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No Look Jamming〜私は見る事ができない〜  作者: 船木一底
ツキナミの生活
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一蓮托生の鬼ごっこ1

 太陽がほぼ真上に登り、先日まで降り続けていた雨のせいで少しじめっとした昼下がり、私は何故かしおりさんと共に地獄のような修行に付き合わされていた。

ことの発端は朝、しおりさんと主人様の別宅に墜落し、寝室の屋根に大穴を開け、家具を壊した事に起因する。

朝食後、自分が無茶をしたせいで、主人様の地獄の修行を受ける事になったしおりさんは、どうにか回避出来ないかと、青ざめた顔で私に相談してきた。あまりにも必死なしおりさんの表情に、私は少し引け目を感じ、渋々だがその修行に同行するという形で決着をつけた。当然、主人様は私に対して付き合う必要はないよ、何度言っても無茶をしてしまうしおりさんが悪いんだからと仰ったが、既に引け目を感じてしまっていた私は、少し強引に修行に同行した。少し呆れられながらも「仕方ない・・・」と同行の許可が降りた。そう、私が同行するという事はそんなに遠出せずに、近場での修行になる。それは私も、しおりさんも、主人様も分かっている。即ち、崖を登ったり、大きな川を泳いで横断したりという、行くまでが厳しくなる修行ばには行けない事になるのだ。しかも、私としおりさんが一緒に出掛けるとなれば、妹のことはがずるい、私も一緒に行くと、出かけ先も、出掛ける理由も知らずに言い出すのは必然的な事だ。そうなると主人様もどうしようもなくなる。これがしおりさんが見つけ出した最強の回避方法になるはずだった。

しかし、そんなに主人様は甘くない。とても優しい方だが甘くはないのだ。

行くのが辛くない、近場だろうと、行くのが辛くないだけで、修行の内容は普段より遥かにハードだった。それは特別の中で最上位の特別であるしおりさんだからこそ余計にキツいものだった。

何がそんなに辛いのか、何がそんなに地獄なのか、大半の人には伝わらないだろう。なので、簡単に今日の修行内容を説明しよう。簡単に言うと主人様対私達三人の組手だ。正確には主人様対私達二人対たまにちょっかいをかけにくる妹だ。

組手と言いつつもある種の実戦訓練だ。

この世界では、今でもそこら中で争いを、戦争を行っている。当然、盗賊や人攫いなどもいる。そんな世界で生き残るにはある程度の強さと、ずる賢さと、正確な判断能力と、逃げ足の速さが必要になる。敵を倒すと言うことは敵に倒される可能性も出てくる。それでは意味がないのだ。自分が生き残ることを最優先に、自分が守りたいモノと一緒に生き残る事が最優先なのだ。死んでしまっては意味がない。

それが主人様が日頃から口を酸っぱく、耳にタコが出来る程、繰り返し、繰り返し言うことだ。それは夢に見るくらい私達に刷り込まれている。老若男女関係なく、誰が魔術や異能の能力を使ってくるか分からないこの世界では、これは、紛う事なき、絶対的な正解なのだ。

勝てば官軍、負ければ賊軍。これは主人様が昔教えてくれた言葉だ。どんなに強くても死んでしまっては正義は果たせない。どんなに間違っていても生きている方の正義が尊重される。それは今のこの世界、この国の在り方そのものだった。

 朝食を食べ終わり、片付けを終えると、私達は出掛ける準備をして、家の裏にある森の中を十分ほど歩いた。十分ほど歩くと、森の中に広場が現れた。ここは主人様がしおりさんの修行場として二人で木を伐採して作った場所だ。広さにして私達が住む家がすっぽり入るくらいの大きさだ。

 着くや否や、通ってた道の横に生えている木の下に荷物を置き、広場の真ん中に向かって主人様が歩き出した。

準備運動などは一切ない。これは襲って来た人間や、魔物がこちらの準備を待ってくれるなんて事はないからだ。だから自然体で、準備などない状態で、主人様からに逃げ切る、または倒さなければならない。まぁ、倒すなんて事は、私達には不可能に近い。まず、組手で主人様に触れる可能性が殆どない。もし触れることができれば、組手中でも飛び跳ねて喜んでしまう。そんなレベルで触れることができないのだ。それは特別の中でも最上位の特別であるしおりさんも似たようなものだ。しおりさんからすれば触れる事はできても、それが一撃として入らない。当たったとしてもダメージとして蓄積しないのだ。それは触れる触れないと代わりのないことだった。不用意に近づけば主人様の、よく分からない魔術?、能力?に捕まり、仕切り直しになってしまう。

主人様がゆっくりと歩く背中を見ながら、私達は、あぁ今日は本当に地獄の修行なんだなと悟り、諦め、ため息を吐きながら、その背中に付いて行った。

 広場の中央に主人様が到着し、一息、フーっと息を吐いた。

ことははこんな事なら一緒に来なかったのに、もう帰りたと文句を言いながら、しおりさんは無言でどんどん顔が青くなり、私は震える手で、イヤーマイクのボリュームを少し上げ、反対の手で服の胸元に付いた、透明なレンズをハンカチで拭った。広場の中央に立ち、日の光を浴びた背の高い、細身の優しい男性の笑った顔が私達の方を向いた。

 組手に開始の合図などない、主人様が私達を視界に入れた瞬間から組手は始まる。目があった瞬間に心臓を掴まれたような恐怖が私達三人を襲った。

動かない、いや、動けない。

本能が動いてはいけないと言っている。これは組手だ、修行の中の一部分だ。しかし、本気でやらなければきっと命を落とすだろう。それは三人の共通認識だ。主人様は手加減をしても手は抜かない。殺されはしないが、殺すつもりで来る。そうでなければ意味がないのだ。本物の恐怖を体で、心で、感じなければいざと言う時に動けない。それは死に直結する。

それがこの組手と私達が呼んでいるものだ。

動けないがその動けない中でも何かをしなければ無防備でやられてしまう。

アイコンタクトも、合図もなく、私達は主人様が一歩右足を前に出した瞬間に森の中に、逃げ込んだ。

書き始めたばかりの拙い文章ですがこれからも頑張っていきたいと思っております。

コメントや評価、ブックマークなどを頂けると大変励みになりますので、よろしくお願い致します。

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