親衛隊の日常31
五百人を超える入学生が一堂に会する講堂は、異様な熱気に包まれていた。
国中から集まった現役の兵士たちの中でも、とりわけ優秀であると推薦された精鋭ばかり。その中の一人として、私も身を置いている。
いよいよ迎えた、大学の入学式。
壇上に現れたのは、今回もやはり我が国の王だった。
威風堂々としたその姿から放たれる演説の内容は、二年前の学堂の時とほぼ同じものだ。
「日々の鍛錬に打ち込み、より優秀な兵士となって我が国に尽くせ」
熱い言葉が講堂に響き渡る。だが、私の視線はその後に祝辞を述べた「悪来」将軍に完全に釘付けになっていた。
将軍は、かつての王がそうしていたのと同じように、獰猛な猛獣を傍らに侍らせ、まるで子猫とでも戯れるかのように優しく――しかし、圧倒的な力で遊んでいたのだ。
(……この国の指導者は、どいつもこいつも化け物なの?)
背筋を凍りつかせるような戦慄が、私の全身を駆け抜ける。
前回の式典から二年が経ち、私は死に物狂いで腕を磨いてきた。「学堂の女性筆頭」にまで上り詰めたからこそ、今の私には正確に自覚できてしまう。
――自分は、逆立ちしたって絶対にあの境地には辿り着けない。
ああ、なぜ私は女性に生まれてしまったのだろう。
もしも私が男性として生まれていたならば。この身を極限まで鍛え上げたその先に、もしかしたらあの怪物たちの境地へ辿り着く道が、ほんの少しでも見えていたのかも知れないのに。
己の性への理不尽さと、どれだけ手を伸ばしても届かぬ高みへの悔しさに胸を締め付けられ、私は一人、深く頭を垂れて嘆きを漏らしていた。
「おい、どうした? 顔色が悪いぞ」
不意に、そんな私を心配して、一人の同僚が声を掛けてくれた。
彼女は地方の前線からやってきた、同じ女性の兵士だ。
同じ女性の身であれば、筋力の限界や、この深い悲しみ、そして悔しさをきっと痛いほど共有できるに違いない。
私は胸の内に渦巻く熱い思いと、「これが男性であれば……」という悔恨の念を、藁にもすがる思いで彼女にそのままぶつけた。
私の必死の訴えを聞いた彼女は、一瞬、きょとんとした顔をした。
そして、次の瞬間――。
「はぁ? あんた、馬鹿なの? あんなの男だって無理に決まってるでしょ!」
お腹を抱えて、講堂の隅で盛大に笑い飛ばされてしまった。
……あれ?
男性なら、いけるんじゃないの……?




