129話
私が住んでいるところはあまり雪が降らないのですが、今日は流石に降りました。
寒いですが、こちらの更新もできたので選挙に行ってきます。
点呼がとられ、誰一人欠けることなく集まっている事が確認される。面子はクレア、ジェシカ、フレーナの魔女3人。拓郎を含む60名の生徒。サポートとして同行する学院教師が4名である。
「では、これに乗ってねー」「あの、クレア先生。私の目がおかしくないのであれば、これはただのワンボックスカーでしかないのですが……」
クレアの言葉に、教師のひとりがそう口にした。無理もない、クレアが用意した車は教師が口にした通り何の変哲もないワンボックスカーなのだから。これに70人近い人数が乗り込むなんで不可能だというのが常識的な反応だろう。が、その言葉にクレアはただ微笑んで──
「ま、中に入ってもらえれば分かるわ。順番に入っちゃってー」
とのクレアの言葉にとりあえずドアを開けて中に入る一人の生徒。直後、彼が大声を上げていた。「なんだこれー!?」と。それにつられて次々と生徒達が足を踏み入れる。そこには──新幹線の客席と同じぐらいの広さと椅子が備え付けられていたのである。
「これなら乗れるわな」「でも、これ、もしかしなくても魔法によって拡張されたマジックカーって奴じゃない? お値段が一台買うとしたら普通の家数件分のとんでもない奴」「流石クレア先生だわ」
そう、外見はワンボックスカーなのだが、その中身は魔法によって空間拡張されており……70名を乗せる事など容易い話というとんでもない車なのである。もちろん製作にはコストと魔人、魔女が数人がかりで魔法を使って半年はかかるためお値段は素晴らしい金額となる。クレアも買ったわけではなく、レンタルしただけに過ぎない。
むろん、モノがモノだけに普通はレンタルなんて許されないのだが──そこはクレアからの圧である。彼女を怒らせてはいけないという考えに加えて──クレアがレンタル代として支払った金額は貸出期間の一か月に見合うだけの物であり、特別に認められた。もちろんそんなことをクレアは拓郎に伝えてはいないが。
「運転は私達がするから、到着するまでの間のんびりと楽しんでいてねー」
と言い残して、クレアはジェシカとフレーナを伴って前方に乗る。全員が乗り込み最終確認を経て、ワンボックスカーは動き出した。最初は会話に盛り上がっていた生徒達であったが、数分後には眠りについていた。もちろんこれはクレアによる睡眠魔法であり、拓郎もこれに逆らうことなく眠っていた。去年と同じように魔人、魔女以外はその道を知ってはいけないという事を知らされていたからだ。
次に拓郎を始めとした面々が目を覚ました時、すでにワンボックスカーは目的地に到着していた。クレアの言葉に従いワンボックスカーから降りた一同は、その風景に感動した。青い海、青い空、美しい砂浜とまさにバカンスにもってこいの場所だったからである。その中で一人拓郎はやはりここかと記憶を掘り起こしていた。美しさに喜べるのは最初だけだぞと、クラスメイト達をやや憐みの目で見ながら。
「ここが目的地でーす。今日から約一か月はここで魔法の修行をすることになります、が! 皆さんには最初の第一歩としてやってもらう事があります。それは、自分達が一か月過ごす家を作る事でーす♪」
拓郎はやっぱりな、とため息をついた。そしてクラスメイトや上位30名の成績を上げた生徒達、そして教師までもが驚きの声を上げた。無理もない話だが。
「もちろん作り方は実演するし、家を作らなくてもいいけれどかなり辛いわよ? では今から班を分けるので、まずは班分けに従って別れて頂戴ね」
と、ここでクレアから渡されたプリントを見て、皆が班分けに従った。なお拓郎は一人枠となる。それと班の別れ方も実力が高い人たちは少数で、やや力が足りない人達は人数が多かった。
「じゃ、さっそく作るから見ててね。もちろん一回見ただけじゃわからないだろうからその都度指導するけど、どんな流れになるのかを一度見てほしいから」
と、クレアは周囲の木を伐り、加工し、乾燥させ、組み立ててあっという間に一件のログハウスを作ってしまう。魔女組と拓郎を除いた面子は全員の目が点になっていた。
「「「「「「は?」」」」」」
