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照れたら負けのはずなのに、君は勝てない

照れたら負けのはずなのに、君は勝てない

 家の玄関を開けた瞬間、

 しゅいが顔を出した。


「あ、せな、おかえり! 遅かったね」


「……」


 せなは無言で靴を脱ぎ、

 そのまま階段を上がろうとする。


「え、ちょっと……せな?」


 今度はなぎとが顔を出す。


「おい、どうした。なんか顔赤くねぇ?」


「赤くない」


 即答。


 そしてそのまま自室のドアを閉め、

 鍵をかけ、

 ベッドにダイブ。


 布団を頭までかぶる。


「……っ……なんで……

 なんであんなこと言っちゃったのよ……!」


 枕に顔を押しつけてバタバタ暴れる。


(“照れたよ!! 私の負け!!”

 ……って……

 何あれ……!?

 私、何言ってんの!?)


 思い出すたびに心臓が跳ねる。


(あおばの顔……

 あんなに真っ赤で……

 なんか……

 なんか……

 ずるい……)


 布団の中で丸くなりながら、

 せなは小さく呻いた。


「……もう無理……

 明日、顔合わせられない……」


 でも、

 明日は必ずあおばはこの家にいる。


  そして、翌朝。せなは深呼吸してから部屋のドアを開けた。


 その瞬間。


「おはよ、せな」


「っ!?」


 目の前に、

 あおばが立っていた。


 距離、近い。


 せなは反射的にドアを閉めた。


 バタンッ!!


「ちょ、ちょっと!?

 閉めんなって!!」


 ガチャッ。


「開けないで!」


 バタンッ。


「開ける!!」


 ガチャッ。


「やめて!!」


 バタンッ。


「やだ!!」


 ガチャッ。


「しつこい!!」


 バタンッ。


「入れて!!」


「入れない!!」


 ガチャガチャガチャガチャ!!


「ちょ、ちょっと!!

 壊れる!!」


「じゃあ開けろ!!」


「やだ!!」


「開けろ!!」


「やだってば!!」


 ガチャガチャガチャガチャ!!!


「わかった!!

 開けるから!!

 壊さないで!!」


 せなは観念してドアを開けた。


 あおばは息を切らしながら立っていた。


「……はぁ……

 お前……頑固すぎ……」


「そっちがしつこいの!」


「しつこくもなるわ!!」


「なんでよ!」


「昨日の……あれ……

 聞かせてもらってないからだろ……!」


「……は?」


 せなは固まった。


 あおばは顔を赤くしながら言う。


「昨日の……

 “照れた”ってやつ……

 詳しく……聞かせてほしい……」


「っ……!?」


 せなは一歩後ずさる。


「な、なんで……?」


「なんでって……

 気になるに決まってんだろ……!」


 あおばは真っ赤な顔で続ける。


「だって……

 お前、絶対照れないのに……

 昨日だけ……

 あんな……

 可愛い言い方して……」


「っ……!!」


 せなは耳まで熱くなるのを感じた。


(やば……

 なんでそんな……

 ストレートに言うの……)


「で、でも……

 別に……

 そんな大したことじゃ……ないし……!」


「大したことだよ!!」


 あおばは一歩近づく。


「俺……

 あれ聞いて……

 マジで心臓止まるかと思ったんだぞ……」


「……っ……」


 せなは視線をそらす。


「……だから……

 その……

 どうして照れたのか……

 ちゃんと……聞きたい……」


「……っ……

 そ、それは……」


 せなは言葉を探す。


(言えるわけない……

 あんなの……

 あおばの顔が近くて……

 声が優しくて……

 なんか……

 変な気持ちになって……)


「……あおばが……

 なんか……

 昨日……

 変だったから……」


「変ってなんだよ!」


「変は変でしょ!!

 なんか……

 距離近いし……

 声低いし……

 優しいし……

 なんか……

 なんか……!」


「なんかってなんだよ!!」


「知らない!!

 自分で考えて!!」


「はぁ!?

 なんで俺が考えんだよ!!」


「知らない!!」


 せなは照れ隠しで怒鳴った。


 その瞬間。


 あおばの表情が少しだけ険しくなった。


「……お前さ……

 昨日から……

 逃げてばっかじゃん……」


「逃げてない!」


「逃げてる!」


「逃げてないってば!!」


「逃げてるって言ってんだろ!!」


 あおばはぐっと近づき、

 せなの肩を掴んだ。


「っ……!!」


 せなはびくっと震え、

 その場にしゃがみ込んだ。


 顔が一瞬で真っ赤になる。


「ちょ、ちょっと!?

 せな!?

 ど、どうしたの!?」


「……っ……

 な、なんでも……ない……!」


「なんでもなくないだろ!!

 顔真っ赤だし!!

 ……え、もしかして……

 照れてる……?」


「て、照れてない!!」


「照れてるよな!?」


「照れてないってば!!」


 せなは顔を覆って震える。


(無理……

 近い……

あおばの手……

 熱い……

 なんでこんな……)


 あおばはその様子を見て、

 ゆっくりと口元をゆがめた。


「……へぇ……」


「な、なに……」


「やっぱ照れてんじゃん」


「照れてない!!」


「照れてる」


「照れてない!!」


「照れてるって」


「照れてない!!」


 あおばはしゃがんで、

 せなの顔を覗き込む。


「……昨日より……

 今日の方が……

 可愛いじゃん」


「っっ……!!」


 せなは耳まで真っ赤になり、

 思わず床にうずくまった。

 でも弱音は吐かない。

 吐くわけがない。


「か、可愛いとか……

 言わなくていいし……!」


 声は強気。

 でも震えてる。


 あおばはその震えに気づいて、

 さらに顔を赤くした。


「……ねぇ」


「な、なに……」


「せな……可愛いすぎる」


「っ……!! 

 あ、あおばのことなんて知らない!!

 知らないから!!」


 せなは両手で顔を覆い、

 そのまま床に丸くなる。

 耳まで真っ赤なのは隠しきれない。


 あおばは真っ赤な顔で、

 でもどこか嬉しそうに言った。


「……今日も……

 俺の勝ちだな」


「勝ちとかない!!」


「ある」


「ない!!」


「あるって」


「ないってば!!」


 せなは顔を隠したまま叫ぶ。

 声は強気なのに、

 語尾がほんの少し震えている。


 あおばは照れ笑いしながら、

 その横にそっと座った。


「……隠しても無駄だぞ」


「隠してない!!」


「隠してる」


「隠してない!!」


 せなは必死に否定するが、

 耳は真っ赤。

 肩まで赤い。


 春の朝の光が差し込む部屋で、

 二人の距離はまた少し縮まった。

 

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