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134話

 合宿2週間目のメニューは……普段学園でやっている拓郎を相手に魔法を放つという普段のメニューになった。ただし、拓郎は海の上で行動しなければならず、海に落ちたらペナルティを受けるという条件が追加されていたが。


「1週間の合宿で、そして昨日のテストで考える事はいくつもあったはずよ。これから1週間はそれらを試す挑戦期間だと思いなさい。常に考え、改善するにはどうすればいいかを脳裏に思い描きながら試しなさい。疑問がはっきりと質問できる形になったのなら、午後から質問を受け付けるわ」


 という事で訓練開始。40分魔法を使い15分の休憩、これを1セットとして3セットやる事が午前の訓練となる。拓郎が海の上に降り立ち、準備をする。


「たっくんは足首まで海水に使ったら失敗扱いね。そうなった場合は、皆が休憩している時間中私と遊ぶことになるから頑張ってねー!」


 もちろんここで言うクレアの『遊び』がキャッキャウフフな内容であるはずもない。そんなことは拓郎だけでなく、生徒や教師陣全員が理解している。


「あ、教師の皆さんも参加してくださいねー? 色々と試したいことがあるでしょう?」


 と、ここで突如話を向けられた教師たちが少し動揺する。確かに1週間目の訓練であれこれ考え、試してみたいことがいくつも浮かんではいた。しかしそれを試すにはどうすればいいだろうかと考えていた所にクレアの言葉である。やや躊躇はしたもの、教師達もまた前に進み出てくる。


「拓郎君には申し訳ないけれど、我々も参加させてもらいますよ」「構いません、こちらも色々な手段を交えて貰った方が訓練の質が高くなりますから歓迎します」


 教師陣も正式に訓練に加わり、さっそく始まった。拓郎に向けて最初に放たれた魔法は──昨日の指先から放つ魔法であった。新しく覚えた魔法で、1日かけて改善するにはどうするかを考え抜き、ここで早速試したのだ。全体的に昨日はなった物よりも威力も速度も上がっている事から、彼らが真剣に改善するにはどうすればよいかを考えて来た事が分かる。


 が、拓郎はそれらの魔法を屈折させて無力化する。屈折されて海や空に消えていく魔法。しかしそこに拓郎の斜め後ろに飛んだ後に急激に曲がって拓郎の後頭部辺りを狙う魔法が混ざった。この魔法は教師達が放ったもので、放った後も更に魔法の操作を続けられるかを試し、成功させたものであった。


 生徒達が放った魔法と比べて魔法そのものの速度は落ちるが、魔法を数回軌道変更できるという特性を付与し、相手の死角から狙う事が出来るように改良を行った物であった。その魔法が拓郎を襲うが──拓郎はその魔法に視界を向ける事なく消去。教師たちもそれに驚かず、むしろ納得したような表情を見せる。


「奇麗に対応されましたね」「ですが先生、とてもいい魔法であることは確かです。後は速度がもう少し出せれば、十分な武器になりますよ」


 教師のが口にした言葉に、拓郎が返答。あの拓郎が認めた、という事で教師にどうやればあのような軌道で魔法を放てるのかを聞き出しながら訓練を続ける生徒もいる。もっとも、その会話に対して聞き耳を立てている生徒がほとんどなのだが。しかし、それによって多少ではあるが注意散漫になったところに拓郎が魔法を放つ。


 慌てて生徒達は拓郎が放った魔法に対して防御を行い、魔法をそらすが──逸らしたと思った魔法がしばらくして急に軌道を変更。生徒達の後ろに着弾する……威力は最小限に抑えられているので、軽く突き飛ばされた程度ではあったが。


「後ろから当てられた!?」「受け流したのにそれでも魔法が活きていた!?」「こっちが覚えようとしたらさっそく使われた……完全に魔法を消さないと、こうなるって事か」


 魔法の軌道を変える技術は、拓郎はすでに収めている。ならばこういう使い方もできると教えて、対策も考えさせる。これは紅やって欲しいと事前に頼まれている事の一つだ。新しい事を覚えたのなら、更に考えさせるきっかけを与え続けて欲しいと。


