第12話 猫の方
チャイムが鳴る。
「ちょうどいいし終わろうか。」
先生のひとことで私はノートや筆箱を片付けはじめる。
「あぁ、そういえば伝え忘れてたんだけどね。授業で使う教科書とか、調整してもらってる魔道具とか、もう準備できたそうだから明日にでも受け取りに行くといいよ」
さらっと忘れていたらしいことにツッコむ気も起きず、受け入れる。
「分かりました。今日はありがとうございました」
と礼をし教室を出た。
明日は入学して最初の休日。エーテルと一緒に街歩きする予定だったから、目的地が増える分には問題ない。
それよりも
「食堂ってどこ…?」
あんなことがあったから、昼食を抜いてしまった。別にクロノが悪いわけじゃないけど、おなかがすいてるのも事実で。
「あ…」
後ろから聞こえた、聞き覚えのある声に思わず反応する。
「猫の方!」
おなかがすきすぎて心の声と同時に口からも音が出た。恥ずかしくなって逃げたくなったけど、彼の方も立ち去ろうとしている。
「すみません、よければ食堂へ案内していただけませんか?」
また面倒なのに絡まれた、と全力で顔が物語っているけど引くわけにもいかない。
「…はぁ、そんなもん自力で行けよ」
以前より深くため息をつく彼は、以前と違って案内してくれそうには見えなかった。と言うところで、私は気づく。
「あっ!昨日はありがとうございました!何も持ってないんだけど、私にできることあったらお礼させてください!」
いくらぶっきらぼうでも、道を教えてくれたことには変わらないから、礼を尽くすべきだと。
「私、2年のアイリス。あなたは?」
無視して歩き出す彼にこれ以上は迷惑かな、と悩むけど、名前を知らないことにはお礼もしにくい。
「…2年。ユリウス。もういいだろ、食堂着いたんだから、これ以上付きまとうな」
繰り返し話しかけていたせいで、私はちょっとした注目を浴びていたことに気づかなかった。無神経で、そんな事にも気が付かなかった自分に腹が立つ。
「ごめんなさい!」
去り行く背中に声をかけるけれど、ちゃんと伝わったとは思えない。
やっぱり明日、何かお詫びの品も探さなくちゃ。
落ち込んだことを隠すつもりもなくて、私は肩を落としながら食堂の扉をくぐった。




