんてないせいで、どう話しかけたらいいのか分からなくて。
気がつけばエーテルが目の前にいた。
「待っていてって言ったじゃないですか!」
エーテルは珍しく怒った様子で、私に叫んだ。たくさん走ったのかたくさん汗をかいていて、珍しく髪の毛が乱れていた。そういえば、昔はもっとこうだった。エーテルはいつからおとなしい子になったんだろう。彼の心配をよそに、私の思考は横にそれて行く。
「あんまり怒らないであげて、彼女、こう見えてだいぶ怖かったみたいだから」
ぼんやりとエーテルとローランドの会話を聞いていると、そんな言葉が聞こえた。
エーテルがちゃんと怒っていて、ローランドも心配してくれているのが分かるから、もう大丈夫だよと笑うのもできなくて。
そのあとは二人の強いすすめでまだ日は高いけれど寮に帰ることにした。
部屋に戻って窓の外を見る。もう大丈夫なはずだけど、胸の奥が少しざわついた気がして。
「はしゃぎすぎちゃったかな…?」
その正体に見当もつかず、私は布団にもぐりこんだ。




