親衛隊の日常27
卒業がすぐそこまで近づいてきていた。
あの日、三人で別れを覚悟し、お互いを励まし合って以来、私は「これで大学に行けなかったらあいつらに合わせる顔がない」と、以前にも増して猛烈に勉強へと邁進していた。
そんな努力が実を結び、成績がさらに跳ね上がったせいだろうか。
最近の休日は、なぜか異例の「面会」が連続して入るようになっていた。
それも、今まではお目にかかることすら叶わなかったような、名だたる大物貴族やその奥方様ばかりなのだ。
「ごきげんよう、優秀な見習いさん。私は比侯・干の妻、緑と申します。この度は急な面会を受けていただき、感謝いたしますわ」
お上品に微笑むのは、商の中でも屈指の最高幹部の妻。
国費で運営されているこの施設に、わざわざ高貴な奥方様たちが直々に足を運び、決まって同じような甘い誘い文句を口にする。
「今回の入学式で、あなたが在校生の女子代表として見事な答辞を述べられたと伺いましたわ。……ねえ、あなたが望むなら、というお話なのですけれど。ぜひ我が領地の軍(領軍)に所属してほしくて。ここを卒業してすぐでも、あるいは大学を卒業してからでも構いませんわ。もちろん、大学へ進学されるなら、そのための経済的な支援も一切惜しみません」
なぜ、私にそこまでしてくれるのか。正直、まったく理解できない。
私はまだ成人にもなっていない、言い方は悪いけれど、ただの乳臭いガキなのだ。
「温かいご配慮、心より感謝いたします。もし……仮にですが、大学へ進学が叶わなかった際には、奥様の領地への配属も十分に考慮させていただきます」
(まあ、絶対に大学へ進学して王様のために戦うんだけどね!)
心の中で盛大に舌を出しつつも、面と向かって最高幹部の妻を拒絶するわけにもいかない。笑顔で完璧な外交辞令をこなす。ああ、めちゃくちゃ面倒くさいなぁ!
そもそも、私は国と王様に恩を返すために兵士になりたいのだ。
特定の貴族が持つ「領軍」に就いてしまっては、国への貢献が間接的なものになってしまうではないか。……まあ、怖くてそんな本音は口が裂けても言えないけれど。
それにしても、やっぱり分からない。
私はただの身寄りのない孤児で、後ろ盾になるような実家もない。それなのに、なんで私なんかにこれほど声をかけてくるのだろう。いくら女子のトップクラスの成績で、送辞を読んだからって、ちょっと私を高く評価しすぎではないだろうか。
「ふふ、今日はありがとうお嬢さん。今、あなたは各家から大人気みたいだけれど、我が家もなかなか良い条件を出せるわよ。覚えておいてね」
「はい。本日はこちらこそ、貴重なお時間をいただきありがとうございました」
お上品に頭を下げて奥方様を見送る。
……ふぅ、と溜息を吐く暇すらない。この後、教官たちの元へ行き、いつも通り面会がどんな内容だったか、どう思うかを克明に報告しに行かなければならないのだ。
あ〜あ! せっかくの休日が、まるまる報告書と面会で潰れていく。
私の貴重なお休みを返しやがれ、クソ貴族どもめ――!




