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星が流れるたび、触れたくなる距離

無理

星が流れるたび、触れたくなる距離

レストランを出たあと、

 二人は並んで歩いていた。


 夕方の風が少し冷たくて、

 でも心臓はずっと熱いまま。


(……あおば……

 アーンの時……

 顔真っ赤だった……

 思い出しただけで……

 無理……死ぬ……)


 せなは心の中で何度も悲鳴を上げていたが、

 表情はあくまで平然。


 一方のあおばは――


(……くそ……

 なんで俺ばっか照れてんだよ……

 次こそ……絶対……

 せなを照れさせる……!)


 決意だけは強い。

 でも耳はまだ赤い。


「……次、どこ行く?」


 あおばが少し低い声で聞いてくる。


「どこでもいいよ?」


「……じゃあさ」


 あおばはスマホを見せてきた。


「プラネタリウム……行かね?」


「いいよ」


 せなは笑顔で言う。

 あおばはまた一瞬固まった。


(……その笑い方……

 ほんと……反則……。俺……本当にみのが好きだよな……?)


 でも言わない。

 言ったら負けだ。


 ――そしてプラネタリウム到着。

  館内は薄暗くて、

 静かで、

 空気がひんやりしている。


 ドーム状の天井に星が映し出されると、

 まるで宇宙にいるみたいだった。


 二人は並んで座る。


 席は思ったより近い。

 肘が触れそう。


(……やば……

 暗い……

 距離近い……。これ、攻められるんじゃ……)


 せなは心の中でパニックを起こしながら、

 表情はあくまで落ち着いている。


 一方のあおばは――


(……暗い……

 近い……

 これ……チャンス……?

 いや……でも……

 近すぎ……

 やば……)


 攻める気持ちと照れが戦っていた。


---


 そして、星がゆっくり流れ始めた頃、

 あおばが小声で言った。


「……なぁ、せな」


「ん?」


「……あれ、見える?」


 あおばは天井の星を指差す。

 でも、指が微妙に震えている。


「どれ?」


「ほら……あれ……

 あの……なんか……

 こう……三角みたいな……」


「三角みたいな?」


「そう……三角……

 いや、三角じゃねぇな……

 なんだこれ……」


「分かってないじゃん」


「うるせぇ!」


 あおばは照れながらも、

 せなの肩に少しだけ寄ってきた。


「ほら……ここ……

 ここから見ると……

 見えるだろ……?」


 距離が近い。

 近すぎる。


(ちょ……! 肩触れてるって……! 近いよ……!)


 せなは心臓が爆発しそうなのを必死に抑えながら、

 平然とした声で言う。


「うん、見えるよ」


「……っ……

 なんでそんな普通なんだよ……」


「普通だから」


「普通じゃねぇよ!!

 こんな近いのに……!」


「近いの慣れてるから」


「またそれかよ!!」


 あおばは頭を抱えた。


(ほんと、照れてる顔かわいい。もっとしてほしいな)


---



 星が流れ、

 館内がさらに暗くなった時。


 あおばがそっと、

 せなの手の近くに自分の手を置いた。


 触れてはいない。

 でも、触れそうな距離。


(え? なんか手近くない? 当たりそうなんだけど……)


 せなは心の中で転げ回っていたが、

 表情はあくまで冷静。


 一方のあおばは――


(……手……

 触れたい……

 でも……怖ぇ……

 いや……でも……

 攻めるって決めた……!)


 そして――


 あおばの指先が、

 せなの指先にそっと触れた。


「……っ……!」


 あおばの肩がびくっと震える。


「どしたの?」


「な、なんでもねぇ!!」


 声が裏返っている。


(今手触れたよね!? ちょ、限界くるって……!)


 せなは心臓を押さえたくなるのを必死に我慢する。


「……せな」


「ん?」


「……手……

 繋いでいい……?」


 あおばは顔をそらしながら言った。

 耳は真っ赤。


(!? こいつ、何言ってるの!?!? バカなの!?!? だいたい、あおばはみのが好きじゃ……! 仕返しのためにここまでしなくても!)


 でも、せなは平然と返す。


「いいよ?」


「……っっ!!?」


 あおばは一瞬固まり、

 そして震える手でせなの手を握った。


 ぎゅっと。


「……あ……」


 あおばの息が止まる。


「どうしたの?」


「ど、どうもしてねぇよ! 別に、照れたりとか全然、全然してないから! ってか、お前こそ実は暗闇の中で照れてるんじゃねぇの!?!?」


「別に? 普通だよ」


「なんでだよ……」


 あおばは頭を抱えた。


(……ほんとは……

 めっちゃ照れてる……

 手……あったかい……

 無理……

 逃げたい……

 でも……離したくない……)


 せなは心の中でパニックを起こしながら、

 あくまで平然を保つ。


---


 星が流れ、

 静かな音楽が流れる中。


 あおばは手を繋いだまま、

 ぽつりと呟いた。


「……なぁ、せな」


「ん?」


「……お前……

 ほんとは……照れてんだろ……?」


「別に?」


「いや、照れてないのが逆におかしい!」


 あおばは立ち上がりそうな勢いで叫んだ。


「なんでだよ……

 なんでそんな平然なんだよ……

 俺……こんな……

 手……震えてんのに……!」


 あおばの手は確かに震えていた。


(本当はめっちゃ照れてる……! でも、ここで照れたらダメだ! 頑張れ、私! よし、反撃開始……!)


「……あおば」


「な、なんだよ……」


「手、あったかいね」


「っっっ!!??」


 あおばは一瞬で真っ赤になり、

 そのまま椅子に沈み込んだ。


「む、無理……

 今日……無理……

 お前……

 反則……」


「え?」


「な、なななんでもねぇ!!」


 あおばは顔を覆い、

 完全に崩れた。


(もう……反則級に可愛い。こっちが反則じゃなくて、あおばの方が反則じゃない……?)


 でも、星が流れる中、

 二人の手は離れなかった。

 

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