あおば、逃げたのに戻ってきて更に地獄
あおば、逃げたのに戻ってきて更に地獄
「で、結局さ」
「……なんだよ」
「……また何か言うんですか」
「誰が一番せなのこと好きなんだよ」
空気が止まった。
「やめろぉぉぉぉぉ!!!!!」
「俺だろ」
「……僕も好きですよ」
「俺も好きだぞ」
「やめてぇぇぇぇ!!」
あおばは真っ赤になって震える。
あおば(言えるわけねぇだろ……
みののこともあるし……
せなのこと好きなのも……
絶対言えねぇ……
言ったら終わる……
終わる……!!)
「す、好きじゃない!!
好きじゃないけど!!
でも!!
なんか!!
モヤモヤするんだよ!
それ以上はない!!
絶対ない!!
ほんとにない!!
みののこともあるし!!
色々あるし!!
だから!!
言えるわけないだろ!!!!!」
「みののこと言っちゃったな」
「……完全に詰んでますね」
「お前、隠す気ゼロじゃねぇか」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
---
突然――
あおばはバッと立ち上がった。
「もう無理!!
俺、帰る!!
今日は無理!!
ほんと無理!!」
「逃げた!」
「……あれは限界ですね」
「………………」
せなは顔を隠したまま固まっている。
---
廊下の向こうへ走っていったあおばが――
なぜかすぐ戻ってきた。
「……っ!」
「え?」
あおばはせなの方へまっすぐ歩いてくる。
顔は真っ赤。
でも目は必死。
「せな!!」
「な、何......?」
あおばはせなの目の前まで来て、
何か言おうとして――
「………………っ」
言えない。
“好き”と言えない。
“みの”のこともある。
“可愛かった”と言ったのも聞かれてる。
全部が頭の中でぐちゃぐちゃになっている。
「……あ、あの……
さっきの……
全部なしだから……
ほんとに……
忘れて……
頼む……」
「む、無理……!!」
せなは真っ赤になって後ずさる。
「ちょ、ちょっと待て!!
忘れてくれ!!
頼む!!」
「無理!!」
「なんでだよ!!」
「恥ずかしいから!!」
「俺もだよ!!」
「知らない!!」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
---
せなは耐えられなくなって、
自分の部屋へ走り込んだ。
「もう無理!!
今日は無理!!」
バタン。
「逃げたな」
「……あれは限界ですね」
「………………」
あおばはその場で固まる。
「………………
逃げられた……?」
「逃げられたな」
「……完全に逃げられましたね」
「………………」
---
しばらく沈黙。
「まぁ……
今日はせなも疲れてるだろ」
「……あおばさんも疲れてますね」
「………………」
「………………
俺、帰る……」
「俺も」
「……僕も」
「………………」
みんな、静かに自分の部屋へ戻っていった。
廊下には、
さっきまでの騒ぎが嘘みたいに
静けさだけが残った。




