国王との謁見
王国の姫ともなると私室の規模が違った。
広い室内は当然の事、装飾から家具から一流の物が取り揃えてある。
その広い室内の一角に接客用のスペースがあり、俺達はそこで待機していた。
俺はこれからの予定をソフィアさんに尋ねる。
「ソフィアさん、これからの予定はどんな感じですか? 」
「うむ。まずは国王への謁見、王国中の貴族を集めた社交界での報告。城下町へ近衛騎士団を随行しての帰還パレード。そんな感じだな」
うん、多忙な予定だ。だが長期間王都にミルレードさん達エルフが滞在すると、邪神関連で不安がある。
ネガティブ要素を早期に発見し、無くすのは営業時代の名残だ。俺はさっそく不安要素を取り掛かる。
「エルフの皆さんはいつ帰還されるのでしょうか? 」
「謁見が終わり次第早急にエルフの森へお送りする。王都から距離がある故、段取りをしなければならないがその予定だ」
色々と不安材料がある予定だ、時間がかかりすぎる。そこで俺はミルレードさんから情報を集めた。
「ミルレードさん、ちょっと確認したいことがあるのですけど」
「ナイト様何でしょうか? 」
「エルフの皆さんが住んでいる森ってのは結界等なにか対策はされているのでしょうか? 」
「えぇ、もちろんです。外界に対し干渉されない程度の結界は張られております故、比較的森の中は安全ですわ」
ふむ、予想通りだ。第二第三の邪神が降臨しても自衛はできそうだな。
俺はミルレードさんの話を聞いて、シェルに確認しなければならない事が出来た。
「シェル、門ってのはエルフの結界に弾かれるものなのか? 」
『えるふはめがみさまのけんぞく! しぇるもおなじ! だからもんはだいじょうぶ! あい! 』
「了解した。ソフィアさん、王都に長期間エルフの皆さんを滞在させると邪神関係でトラブルが起きかねません。ですので謁見が終わり次第またシェルの門で送り出したいのですが」
「おぉ、ナイト……殿、そうしていただけるとありがたい。シェルちゃん、お願いできる? 」
『あい! 』
「ありがとう──」
笑顔で感謝するソフィアさん。あれ、カワイイ感じじゃなく色気をともなってるぞ? ふむ、悪くない。
不安要素を排した後は他愛のない談笑をしつつ、俺達は国王からの招集を待った。
◇
──コン、コン、コン、コン
ソフィアさんの私室の扉が叩かれる。国王の招集だ。
──ソフィア殿下、国王より王の間までお越しする様招集が掛かっております。
「うむ、これより女王ミルレード様他随行者と共に参る。では皆、行くとしようか」
「ちょっと待ってください」
「ん? どうしたナイト……殿」
「謁見に際して俺の格好はまずいんじゃ……? 」
そうです、俺こときどないとは【ジャージ】なのです。
えぇ、ジャージです。シェルと同化している時以外は常にジャージなのです。ちなみに色は上下とも黒の単色。
さすがに王様相手に上下真っ黒のジャージでお話って不味いですよね。
しかも娘さんを下さいってこの格好で言われたら、王様激怒必至ですわ。
「ふむ、その恰好は珍しいし、私は好きだぞ? ナイト……殿によく似あっている。出来れば同じ仕様の色違いが欲しい所だが……」
ペアルックですか……まぁ悪い気はしませんが。ちなみに好きな色ってなんだろう?
