許されざる事象・貝王の逆鱗
シャコ貝の門が閉じた時、俺の視界は真っ暗になったんだ。
確かに真っ暗になったんだが、「うわ、暗っ」って思った時には真っ白な空間になってたんだ。
意味がわからないでしょ?俺もです。
どうも、きどないとです。絶賛混乱中です。
分かることは、白いこの空間の中には俺達と眼前に渦巻く暗雲だけしかないってことです。
シェル、この渦巻が邪神なのか?
──はい。これより討伐致します
『討伐だと? クックック、ハッハッハッハッハ』
え、喋った!? なになになになに!? 怖いんですけど! きどちゃんびっくりなんですけど!
『供物の匂いが立ち込めたと思ったら、よもや女神の使徒とは……これは重畳、我の受肉に相応しい生贄だ』
生贄って、それ、もしかして俺達を喰らうってことですよね? えーと召し上がるのかな? 食べ物じゃないんですけど!
『ん? なんだ? 女神の使徒だけではなく、その依り代が意識を保っているだと? これは珍しい』
依り代? どういう事? シェル?
──主よ、ご心配なく
あぁ、うん。まぁなんてーの? まかせるよ。
『せっかくの機会だ、まだ完全ではないが現世に降臨してやろう。意識体だけではもったいないからな』
なにいってんだこの邪神、意味がわからない。
そんな事考えてると渦の中心からジャラジャラと沢山の鎖が這い出てきた。
なんだあれ?
うわ……鎖だけだと思ってたんだけど、その鎖に繋がれてる黒い鎧を着た兵士達がワラワラでてきたぞ!?
って、あの兵士達顔が土色だし、目なんか無くてそこが漆黒とかホラーですよ、ホラー!
『ふん、トートのヤツめ手を抜きよって。こんな有象無象をたかだか50体程とは。まぁ無いよりはマシか。さぁいくぞ女神の使徒よ、その身に絶望を、我の糧となり永遠の苦しみを与えようぞ』
その言葉を言い終えると、無数の鎖が兵士達を繭の様に包み込んだ。
そして
──ベキッバリッグチャ
まさしく潰れる音と言うか、何かがグチャグチャと喰らう音が響いた
ホラーの次はグロですか、なんなんだ? シェル、いいのか? このまま傍観してて。
──ご心配なく
あ、はい。
1分も経たないうちに気味の悪い音が止み、今度は鎖が擦れる音がしはじめた。
──ジャラジャラジャラジャラ
蠢く鎖は程なく人間の様な形を現し始める
そして頭部の鎖がハラハラと解かれ、邪神の顔が現れる
『久しぶりの現世だ。ハッハッハッハ、このどうしようもない木偶の依り代を使ったとしてもこの高揚感は変わらないなぁ』
顔だとおもった部分には大きく裂けた口以外なにもない。
一目で人外の者とわかる禍々しい姿
そんな姿で語り笑う
狂気の塊、そんな表現がしっくりくる
『さて、この高揚が止まぬうちに、生贄を喰らうとするか』
──怨嗟の鎖
邪神アークに巻き付く無数の鎖が飢えた蛇のように俺達に向かって迫る。
シェル、くるぞ!
『舞い踊れ光白錐貝』
うぉ、こっちは鎧から無数の光る蔓?いや貝か、錐の様な貝が邪神の鎖に向かって行くぞ! すげーなシェル、はじめてみたぞ!
無数の鎖と錐貝は互いに絡みつきはじめる
邪神とシェルは微動だにしないが、物凄い力で綱引きをしてるみたいだ。
『児戯だな使徒よ、神の真似事とは片腹痛い』
シェルを嘲笑った邪神は一瞬にして姿を消した。
否、目の前に現れたのだ。
正確には絡みついた鎖から一瞬で現れた。
『格の違いを教えてやろう』
──鎖腕
邪神の右腕が俺達の頭部を捉え、尋常ではない膂力で体ごと吹き飛ばされた。
意識が一瞬飛びそうになったがなんとかこらえた
『ぐっ』
シェルが苦しそうな言葉を発した。この異世界にきてから初めての経験だった。
シェル大丈夫か!?
──は、はい
おい、嘘はよせ。お前のそんな返事は初めて聞くぞ!
──主よ、すみません。ですが、大丈夫です
無理はするな。絶対だぞ!
──はい
『戯言は済んだか? 』
な
相当な距離まで吹き飛ばされたのだが、シェルとのやり取りをした一瞬でまたも邪神は眼前に姿を現す。
『女神の使徒よ、もっと楽しませろ。たらぬ、これでは足らぬぞ! 』
相当数の打撃を浴びせられ、ボロボロになっていくシェル。
一体となっている今、シェルの痛み、苦しみがそのまま俺の心に響いていく。
許せない
俺の大切な
大切な家族を
許さない……
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない──
──シェル
──ぐっ、は、はい
──代れ
──で、ですが主よ
『王の命令だ』
『命を下す、俺の中で見守れ』
──主命、賜りました
やり取りを終えると、邪神アークは打撃を止め、距離を取り、物珍しそうにこちらを観察しはじめた。
『これは、どういう事だ? 女神の使徒を御し得る存在だと? 』
俺の中で何かが変化した。
いや、目覚めたというべきか?
俺は確認するようにステータスをみた。
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良所 内人 種族 神貝種人型
称号 渇望の貝王
LV───
HP───
MP───
各ステタース表示不可
──ユニークスキル──
壊れかけた魂(呪)→因果の鎖※常時発動
壊れかけた魂が上限LVを超え、本来の名に戻る。LV等の上昇効果は無い。
一定距離、周辺に存在する全てを認識する事ができる。
邪神と遭遇する神域の鎖。運命の鐘がその時を告げる。
渇望(上限)
神々の贈り物。望みを叶える因子を与える
LVによって因子の数が変わる
対価 因子の交差により知的生命体の接触が増える
※因果の鎖発動の為、現状因子数で固定される。
因子1 貝殻シェルター・周辺の魔素を取り込みHP・MPの回復を促す。召喚者のLVに応じ成長する。召喚者の魔力を注入すると開閉する。召喚者が外にでると防具として体に付着する。魔力を注入すると元に戻り、召喚者が中に入ると閉じる。
※因果の鎖発動の為、ステータス効果無効
因子2 対の真珠貝アコヤ・万物を吸収し、同等価の物を創造する。創造は召喚者の記憶イメージと直結する。吸収・創造の際にMPは消費しない。
因子3 貝王の号令 限られた切っ掛けの中でしか発動しない。連なる眷属にのみ効果発動。号令を掛けられた眷属は王が望を叶えるまで加護を受けつづける。
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どうやら最期の因子が覚醒したようだった。
第三の因子・貝王の号令
決めかねてた最期の因子は驚くほど単純なものだった。
無意識のうちに使用する際の制約を付けていたのは、圧倒的力に対する俺自身の恐怖なのだろうか。
だけど、どうでもいい。いいんだ。
大切な家族を守り
害意を持つ敵を打ち破れるだけの力があれば
俺は満足だ
ならばやるべきことは一つ
「落とし前を付けようか。神崩れの道化師が」




