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恋のヒント大戦争、ただし全員せなに弱い

恋のヒント大戦争、ただし全員せなに弱い

 ひばりの静かな言葉が落ちたあと、

 テーブルの上には、

 “好きな人”という爆弾がまだ転がっていた。


 しゅいがストローをくるくる回しながら、

 せなをじっと見つめる。


「……で、せな。

 結局どうなんだよ。いるの? いないの?」


「い、いるとかいないとか……

 そんなの言えるわけ……!」


 せなは顔を真っ赤にして反論する。


 なぎとは腕を組み、

 真剣な顔でせなを見つめていた。


「……せな。

 俺たち、気になるんだよ。

 だって……今日のせな……

 なんか……落ち着かないっていうか……」


「落ち着いてるよ!!」


 せなが叫ぶと、

 あおばがまだ赤い顔のまま、

 ぽつりと呟いた。


「……落ち着いてないよ。

 さっき俺に抱きついた時も……

 すごい勢いだったし……」


「それは違う!!」


 せなは慌てて否定するが、

 あおばは放心したまま、

 耳まで真っ赤にして固まっていた。


(あおば……まだ復帰してない……)


 ひばりはというと、

 胸元を押さえたまま、

 静かに息を整えようとしていた。


 でも、

 せなとあおばの距離が近づくたび、

 ひばりの肩がわずかに揺れる。


(……ひばり……焦ってる……

 でも、声には出さない……

 ひばりらしい……)


---



 せなは深呼吸して、

 三人を順番に見た。


「……じゃあさ。

 逆に聞くけど……

 しゅい、なぎと、ひばり。

 好きな人……いるの?」


 その瞬間、

 三人の動きが止まった。


「えっ」


「……は?」


「……っ……」


 ひばりの肩がまた揺れた。

 しゅいはストローを噛むのをやめ、

 なぎとは目をそらし、

 あおばは放心のまま固まっている。


 せなは続ける。


「……あおばは知ってるから除外ね。

 しゅい、なぎと、ひばり。

 三人は……どうなの?」


---



 しゅいが最初に反応した。


「お、俺!?

 い、いるかどうかなんて……

 そんな急に言えるかよ……!」


 耳が赤い。

 しゅいは落ち着かない手つきでストローをいじる。


「べ、別に……

 いないわけじゃ……ないけど……

 言えるかって言われたら……

 言えないっていうか……!」


「じゃあいるんだ」


「い、いるとは言ってねぇし!!」


 しゅいは顔を真っ赤にして、

 テーブルを軽く叩いた。


(しゅい……分かりやすい……

 でも、せなは気づいてない……)


---



 なぎとは深呼吸して、

 せなを見ないようにしながら言った。


「……俺も……

 好きな人……いるけど……

 言えるかって言われたら……

 無理……」


「なんで!?」


「なんでって……

 恥ずかしいだろ……!」


 なぎとは耳まで真っ赤で、

 手元のカップをぎゅっと握っていた。


「……でも……

 もし言うとしたら……

 その……“せ”から始まる……」


「せ……?」


 せなが考え込む。


 しゅいが慌ててなぎとの肩を叩く。


「ちょ、なぎとそれ本当に言ってよかったの?」


「っ……! 今のなし! 本当に違う!」


(なぎと……危なすぎる……)


---



 せなはそっとひばりを見る。


「……ひばりは?」


 ひばりは、

 その瞬間だけ呼吸を止めたように見えた。


 視線はテーブル。

 指先はわずかに震えている。

 姿勢は崩さない。

 でも、内側で何かが大きく揺れているのが分かる。


「……っ……」


 ひばりはゆっくりと息を吸い、

 小さく、震える声で言った。


「……僕は……

 好きな人が……いるかどうかは……

 その……」


 ひばりは言葉を探すように、

 胸元を押さえた。


「……言ったら……

 全部……伝わってしまうので……

 言えません……」


 その声は静かで、

 でも確かに“本気”が滲んでいた。


 せなの胸が跳ねる。


(ひばり……

 なんでそんな言い方……

 反則……)


---


 すると、しゅいが空気を破るように言った。


「じゃあさ!

 ヒントだけでもいいだろ!」


「しゅい!?」


 なぎとも乗ってくる。


「……俺も……

 ヒントくらいなら……」


「なぎとまで!?」


 そして――

 三人の視線が、

 ひばりにも向く。


「ひばりも……ヒント……」


「っ……!」


 ひばりの肩が大きく揺れた。


 せなは慌てて言う。


「ひ、ひばりは言わなくていいから!!」


「なんでひばりだけ特別扱いなんだよ!」


「特別扱いじゃない!!」


「いや特別だろ!!」


「違う!!」


 せなとしゅいが言い合う横で、

 なぎとは真剣に考え込み、

 あおばはまだ赤い顔で放心している。


 そして――

 ひばりは静かに、

 でも確実に限界に近づいていた。


「じゃあ3番目に……いいます」


「「「え……!?!?」」」

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