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四方向からのデート勧誘、修羅場すぎる

四方向からのデート勧誘、修羅場すぎる

その時だった。

 静かだったせなの部屋の空気が、突然揺れた。


 カチャ、とドアノブが回る音。

 続いて、勢いよく扉が開く。


「せな〜、一緒にゲームしよ!」


 明るい声が弾ける。

 しゅいが顔を覗かせ、部屋の空気を一瞬で変えた。


「せな、その……一緒にお菓子作ろうぜ」


 なぎとは頬を少し赤くしながら、

 手に持った紙袋をぎゅっと握っている。


「せなさん、カフェ行きませんか?」


 ひばりは控えめに微笑み、

 ドアの影からそっと顔を出した。


 入ってきた三人は、

 あおばとせなが向かい合って、

 どちらも顔を真っ赤にしているのを見て――


「「「え……?」」」


 その場で固まった。


 空気が一瞬で凍りつく。

 部屋の時計の秒針の音だけが、やけに大きく響いた。


 そして――。


「ちょ、あおば!? 何やってんの!」


 しゅいが弾かれたように動き、

 あおばに飛びついて、せなから引きはがす。

 その勢いでベッドがきしむ音がした。


「あおばお前何してるんだよ……。……あおば、後で覚えとけよ?」


 なぎとは眉間に皺を寄せ、

 低い声であおばを睨みつける。

 その目は怒りよりも、焦りと嫉妬が混ざっていた。


「えっと……何してたんですか……?」


 ひばりは胸の前で手を重ね、

 不安そうに二人を見比べる。

 声は震えていた。


「こ、こここれは……! 本当に違くて!」


 あおばは首をぶんぶん振り、

 耳まで真っ赤にして叫ぶ。


「そう! 本当に違くて……!」


 せなも涙目で訴える。

 頬は熱く、心臓はまださっきの出来事の余韻で暴れていた。


「じゃあ何があったか説明してもらおうか」


 しゅいが腕を組み、

 じとっとした目で二人を見る。


「……無理」


 あおばはそっぽを向き、

 唇を噛んで小さく言った。


「は!? 早く言えよ!」


 なぎとはあおばの肩を掴み、

 ぐいっと引き寄せる。


「……だって……言いたくない……し……」


 あおばは顔を真っ赤にしながら、

 視線を床に落とした。


「わ、私も……言えない……」


 せなも同じように俯き、

 胸の前でぎゅっと拳を握る。


 二人はそのまま、

 耐えきれずにうずくまってしまった。


「で……つまりこれどういう状況……ですか……?」


 ひばりは焦ったように視線を泳がせる。


「つまり、あおばがせなといちゃついてたから俺たちに話したくないってことでしょ。後であおば、拷問な」


「ご、拷問……!? と、と言うかいちゃついてないし! こんなバカなやつの事、いちゃつくわけないだろ!」


「な……! バカじゃないし! バカはあおばでしょ! バカあおば!」


 せなは勢いであおばをビンタした。

 乾いた音が部屋に響く。


「痛! ちょ、力強いって!」


「もうあおばなんて知らない!」


 せなは頬を膨らませ、

 ベッドへと歩いていく。

 足音が怒りをそのまま表していた。


「で……3人は何しにきたの?」


 せなはむくれたまま問いかける。


「え? 俺はゲームしようと思って……」


 しゅいはコントローラーを握りしめたまま、

 気まずそうに笑う。


「お、俺は……その……お菓子一緒につくらないかって……誘いにきただけ……だし」


 なぎとは耳まで赤くしながら、

 紙袋を胸に抱えた。


「カフェ行こうと思ったんですけど……」


 ひばりは視線を落とし、

 指先をもじもじと動かす。


「ちょ、お前ら! せなとはまだ話の途中で……!」


 あおばが叫ぶ。


「なんの話?」


「だ、だから……っ! 秘密って言ってんだろ!」


「と言うか、話の途中でも俺はせなとゲームするためにここきたの。話の途中とか関係ないし」


「お、俺だって……! お菓子とか……あんま作んないし……せなと作ったら……楽しそうかなって……思ってきたんだよ! なんか文句ある……?」


 なぎとは顔を真っ赤にしながら、

 必死に言葉を絞り出す。


「ぼ、僕は……またカフェでお話とか色々してもらえたら……いいな〜なんて……思ってたんですけど……それだけじゃダメですかね?」


 ひばりは控えめに微笑むが、

 その目はどこか切なかった。


「だからお前ら! せなは俺と話すの! 出てけ!」


「は!? お前が出てけよ!」


「そうだそうだ!」


「は? なんで俺……」


 三人はわちゃわちゃと喧嘩を始める。

 声が重なり、部屋の空気がさらに騒がしくなる。


 ひばりはアワアワしながら、

 どう止めればいいのか分からずに立ち尽くしていた。


 そして――。


「じゃあ、せなに決めてもらおうぜ」


「お、それいいじゃん」


「賛成!」


「い、良いんじゃないですか?」


 四人は同時に頷き、

 せなの方へ向き直る。


 そして、

 四つの手が差し出された。


「え……? え……!?」


 せなは息を呑む。

 胸がぎゅっと締めつけられる。


 誰も喋らない。

 ただ、せなの選択を待っている。


(これ、選べば良いんだよね……!?

 え、これどうすれば……!

 しゅいとゲームするの楽しいし……

 なぎととお菓子作り……見たい……

 ひばりと話すと落ち着くし……

 でも、あおばとさっきの続きも……)


 心臓がうるさい。

 手のひらが汗ばむ。

 視界が揺れる。


 そして――


「3人とも、ごめん……!」


 せなは息を吸い込み、

 ○○の手を取った。

 

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