さっきまで何もなかった地面に、今はログハウスが一軒建っている。理解が出来ないという表情を浮かべるのも無理はないだろう。しかしそんな彼らの感情など知ったこっちゃないとばかりにクレアは手を叩いてから口を開いた。
「じゃ、早速やってみましょうか。木を切る人、加工をする人、乾燥させる人、組み立てる人がまんべんなく存在するように班分けを行っているわ。早く動かないと、あっという間に日が暮れるわよ? まあ最初の数日はテント生活もいいけど、家を完成させないと次の魔法の訓練に進めないからね? それではスタートよ!」
まだあっけにとられる人が多い中、拓郎が動いた。木を切り出して先ほどのクレアと同じように加工などを行い、次々と基礎から組み上げてログハウスを一棟作り上げた。言うまでもなく去年の経験のおかげである。更にベッドやテーブル、椅子なども次々と作っていく。それら度家の中に持ち込み、ひとまずの完成とする。
「うん、たっくんはしっかり覚えていたみたいね。とは言っても一応チェックするわよ?」「もちろん」
クレアが拓郎の作ったログハウスをチェックするが──危ないところは一切なく一発OKとなった。その後拓郎はログハウスの壁の一部を四角に切り抜き、薄い板を取り付けて簡易窓も作り上げた。これで一か月生活する拠点が出来上がった事になる。
「さ、皆もテキパキ動く! どうやればいいのかのお手本は見たわよね? もたもたしている場合じゃないはずよ?」
ガチで作らせるつもりなんだ、とここで理解した生徒&教師は慌てて行動を開始した。木を切り倒し、魔法で運搬する生徒が戻ってくるまでの間に、加工役の生徒達は必死でクレアと拓郎にやり方を聞いて、持ってきた木材でひたすら挑戦。最初は誰もが上手くいかなかったが、ぽつぽつと一定レベル以上の完成品が上がり始める。
次の乾燥役として選ばれた生徒も必死で木材を問題なく乾燥させるように取り組む。最初は木材をひび割れさせてしまったり過剰な熱で燃やしてしまったりといった事が起こったが、徐々に成功品を生み出し始める。その後魔法で木材を運びながら完成させるために組み立てる人が四苦八苦しながらログハウスを組み立てていく。だが、この日は大半が基礎すらまともに作れない状態だった。
「はい、暗くなってきたからそこまで。晩御飯はこちらで用意してあるから取りに来てね。後はテントの用意もしてあるからちゃんと男女分かれて頂戴。いないと思うけど、万が一問題を起こした子はその場でここから追い出すからねー?」
という事で作業が終わり、各班は晩御飯のカレーと簡易で立てられるテントをクレアたちから受け取り、それぞれの場所で晩御飯を取る。疲れ果てていたがそれでも食欲はあるため、食事をとる手が止まることは無かった。
「──いきなりハードだな。まさか宿泊施設はお前らで立てろと言われるなんて思わなかった」「流石クレア先生だよな、スタートからとんでもない」「でも、今日の作業はどれ一つとってもしっかりとした魔法の操作を必要とするものばっかりだった。意味はちゃんとあるよ」
食事をとりながらも、今日やらされたことに関する感想があちこちで上がって来る。しかしそれも長くは続かない。疲労がたまっているため誰もが食事を終えると早々にテントに潜り込み、倒れるように眠りについた。例外は魔女3人と拓郎だけである。その4人は1か所に集まって話し合いを行っていた。
「とりあえず出だしとしては上々? 俺の時よりはどこも建設が早いし」「そうなるように班分けをしましたから。かなり大変でしたが、大体想定通りの進み方ですね」「なんでこんなことをやらせるのかを理解してる子もいたようだしね。それに家が作れればいざという時に役に立つのよ」「伊達に合宿に参加しようと集まった面子じゃないわよね、やる気は十分だし」
初日の様子を振り返っての話し合いだが、予想よりは良い形になっている事を全員で再確認。
「むしろ教師の方が苦戦してたなぁ」「とは言っても大人の意地を発揮して、後半はかなり追い上げてきていたわ。それを見た生徒達も負けじと頑張っていた。あれは良い相乗効果よ」「明日もそうやって互いに刺激を与えあえば、家の完成も直ぐでしょう。予定より少し早く次の訓練に移れそうですね」
と言った話も上がる。それから数点確認を経たのち、明日の朝食は拓郎が作る事を決めて解散。4人も就寝したことで合宿1日目が終了した。