「次々飛んでくるぞ!」「受け流して減衰させたら消すんだ!」「余裕がある奴はサポートしてやれ! 俺達は単独でどうにかしなければならない訳じゃない!」「受け流したりして減衰した魔法なら、何とか相殺できる! いけるぞ!」


 生徒達は単独ではなく、受け流す役割と魔法を消す役割に分かれて拓郎が放ってくる魔法に対抗する。拓郎は彼らが対処できるぎりぎりを見極めつつ魔法を放ち続け、互いに経験を積む事が出来るように動く。その拓郎と生徒達の姿を見て、クレアたち魔女組は頷く。


「良い感じね、たっくんも生徒達も経験を良い感じで積めているわ」「拓郎さんの魔法制御技術は確実に良くなっていますね。これならば──予定通りに私の血を与えられるでしょう」「高校生レベルじゃないわね、この訓練は。私の出身国でもこれをみちゃったら、同じ訓練をさせてくれと国中の教育機関が詰め寄って来るのは間違いないわねぇ」


 魔女3人の言う通り、拓郎を狙いつつ拓郎に狙われるこの訓練はどちらにも魔法制御技術を身に着けるものではある。ただ、言うまでもなく拓郎側の大勢から狙われる一人側は相応な魔法に関する熟練を身に着けていなくては務まらない。そして──クレアたちは拓郎に伝えていないが、本来なら拓郎側は6人ぐらいで担当するものなのである。


 それを一人で担当できるという点で、すでに拓郎は一般的な物差しで言えばレベル10を超越している。しかし、魔女の血を受けるためにはもっともっと魔法制御を身につけなければならない。何故ならば──魔女の血という物は、一種の魔力の塊だからである。それを制御できなければ、待つものは……言うまでもないだろう。


「帰ったら結界が必要になりそうね、学園を取り囲むレベルの奴を」「侵入者が最近増えましたからね、結界で予防するタイミングでしょう」「帰ったら帰ったでやる事がたくさんね、まあやる気のある子たちの明日のためならしょうがないか」


 などと、夏休み以降の話も当然出てくる。彼女たちが言う通り、夏休みの少し前になると学園に忍び込もうとする連中の数が明確に増えてきていた。まあ、拓郎とクレアの護衛を務めている魔人、魔女たちによって阻止されているが、それらの存在にクレア達が気が付いていない訳がない。


「さて、そろそろ1回目の休憩時間ね」「15分の間はいろいろと話し合いながら休憩を取り、次の40分をどう使うか考えて欲しいですね」「考えて、やらせて、疑問を解決するとやらないとダメなのよね。最初から全部教えると、結局忘れてやり直しになるし」


 などのやり取りの後に休憩時間に入ったことを生徒達に知らせる。休憩の言葉を聞いて、誰もがへたり込むように腰を下ろして息を整える。拓郎によってぎりぎりの状況を40分も継続して続けられたのだ、無理のない反応だろう。


「拓郎、お前容赦なさすぎるぞ」「でも訓練ってのはそういう物のだからしょうがないだろ……訓練以上のことを実践でやれるなんてのは物語の中だけだ、だからしっかりと訓練しろってのがクレアの口癖だしな」「言葉は分かるし納得もするが、それでもキツイぜ……」「それが良いのよ、とクレアなら言うだろうな」


 休憩時間、拓郎も雑談の輪に入り軽口をたたき合う。が、徐々に話は魔法に関してのものになっていく。魔法の制御に始まり、その改変方法、改変後のさらなる制御など話は尽きない。それは15分があっという間に過ぎるという事を意味している。


「はーい、休憩時間終わり~! 次始めようねー!」


 クレアの声に生徒全員がキビキビと動いて次の訓練を始める。そうしなければ物理的にクレアの笑顔付きの魔法が飛んでくるからだ……それでなくても合宿の時間は有限、無駄にするという選択肢はここに居る生徒達にはない。こうして訓練が続けられる。

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