「ちなみに好きな色って何色ですか? 」
「!? わ、わたしは淡い赤が好き……かな」
淡い赤か。薄紅色? うーん、ピンク色でいいか。よし贈り物として用意しとこう。
あ、いけね。招集かかってたんだ。どうしよう、うーん、そうだシェルと同化して行こうか。
ミルレードさん達送り出さなきゃいけないし、鎧を纏った格好なら問題ないだろう。
「んじゃシェルと同化した鎧姿で行きますよ」
『あい! 』
「おぉ、その姿なら何も問題はないぞナイト……殿」
結論が出たところで、俺とシェルは同化し国王の元へ向かう。
相変わらずこの格好は視線を引く。煌びやかなんだよな。
王の間までの道中、ソフィアさんやミルレードさんはもちろん人目を引くのだが、それにもまして俺達に刺さる視線が痛い。
兵士からメイドからとことん凝視してくる。しかもそれぞれ小声で口にする言葉が気を重くしていく。
──ねぇねぇ、ソフィア殿下の配下の騎士さん、あの白い鎧の騎士さん
──わかるわぁ、なんて美麗な騎士さんなんでしょう……
──あの白い騎士はどこの所属だ!? あんな美しい女騎士は見たことないぞ
──女性、いや男性やもしれんぞ。うむむ、わからぬ
俺、男なんだが。
「大人気だな、ナイト……殿」
『ソフィアさん、からかわないでください』
「ふふっ、そう怒るな。その姿は本当に美しいからな」
『はいはい。あまりからかうと今後食事は提供しませんよ』
「「「それは困る! 」」」
おい、ソフィア・グリード・クレイグ。なぜ食事の話になると息を合わせて返事をする?この腹ペコ軍団め。
そうこうしてるうちに王の間に到着する。目の前にある重厚な扉の向こうにソフィアさんのお父さん、つまりヴィクトール王国国王が居るのだ。さらには次期国王であるソフィアさんの兄さんまで居る。
逃げたいなぁ、無理だなぁ。いかんいかん、しっかりしろ、俺。もう逃げ道は無いのだ、それにソフィアさんの秘策があるじゃないか! 大丈夫、大丈夫だ。
気を引き締めていると、扉に配置している近衛兵が声を上げる。
──ヴィクトール国王様、ソフィア殿下並びにミルレード女王様お付きになられました
室内より、王の返事を側近が大声で代弁する。
「王の間へお通しせよ」
──ははっ
重厚な扉は音も無く、だがずっしりとした趣そのままに開いた。
ソフィアさんとミルレードさん両名を先頭に縦列で俺達は王の間へ入っていく。
赤い絨毯が王座まで続く室内
その両端には王国の重鎮や、諸侯数名が直立不動でこちらを見ていた。
先頭の両名が玉座から続く階段の手前あたりで止まり、ソフィアさんは跪き、ミルレードさんは美しい所作で挨拶をする。
俺達はソフィアさんに合わせて跪く。エルフの皆さんはミルレードさんと同じ挨拶だ。
すると玉座から力強い声が発せられた。
「皆の者、面を上げよ──」
その言葉と同時に皆顔を上げた。それを見るや、国王はゆっくりと話始めた。
「余は国王ウィリス・ヴィクトールである」
「まずは我が父先代国王ウィリアムズ・ヴィクトールが親友ミルレード女王様、御無事の帰還心からお喜び申し上げる」
国王の言葉を聞いたミルレードさんは一礼し、返事をし始める。
「100年もの間救出して頂く事に尽力してくださり、眷属を代表して感謝致します」
──感謝致します
ミルレードさんに続いてエルフの皆さんも感謝を述べた。
国王は柔らかい笑みを浮かべてミルレードさん達に会釈すると、話を続けた。
「続いて白銀騎士団大将ソフィア・ヴィクトール」
「ははっ」
「この度100年続く戦乱に終止符を打ち、ラドルア帝国との間に和議を結ぶに留まらず、ミルレード女王以下従事するエルフ全員を無事帰還させた事、誠に大義である。よって位を伯爵から侯爵に昇格し、元帥に任ずる。又、新たに領土を進呈する」
──おぉ
室内の重鎮達がどよめく。いくら王族とはいえ女性で二十歳そこそこであろう若輩の者が、爵位が侯爵に上がり軍事面でもより集権する元帥の称号が与えられたからだ。
名実共に王国のNO2が新たに誕生した様なものである。
だが、ソフィアさんの返答はこの場の空気を凍らせるものであった。
──謹んで辞退させて頂きます
な、なんだってー!?




