親衛隊の日常24
大規模な遠征軍を見送った後も、私たちは変わらず日々の勉強や訓練に邁進していた。
けれど、やはり八千人もの兵が抜けた軍事都市の中は、どこか火が消えたように人が少なくなっている。
それは目に見える形で都市の経済にも影響を及ぼしていた。
ある日の訓練後、教官たちが真面目な顔で私たちにこう告げたのだ。
「いいか貴様ら。休日の外出時、買い物はできるだけ都市内部の商店を利用してやってくれ。兵が減少して商店の利益が落ちれば、巡り巡って都市全体の配給や設備の質が下がってしまうからな」
なるほど、確かにその通りだ。
普段から私たち学生の生活を支えてくれている商店街なのだから、潰れてもらっては困る。
休日にわざわざ王都(朝歌)の大きな市場まで遊びに行くくらいなら、この都市の商店でお金を落として済ませよう。……ただ、どうしても朝歌の市場と比べてしまうと、品揃えの面で見劣りするのは否めないのだけれど。
そんなことを考えていると、同じ女子寮の同級生たちが目に入った。私はニヤニヤしながら彼女たちを振り返った。
「よう。たまには後輩たち抜きで、私たちだけで飯にでも行こうよ。あ、当然だけど支払いは個別(割り勘)ね」
「本当に、貴方は後輩がいないと途端にガサツになるわね」
私がいつもの口調で誘うと、同級生が呆れて、その中の一人がすかさずニヤリと笑う。
「おいおい、そんな口の悪さを後輩たちに聞かれたらどうするのよ? 憧れのお姉様が本当はこんなにガサツだって露呈したら、あの子たち一発で失望しちゃうぞ?」
かぁー! うっさいわね!
へいへい、お望み通りの「お姉様」を見せてやろうじゃないの。
私はわざとらしく、ふんわりと微笑んで声を一段高くしてみせた。
「もう、嫌だわ皆さん。これは私なりの、親愛のしるしですのに」
どうだ、参ったか。
「……うわ。やれば出来るんだから、普段からそうしてれば可愛げがあるのに」
糞が。引きつった顔をしやがって、まあいいわ。
「もう、行くわよ。ふふっ」
いつもの地に戻って笑い合いながら、私たちは商店街へと歩き出す。
こうしてこのメンバーで馬鹿話をしながら過ごせる時間も、あと半年。
卒業すれば、半分は大学へ進学し、残りの半分は各地の部隊へと散っていくのだ――。




