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対人恐怖症な俺の異世界リハビリ生活  作者: 春眠桜
異世界エレーファ漫遊編
68/123

人は与えられすぎると堕落する

俺達が森の家に滞在して十日。季節はすっかり夏真っ盛りになっていた。


俺は家族が増えた事もあって森の家を新しく改築したりしている。


今は滝の清流を利用した流れるプールを作っている所だ。


しっかし異世界の夏ってのも結構日差しがキツイ。日本の夏と違う所は自然が豊かで多少過ごしやすい所か。


気温は大体三十度前後。まぁ東京の夏みたいに灼熱地獄って程ではないのでとりあえず問題はない。


「フェルー。プールの出来栄えを見て欲しいんだけど」


フェルは負担にならない軽量仕様の首輪を付け【ふぇる】と書いてある純金のプレートをプラプラさせながらやってきた。


「ヴォン! ヴォン! 」


ドーナツ状のプールは入水口と排水口をうまく調整してあってクルクルと流れる仕様になっている。


排水先は城壁外の堀に流れる様になっておりその後川へと流れる。設計はバッチリだ。


楽しそうにドーナツプールをクルクル流れるフェル。でもなにか物足りないなぁ。


そうだ! ウォータースライダーを設置しよう。滝の位置も丁度良い高さにあるし。


──


───


────


こうしてゆるやかな階段等含めて安全設計のスライダーを作ったのだが肝心の利用者がフェルしかいない。


え? お転婆姉妹はどうしたかって? あのですね……


ちょっと時間を遡って説明させてもらいます……




                  ◇




──三日前


「さすがにこっちの世界も夏は暑いなぁ」


「ナイト。何を当たり前の事をいってる? ナイトが前いた世界の夏は涼しかったの? 」


昼食を済ませてまったりしながら俺はソフィアと雑談していた。


シェルはフェルに乗っかり広い庭をかけずりまわって楽しんでいる。


「うーんとね。なんて説明すればいいか……あ、そうそう。氷魔法ってあったよねこの世界」


「あぁ。氷魔法はあるがそれがどうした? 」


「前いた世界では各部屋にエアコンって機械……魔道具があってね。常時氷魔法が発動するんだよ」


「!? そんなものがあったら世界が凍り付いてしまうではないか! 」


そんな大袈裟な物じゃないんだけどな。


「ソフィアが想像している効果ではなくて……そうだ。実際に創り出してみるからそれを体験してくれ。そうすればわかる」


「本当に大丈夫なんだろうな? 」


心配するソフィアを他所に体に優しい風を送るエアコンを設置した。年に一回魔力を補充すれば動く優れものだ。


だがこれが全ての元凶だったのだ……




                  ◇




「フェル……あいつら本当に出てこないな。ちょっと呼びに行くから付いてくるか? 」


「ヴォン! 」


プールから出たフェルは勢い良く体を震わせ水気を飛ばす。さすがはフェンリル、あっという間に毛並みが乾く。


それから俺とフェルはプールを後にし自宅へと向かった。


そう。ソフィアとシェルは新しく改築した新居に、冷房エアコンを設置してからあまりの快適さに引き篭もっているのだ。


玄関に入り心地よい冷気を感じる。相変わらずつけっぱにしてるなこれ。


そーっとリビングの扉を少し開き中の様子を伺う。



──シャカシャカシャカ



何かを削っている音とともにキャッキャウフフな声が聞こえる。一人は白地に【そふぃあ】ってひらがなで書いてあるTシャツを着こみ、もう一人は【しぇる】と書かれているTシャツを着ながらシャカシャカしている。


ジャージに変Tシャツ……なにか物悲しい過去を思い出す。ちなみにシェルにもジャージを創ってあげた。色は白地だ。


「シェルちゃん何味が良い? 」


『しぇるいちごー! あい! 』


「むふふ。じゃあ私はめろーんだ! 」


めろーんってなんすかソフィアさん……


二人は楽しそうにかき氷を作っていた。エアコンからはじまり扇風機・かき氷等夏の定番を次から次へと与えてしまった結果だ。


俺とフェルは部屋に入りながら二人へ喋りかける。


「君たち程々にしないとお腹壊すよ? それと一日中部屋に閉じこもるのは健康によくありません」


「ヴォン! ヴォン! (そうよ! 一緒に遊びましょ! )」


俺は元々重度の対人恐怖症で引きこもりだったのだが、逆の立場でそれを否定する自分が居ることに何か不思議な気分になった。


「えー。ナイトにフェル……外は暑いではないか。」


『おへやすずしーきもちー! あい! 』


いかん。完全に「おうちから出たくない」モードだ。なんとかせねば。


「さっきプールを完成させたんだ。カワイイ水着を創ってあげるから外で遊ぶぞ! 」


「ぷーる? 水着? なんだそれは。この快適な空間から私を動かせる何かとでもいうのか? 」


おいおい……なにその「絶対でないからな! 」宣言は。正攻法ではソフィアは動かないな……ならば!


