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対人恐怖症な俺の異世界リハビリ生活  作者: 春眠桜
異世界エレーファ漫遊編
69/123

聖域の攻防 改 鉄球の歓迎

「報告します! 斥候の調査通り魔物の森中枢部にて城塞らしき物を発見しました! 」


「うむご苦労。やはり何者かが森に要塞を築いていたか。大方ヴィクトールの連中が和平にかこつけて緩衝地帯への進出を計ったのであろう。そうはさせん! 進軍せよ、このまま森中枢の城塞へ攻め込むぞ! 」



──ははっ



ソロー大草原に隣接する国境一帯を治めるムシューラ・ベルメット辺境伯が号令をかけた。


およそ七千の軍勢。森の中の行軍故ほぼ歩兵である。


事の発端は森に住む魔物達が激減しているとの報告を受けた事にはじまる。ムシューラ辺境伯は事実であれば領土拡大を推し進める算段をしていた為今に至った。


「くそっ。忌々しいヘルダーめ。なにが魔の森に手を出すなだ。邪神の一件で調子に乗りおって」


ムシューラが以前から計画していた領地拡大計画。帝都にて了承を得るべく皇帝へ進言した際に横槍を入れた成り上がり者の顔が浮かぶ。


──ムシューラ辺境伯。万が一魔の森に手を出せば取返しのつかない事になりますぞ


「敵国に緩衝地帯を押さえられてなにが取り返しのつかない事になるだ! 森の城塞を押さえたら急ぎ帝都に戻りその罪を鳴らしてやるわ! 」


ヘルダーの忠告も意味を成さずムシューラ軍は森の中央へと進軍し続けた。


──


───


────


「おーきたきた。結構いるな。ざっと五千から一万って所かな? 」


どうも、きどないとです。今城壁の上から気配のする方向を注視しています。


なにぶん森の中なので完全な目視は無理なのですが、ビーコンランプのおかげでおおよその数は把握出来ました。


お、堀前の開けた所に指揮官らしき一団が出て来たぞ。まずは挨拶をしてみよう。


「おいお前ら。なに勝手に人の家の敷地を跨いでいるんだ? 許可した覚えはないぞ? 」


俺の声を聞いて連中驚いているみたいだな。ざゎざゎしっぱなしだ。ん? なんか豪華な鎧を着たおっさんが出て来たぞ。どうやらコイツが頭みたいだな。


「そこの者! 貴様ヴィクトールの手の者だな? 我はラドルア帝国ベルメット領を納めるムシューラ辺境伯だ! おとなしくその城塞を明け渡せ! 」


なんだコイツ。いきなり明け渡せとか敵か? それと鎌おじさんは何も言ってないのか?


