親衛隊の日常30
「うわあ……すごい荷物の量。本当に続々と入ってくるね」
大学の敷地内に建てられた寮の前に立つと、あちこちから活気ある声が響いていた。
これまで通り, 建物は男性寮と女性寮に分かれているけれど、どちらの入り口も引っ越し作業に追われる人たちでごった返している。
私たちのいた未成年の施設(学堂)からこの大学に進学したのは、全部で百五十人ほど。
そのうち女子は四十人程度だったから、最初は少し静かな寮生活になるのかな、なんて思っていた。
――だが、それは大きな間違いだった。
「あ、お荷物持ちますよ! 部屋はあっちの棟です!」
「ありがとう、助かるわぁ。広い街だから迷っちゃって」
大きな行李を軽々と背負った女性たちが、次から次へと女性寮の門をくぐっていく。
彼女たちは、すでに前線や各地の部隊で現役の兵士として活躍してきた女性たちなのだという。今回、さらに学びを深めて幹部になるために大学へ入学することになり、その数はなんと百人以上!
「……ねえ。現役の兵士さんって聞いてたから、もっとこう、ピリピリした怖い人たちかと思ってたけど」
同じ学堂出身の同級生が、不思議そうに呟いた。
「そうだね。年上のはずなんだけど……なんか、すごく素朴で優しそうな人が多いかも」
遠方の駐屯地や、地方の防衛拠点から遥々やってきた人も多いせいだろうか。都会の垢抜けた雰囲気はないけれど、人懐っこい笑顔を見せる人が多くて、なんだかホッとしてしまう。
「そっか。彼女たちは前線での経験は上かもしれないけど、この『軍事都市』の住人としては、実は私たちのほうが先輩になるんだよね」
「ちょっと! だからって年上の女性兵士の方たちに『私たちが先輩ですよー!』なんて先輩風を吹かせちゃ駄目だよ!? 修羅場をくぐってきた本物の強者んだから!」
「ふふ、わかってるって。でも、入学式までの間、この都市の美味しいお店とか、便利な施設の案内くらいなら喜んでさせてもらおうよ」
お互いに顔を見合わせて笑い合っている間にも、向こうの男性寮には同じように前線帰りの若い兵士たちが次々と吸い込まれていく。
なんだかんだで、学堂組と現役兵士組、男女すべてを合わせると、今回の大学の入学者数は余裕で五百人を超えるみたいだ。
五百人って……これまでの規模とは完全に桁が違う。
ここで過ごす大学の期間は二年間。
学ぶ内容も、これまでの基礎的なものから、より高度な戦術や専門知識へと変わっていく。
経験豊富な年上のお姉さんや、頼もしい現役兵たちに囲まれての新しい生活。
少しだけ気後れしそうになるけれど、ここで弱気になっていては、学堂の女性筆頭の名がすたるってものだ。
「よしっ。年上の人たちが相手でも、勉強も訓練も絶対に負けないぞ!」
ぐっと拳を握り締め、私たちは新しい同期たちで賑わう寮の喧騒の中へと、力強く一歩を踏み出した。