「シェルー。ちょっとおいで」


『あい? 』


俺は昔取引先のお呼ばれで行ったキャンプの様子を思い出す。河原で遊んでいた客の娘さんが着ていた水着を頭に描いてデザインを構築。シェルサイズに修正して創り出した。


フリフリが付いているワンピースの水着だ。ピンク地で白いハイビスカスがプリントしてある。


それを見たシェルの反応は想像通りであった。


『かあいーの! ないとこれなにー? 』


「ふふん。これが水着だ。これを装備してプールで遊ぶと楽しいぞ? 」


『しぇるきがえるー! そふぃあおねーたんおきがえさせて! あい! 』


これだ。この反応を待っていた。そう思いつつソフィアの方へ視線を向ける。


ふふふ。完全に興味ありな顔をしているな。


「む。それが水着と言う物なのか……ナイト私のもあるのか? 」


かかったな!


「当然用意するよ。ただしデザインは俺まかせな? 」


「うむ。お願いする」


鍛錬で引き締まった体のソフィアのイメージは完全にスポーティーな水着だ。


イメージ的にはビーチバレーの選手が着ている水着だね。


デザインは青地に……やっぱお揃いのほうがいいか。白いハイビスカスにしよう。


俺は早速創り出しソフィアに渡す。


「おぉ! なんと機能的な着物なんだ。模様も美しい……シェルちゃん早速お着換えといこうか! 」


『あい! 』


ソフィアはシェルと水着を抱えると二階にある寝室へと駆けあがって行った。


ふぅ。なんとか外にだせる事ができるな。


「フェルこれで皆で遊べるぞ」


「ヴォン! 」


俺達は玄関に二人のビーチサンダルを用意し、それを履く様伝えてプールへと戻って行った。




                   ◇




「ナイト。ぷーるは川遊びより楽しいな! 幼子でも安心して遊べるではないか! 」


『プカプカまわるのー! たのしーの! あい! 』


プールで用意した浮輪でプカプカ浮かびながら流れるシェル。その側で一緒に流れるソフィア。


二人共楽しそうでなによりである。


フェルは流れるよりスライダーがお気に入りの様だ。何度も滑って楽しんでいる。


俺は設置したビーチチェアに寝転びながら日焼けをしていた。


数年ぶりのアウトドアな環境が思いのほか楽しく、じっと日焼けをするのも心地よかった。


「適度に休憩を取るんだぞー。体が冷えすぎてもダメだからな」


「『はーい』」


「ヴォン! 」


素直な事は良い事だ。そう思っていた時森の家周辺から異様な気配を感じた。


数が多い。軍隊、か? 方向は……西の方からだな。ってことはラドルア帝国関係?


おいおい……家族水入らずの楽しい時間を邪魔しようってか? 鎌おじさんはこの事を知っているのか?


憩いの時を邪魔され苛立ちが募る。



「ソフィア・シェル・フェル。どうやら招かねざる客がここに向かっているようだ」


「なに!? 敵か? 」


「んにゃ。それはまだわからない。とにかくソフィア達はここにいてプールを楽しんでてくれ」


「ナイト! また一人で解決しようとするのか! 」


「相手は多分人間だ。心配いらんさ。それに家族を守るのは主人の務めだろ? 子供たちを頼んだぞ嫁さん! 」


「なっ……嫁さん……まぁ主人がそう言うなら致し方無いか……むふふ」


ちょろい。だがこのちょろさも愛おしいのだ。


そう思いながらシェルに命令をする。


シェル。万が一相手が敵であり俺をかいくぐって攻めてきたらソフィア達を頼むぞ。


──あい!


とにかく城壁に上ってヤツらの全体像を確認しよう。話はそれからだ。


そして俺は多数の気配がする方向の城壁へ向かった。海水パンツ(ブーメラン)一丁で。



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