盗撮されたせいでパニックです
盗撮されたせいでいろいろパニックです
せなの膝の上で、
なぎとはせなの声に耳を澄ませていた。
歌というより、
息に近い、柔らかい音。
ステージで響かせる声とは違う。
誰か一人のためだけに落ちるような、
そんな声。
なぎとはその声に合わせて、
ゆっくり呼吸を整えていた。
「……せな……」
「な、なに……」
「……もっと……」
「本当……む、無理……! 限界……!」
せなは真っ赤になりながら、
それでも小さく声を重ねた。
その瞬間――
――カシャッ。
せなは気づかない。
でも、
ドアの隙間から覗いていたみのは、
スマホを構えたまま震えていた。
(……これは……
これは……
撮らなきゃ……)
みのは無言で連写した。動画も何本か撮った。
なぎとが膝枕。
せなが歌ってる。
距離ゼロ。
甘すぎる空気。
完璧な“証拠写真”が量産された。
そして――
みのはそっとドアを閉めた。
――
みのはスマホを握りしめ、
しゅいとひばりのグループチャットに写真を送った。
数秒後――
しゅい『は???????????』
ひばり『っっっっっっっっっっっ!?!?!?!?』
しゅい『なぎと……せなの……ひざ……!?!?!?』
ひばり『せなさん……歌って……?
え……これ……声……柔らか……』
しゅい『なんで……俺聞いたことない声なんだよ……』
ひばり『僕も……です……』
しゅい『行く』
ひばり『行きます!!!!』
---
その時、せなはまだ歌っていた。
なぎとは膝の上で、
せなの声に合わせて呼吸をしている。
「……せな……」
「な、なに……」
「やばい……熱上がってるかも……」
「え、え!? なんで!?」
「せなが……可愛すぎて……心臓……止まって……やばいから……」
「っ……!」
せなは胸を押さえた。
(本当に……素直すぎる……! 可愛すぎる……!)
その時だった。
――ドンッ!!
ドアが勢いよく開いた。
「せなーーーーーー!!!!」
「せなさん……???」
「っっっ!?!?!?」
しゅいとひばりが同時に飛び込んできた。
せなは反射的に歌を止め、
なぎとは膝の上で固まった。
沈黙。
地獄のような沈黙。
しゅいの顔は真っ赤。
ひばりの顔は真っ青。
二人とも、
“嫉妬”と“照れ”と“ショック”が混ざった顔をしていた。
「……なぎと……
なんで……せなの膝……」
ひばりの声は震えていた。
しゅいは唇を噛みしめている。
「……お前……
なんで……そんな顔で……歌わせてんだよ……」
なぎとはゆっくり顔を上げた。
「……歌ってた……から……」
「歌ってたのは知ってる!!
そうじゃなくて!!」
しゅいが叫ぶ。
「なんで……
そんな……柔らかい声……
俺、聞いたことねぇんだけど……」
ひばりも震える声で続ける。
「……僕も……です……
せなさん……
そんな……優しい声……
なぎとさんにだけ……?」
「ち、違う!!
違うから!!
そんなつもりじゃ……!」
せなは真っ赤になって叫んだ。
なぎとはぼそっと言う。
「……俺が……聞きたいって言った……」
「なぎとぉぉぉ!!! お前なんて事言ってるんだぁ!!!!!!」
部屋中が爆発した。




