カップル限定レストランに誤突入してしまった二人
カップル限定レストランに誤突入してしまった二人
あおばが最初のデート相手に決まったあと、
ひばりの部屋に微妙な沈黙が落ちた。
せなは真っ赤。
あおばは耳だけ赤い。
「……じゃ、じゃあ……
着替えて……行くか……?」
あおばが普通の声で言う。
でも、少しだけ語尾が揺れている。
「う、うん……」
二人はそれぞれ着替えて、
ひばりの部屋を出た。
---
外に出て歩き始める。
……無言。
……ずっと無言。
せな(……無理……気まずい……
なんでこんなに心臓鳴ってるの……)
あおば(……距離……近い……
なんでこんなに意識してんだ俺……
みのじゃないのに……)
二人とも、
歩幅だけはぴったり合っているのが余計に気まずい。
しばらくして――
あおばが口を開いた。
「……あのさ」
「っ……な、なに……?」
「……そんな緊張すんなよ。
普通に歩くだけだし」
声は普通。
でも、耳は赤いまま。
「……あおばだって緊張してるじゃん……」
「してねぇし」
即答。
でも耳はさらに赤くなる。
(……可愛い……)
---
歩いていると、
ふと視界に入った。
“カップル限定”
と書かれた、雰囲気のいいレストラン。
「……あ……」
「……ん?」
二人とも立ち止まる。
その瞬間、
店員が笑顔で近づいてきた。
「いらっしゃいませ!
カップルのお客様ですね、どうぞこちらへ!」
「「えっ!?」」
気づいた時には、
二人は店内に案内されていた。
席は向かい合わせ。
距離が近い。
あおば(……近い……無理……)
せな(……近い……無理……)
二人とも顔が赤い。
---
あおばはせなの横顔をちらっと見る。
(……なんで……
こんな赤いんだよ……
前まで照れてなかったくせに……
……可愛すぎんだろ……)
でも表情はいつも通り。
ただ耳だけ赤い。
---
料理が運ばれてきた。
二人とも、
フォークを持ったまま固まる。
せな(……食べるだけなのに……
なんでこんなドキドキするの……)
あおば(……距離……近い……
息……浅い……)
そして――
せなが勇気を出して口を開いた。
せながフォークを持ち、
真っ赤になりながら言った。
「……アーンしてあげるから……
……口、開けて……?」
「…………は?」
その瞬間、
あおばの思考が一瞬止まった。
表情はいつも通り。
でも、耳が一気に赤くなる。
(……は……?
アーン……?
いやいやいや……
無理だろ……
距離……近い……
息……浅……)
「だ、だって……
一応……対決だし……
一応今は……カップルってことで……
べ、別に……照れてないから……!」
せなが顔は真っ赤だ。
あおばは目をそらしながら、
声が少しだけ弱くなる。
「……いや……
照れてんじゃん……」
「照れてない!!」
あおば(……いや照れてるだろ……
なんでそんな赤いんだよ……
可愛すぎんだろ……
前までこんなじゃなかったのに……
なんで……)
せなはフォークを差し出す。
「……ほら……」
あおばは息を吸い、
ほんの少しだけ小声で。
「……マジで……やんの……?」
「やるの!!」
あおばは観念したように、
でも目をそらしたまま、
ゆっくり口を開けた。
「……っ……」
フォークが口に触れた瞬間、
あおばの肩がびくっと動く。
(……近……
無理……
なんでこんな……
心臓……やば……)
でも外側はギリギリ平静。
せな(……可愛い……)
あおばはフォークを持ち直す。
「……ほら」
「えっ……」
「……お前も……
食えよ……」
声は普通。
でも目が泳いでいる。
「む、無理……!」
「さっき俺にやっただろ。
ほら」
あおばは照れている。
でも崩れない。
ただ、最後の一言だけ小声。
「……食えよ……
……せな……」
せなは真っ赤になりながら、
ゆっくり口を開けた。
あおばはそっと食べさせる。
その瞬間――
あおばの心臓が跳ねた。
(……なんで……
こんな……
可愛いんだよ……
反則……)
でも外側はギリギリ平静。
「……食ったな」
「う、うん……」
二人とも、
心臓が爆発しそうだった。




