名前になれなかった"しゅ"の破壊力
名前になれなかった"しゅ"の破壊力
「……誰なんだよ……
“しゅ”って……」
なぎとの低い声が落ちた瞬間、
空気がぴんと張りつめた。
せなは息を呑む。
胸がぎゅっと縮む。
(やばい……!
“しゅい”って言いかけた……!)
「……しゅ……?」
しゅいは一歩だけ前に出た。
その動きはゆっくりなのに、
耳まで真っ赤。
「……も、もしかして……俺……?」
声が上ずっている。
落ち着きなんて一ミリもない。
せなは反射的に叫ぶ。
「ち、違う!!」
「っ……!」
しゅいの目が一瞬で泳ぎ、
顔がさらに真っ赤になる。
「い、いや……別に……
違うなら……いいけど……」
“いいけど”と言いながら、
全然よくなさそうに視線をそらす。
(かわいい……じゃなくて!!
なんでそんな聞き方するの!!
心臓止まる!!)
---
「お〜いしゅい〜?
“俺?”って聞くの、
だいぶ勇気出したな〜?」
「うるせぇよ」
しゅいはそっぽを向くが、
耳はさらに赤くなる。
「いやでもさ、
“俺?”って聞いた瞬間の顔、
めっちゃ告白前だったぞ?」
「黙れって言ってんだろ!!」
しゅいが真っ赤で怒鳴る。
---
「しゅい、顔真っ赤だよ〜?」
「赤くねぇ!!」
「いや赤いよ。
せなが“しゅ”って言った瞬間からずっと」
「赤くねぇって言ってんだろ!!」
(赤い……!
めちゃくちゃ赤い……!)
せなは心の中で叫ぶ。
---
「せな、
“しゅ”って言った時、
しゅいの方見てたよね」
「み、見てない!!」
せなが即否定。
「見てたよ」
らおは優しく断言。
「らお!!!」
せなは真っ赤。
ずっと黙っていたなぎとが、
急に息を吐いた。
「……はぁ……」
そのため息は、
明らかに“落ち着いてない”音だった。
「……もうやめろよ」
声は低くて、
いつもより少し荒い。
「せな、困ってんだろ」
「な、なぎと……?」
なぎとはせなを見ず、
手で髪をぐしゃっとかき上げる。
「……なんでそんな追い詰めんだよ」
その言い方は、
怒っているようで、
でもどこか焦っている。
「……聞かなくていいだろ、そんなの」
(え……?
なんでそんな言い方……?)
せなは胸がぎゅっとなる。
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「お〜いなぎと〜?
なんか刺々しいぞ〜?」
「嫉妬……?」
たゆとが素直に言う。
「は!?
してねぇし!!」
なぎとが真っ赤になって怒鳴る。
「してる〜」
みおとがニヤニヤ。
「してねぇって言ってんだろ!!」
なぎとがさらに赤くなる。




