親衛隊の日常23
私たちの暮らす軍事都市に、あの「季勝」将軍が演説にやってきた。
演説の内容は、商に服属しない「人方」や「東夷」の勢力を完全に切り従えるための、大規模な遠征計画についてだった。
この軍事都市に駐屯している一万五千人の正規軍のうち、じつに八千人もの兵が遠征軍として動員されるという。
その日から、都市の空気は一変して騒がしくなった。
いつもは厳しい教官たちも、心なしかどこか上の空で、休日であっても「出来るだけ寮の中に居るように」と通達される始末だ。
ああ、つまんないの。
お出かけもできないのならしょうがないと、女子寮の仲間たちとささやかなお茶会を開催したのだが……これが間違いだった。
「お姉様! 私たちも来ちゃいました!」
糞、なんでこんなに集まってくるんだ。
特に新入生の後輩たち、可愛い君たちのことは大好きだけれど、今回は流石に呼んでいないよ?
無下に追い返すわけにもいかず、予定外の出費(おやつ代)がかさんでしまった。とほほ……。
――そして、ついにその日がやってきた。
私たちは整列し、出征していく正規軍の皆さんを見送ることになった。
成人した「大学」の先輩たちと共に、未成年の私たち見習い兵も、この日のために用意された特別な衣装を着せられて門の前に並ぶ。
なぜか見送り役に選ばれたのは女性兵士(見習い含む)ばかりなのだが、これには何か意味があるのだろうか。少し解せぬ。
「頑張ってこいよ!」
「ご武運を!」
周囲から様々な掛け声が飛び交う中、私たち学生も声の限り、精いっぱいの声援を送った。
遠ざかってゆく、圧倒的な黒い軍勢。
あの中に、私の知っている先輩たちもいるのだろうか。
彼らの無事を祈りながら叫び続けたせいで、式典が終わる頃にはすっかり喉が痛くなってしまっていた。




