親衛隊の日常32
大学の入学式が終わり、私たち学生全員に新しい制服と装備が支給された。
差し出された制服は、目の細かい上質な麻で仕立てられており、驚くほど肌触りがいい。
色は「玄」を表す深い黒。さらに、ずっしりとした頑丈な革鎧まで手渡された。
(やばい、本当に本物の兵士になったんだ……!)
急激に実感が湧いてくる。周りを見渡せば、自分と同じ学堂出身者だけでなく、百戦練磨のはずの現役兵の先輩たちまでが、一様に支給品を愛おしそうに抱きしめて感動していた。
後から知ったことだが、その革鎧は正規軍の一線級が使うものと同等の、非常に高性能な逸品だったらしい。
制服自体は大学用のものだったけれど、一目で高級品だとわかる素晴らしい仕上がりだ。
(ああ、胸が熱くなる。私たちは本当に、この国に選ばれたんだ)
それだけではない。あてがわれた寮の個室は以前より一回り広くなり、支給される給与の額面も跳ね上がっていた。
やばい、キテる。完全に私の時代が到来している。
そんな風に、最高に気分の高まったまま翌日からの訓練に臨んだのだが――。
そこで私は、激しい衝撃に見舞われることになった。
「……訓練が、ぬるい?」
思わず口から声が出そうになった。
走る距離も、模擬戦の強度も、何もかもが物足りない。え、本当にこの程度なの?
その後に続いた座学にしても、内容は学堂でさんざん叩き込まれた基礎中の基礎、そのおさらいばかりだった。
(いや、おかしい。ここにいるのって、現役兵のなかでも選りすぐりの『上澄み』のはずだよね……?)
期待が大きかった分、拍子抜けというレベルではない。
深い困惑に包まれたまま、大学兵士としての私の最初の一日は、拍子抜けするほど呆気なく過ぎていってしまった。