「おいヘンテコ辺境伯とやら。お前鎌おじさん……ヘルダー元帥に何か言われてないのか? それともヘルダーのおっさんもこの事を知っているのか? 」


「やはりヘルダーはヴィクトールの連中と内通していたか。もはや問答無用! 城塞を攻略し帝都に戻り次第ヘルダーを処断してくれるわ! 」


んん? なんかややこしいな。ヘルダーのおっさんを処断? ええいメンドウだ。


「なぁおっさん。ゴチャゴチャ言ってるけどそりゃまーどーでもいいわ。最後に一つ確認だけさせてくれ」


「何だ! 」


「お前らは俺の敵って事で良いんだな? 」


一応確認する俺。結構やさしいと自分でも思う。


「何を当たり前のこと言っておる。今更命乞いか? 」


いや。十分だ。


敵と認識した俺はコヤに命じて巨大な鉄球を創り出し、ありったけの力を込めて軍勢の前線目掛けて投げ飛ばした。



──ドッゴーン


──うわぁああああああああああああ



森の木ごと大地が爆ぜる。その度に悲鳴が森にこだました。


脳裏に浮かぶビーコンを丁寧に消す様俺は容赦なく何度も何度も鉄球を投射する。


──


───


────


数十分後あらかた気配が消えた所で俺は投げ飛ばした鉄球の回収をしつつ生存者を探した。


「うへーっ。中途半端に被弾した連中はグロいな。アコ、悪いんだけど目の毒だからコイツらも吸い込んでくれる? 」


──タマワリマシタ


アコは死体や装備を纏めて吸い込み始める。残るのは多数の巨大な窪みだけだ。


しっかし失敗したな。先頭にいた偉そうなおっさんを生かしておけばよかった。色々と情報を聞き出せたかもしれないのに。


ムカついたのでおっさん中心に第一投をかましたから爆ぜてなにも残ってなかった。


早まった事をしたと反省しつつ爆心地を掃除していると数名の生存者を発見した。


「た、たすけてくれ……」


「あぁ……神様……」


生存してたっていっても手足が吹っ飛んでるのが大半だな。まぁ情報を聞き出せればいいか。


「なぁお前ら助かりたいか? 」


「ヒィイイ……化け物だぁ……」


「おい俺は化け物じゃないんだが」


恐怖ですっかり怯え切ってるなコレ。とにかくこのままだと出血多量で死んでしまう。


そう思った俺はコヤで数名の負傷者を回復させる。


「あぁ……た、助かった」


「おい助けてやったんだ、お前らが知ってる事を全部言え。言わないとこの場で全員殺す」


「わ、わかった。俺達は抵抗しない。なんでも話すから命は助けてくれ」


そうそう。初めからこういう態度で臨んで欲しいよね。話が進まないし。


それから生存者を引き連れて爆心地を巡った。その度にボロボロの生存者を回復させ、全て巡った時には大体千人ぐらいの数になっていた。


「おいお前ら。他に生存者はいないよな? 」


──い、いません!


「んじゃメシにすっから並べ。順番に皿とコップを渡すからさっさとしろよ」


──は、はい!


なんだかんだコイツら一兵卒は上の命令を聞いて従軍してただけだもんな。せめてまともな食事でもさせてあげよう。


千人ぐらい座っても平気なぐらいな窪みだ。俺は配膳を済ますと全員に聞こえる様声をあげた。


「おまえらいいか?改めて自己紹介するからよく聞けよ。俺はこの森の所有者で【きどないと】ってモンだ。お前らの主人が調子にのって俺の敷地に踏み込んだ結果この有様だ。俺は敵には容赦しない。食事の前にもう一度だけ聞くぞ。お前らは俺の敵か? 」


──め、滅相もありません


「良い返事だ。敵でなければ俺は歓迎するぞ。今はとにかく飯を食おう! 」


俺はそう言うと配膳した皿やコップに飯とキンキンに冷えたエールを創造させる。港町ソローの宴会で創ったのと同じヤツだ。


「では生存を祝して。乾杯」


──か、乾杯


こうして生存者達の宴がはじまった。



                  ◇



宴がはじまって数時間。すっかり緊張感も無くなり残兵にも笑顔が戻っていた。喰っても飲んでも減らない食事に驚き、どれもが絶品であったなら尚更だ。


「いやーナイト様。この度は本当に申し訳なかったです。所でその恰好は……」


「んにゃ。別に大したことじゃないから気にせんでええぞ。ん? あぁ海パンの事か。気にすんな」


今俺の目の前で美味しそうにエールを飲みつつ話す男。ジャントと名乗った部隊長だ。よくよく考えてみると海パン一丁で数千の兵を屠って残兵と宴会って変態だな俺。


「そうですか……。事のいきさつは先程申し上げた通りです。領主ムシューラ様が帝都にて陛下に上申した時にヘルダー元帥に止められたのですよ」


「ふんふん。てことはヘルダーのおっさんは今回の事とは無関係なんだな? 」


「はい。それどころかムシューラ様をお諫めしてまして」


どうやら鎌おじさんは無関係みたいだな。知り合いが敵にならなくてよかったよかった。


「ところでお前らさ。この後辺境領に戻るんだろ? 」


「はい……」


ん? 表情が暗いな。なにか問題でもあんのか?


「なんだ? 問題でもあるのか? 」


気になったのでそう質問をした時、ジャントの暗い顔がみるみる青ざめて俺の後ろを指さしながら震えだす。


指をさしている後方から俺に向けて誰かが話始めた。


『ナイト。帰りが遅いから様子を見に来たのだが……この状況は一体なにがあったのだ? 』


「ヴォン! 」


宴会の途中から気づいてたんだけど高速でせまる気配が二つあったのはコイツらだったのか。納得。


「あ。ごめんごめん。つい成り行きでこうなった。おいジャント紹介するよ。うちの嫁さんでソフィアだ。それと今はみえないけどシェルって娘もいる。そしてこのフェンリルのフェル。みんな俺の家族だ仲良くしてやってくれ」


そう言う俺の言葉を無視して口をパクパクさせながらジャントは漸く声をだした。


「な、なぜヴィクトールの英雄妃がここにいるのですか──」


あ。話がややこしくなってきやがった。


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