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6歳1月(17)

6歳1月(1)~(23)までの23話分がひとまとまりのお話しです。

『劇場版 いうこときかない黒姫の失敗 ~探検テテの町~』

6歳1月(17)


最初に動いたのはオニカだった。

オニカは柄が折れると同時に武器を手放し、そのまま頭突きを喰らわせる。

頭突きを鼻に喰らった大男幹部も棍棒を手放し、そのまま二人は頭の上に挙げた両手をガッチリと組みあって力比べが始まる。


「オマエ、馬鹿。オレの方が重い、大きい。力比べ、絶対負けない。」


不敵な笑みを浮かべて大男幹部が体重に任せてグイグイとオニカを押していく。


「ふふ、おいらは知っているんだぜ。本物の力は見せかけの大きさじゃ分からないんだって。それを思い知らされてから、おいらは必死になって真の筋肉を鍛えてきたんたぜ! そんな張りぼての筋肉で勝てると思うなって! ふんごぎぎぎぎっ!」


オニカはほとばしる気合と共に、一気に押し返す。そして組んだ両手を頭の上から腰の下まで大きく回す。腰の入った姿勢のオニカに対して、大男幹部はつま先立ちになって苦しそうだ。


「ありえない……。なんでオレ負ける……。」


「ふんがああぁぁぁっ!」


オニカの爆発のような雄叫びと共に、骨が砕ける鈍い音が響く。


「ぐあああぁぁ!」


大男幹部は悲鳴をあげて手を放し、顔の前に手を上げるが、その両手首は重力に負けて垂れ下がり、動かない。しかし今度はブラブラとした手首をそのままに腕を振り回してオニカに襲い掛かる。


「許さない……許さないー!」


オニカはその腕を掻い潜り、大男幹部の腰に両手を回す。


「諦めが悪いぜ!」


オニカは両手でパンツの紐を掴み、上へと持ち上げる。大男幹部の両足が浮き上がる。


「やめろ! パンツがっ! オレのパンツっ!」


「これで、おいらの勝ちだぜ!」


大男幹部の体重を持ち上げて伸び切ったパンツは、オニカの腕力に耐えきれずに引き千切られた。もはやパンツではなくただの紐である。


「ぎゃあああぁぁぁぁっ! パンツぅぅぅっ!」


パンツという心と身体の支えを失った大男幹部は力無く地面に崩れ落ち、ノーパンになった腰をビクンビクンと振るわせて、よだれを垂れ流し、白目を剥いている。

やだ、絵面が汚いわ。


「貴様らっ! よくも弟パンツを! 喰らうべ!」


弟だったんだ? しかも人じゃなくてパンツが破れた方にショック受けてる?

そんな私の突っ込みを待つことなく、今度はチビデブ幹部がカイサに凄い勢いで石を放つ。真っ直ぐにカイサに向かった石は途中で矢にぶつかって地面に落ちる。


「なんだべ! ありえないべ! あのスピードの石を矢で撃ち落とすなんて、できるはずないべ!」


「正確無比な投石というのは本当だったのである。お蔭で狙い易かったのである!」


「まぐれで調子に乗るなだべ!」


慌てて次の石を挟み、投石紐を回そうとしたその時、その投石紐が矢で切り裂かれた。


「これでもう投石もできないのであるな。近寄っての攻撃方法が無いのなら、自分の弓が負けるわけないのである。諦めてそのパンツを脱げば許してやるのである!」


「くそ! くそくそくそっ! これでも喰らうべ!」


背後に置いてあった大きな袋を持ち上げると口を開けて中身をぶちまける。袋の中身は白っぽい粉で、煙幕のようにチビデブ幹部の身体を隠す。


「無駄である! 心の眼で見ていれば矢は外れないのである!」


カイサが連続して2本の矢を放つと、チビデブ幹部の悲鳴が聞こえてきた。


「げびゃああああぁぁっ! パンツが! パンツぅぅぅぅ!」


煙幕が晴れて見えたのは、腰の両側が切れたパンツを手に握ったまま倒れているチビデブ幹部が、ノーパンになった腰をビクンビクンと振るわせて泡を吹いて気絶している姿だった。

やだ、本当に絵面が汚い。


最高幹部の2人が倒れた姿に動揺したのか、他のパンツたちも次々と倒されていく。

最後の1人のパンツをアディルの短槍が切り裂き、パンツだった男は悲鳴をあげて地面に転がった。気を失ったようで、起き上がる気配はない。やっぱりこいつらの本体はパンツなのだろうか。


「いよいよ最後よ。この扉の向こうにフマとジョイスがいる。覚悟は良いわね?」


みんなの顔を見渡す。みんな疲れて消耗しているけど、その目の輝きは変わっていない。


「さあ、行くわよ!」


「「「おう!」」」



◆◆◆



私が先頭になって扉を開けて中へ入る。

扉の先は隣の倉庫になっていたのだろう。そこは何も荷物が無く、ガランとした広い空間だった。

壁の高い位置には大きな窓がいくつもあり、月明かりが差している。そして部屋の中央には円形を描くように8つも置かれた篝火かがりびが、その中央に転がるフマを明るく照らす。


「フマあにじゃ! 生きているの!?」


私の呼びかけにピクリとも動かない。うつ伏せに倒れたまま捲れ上がったフマの腰巻、その下には……パンツ!?


「あーっはっはっは! 手遅れだったねぇ。そいつはもうパンツを穿かされちまったんだよ!」


笑い声のする方を向くと、そこには壁から伸びる鎖に繋がれたジョイスが倒れており、その脇に立つのは、パンツ屋台のセクシーお姉さん!?


「あなたがパンツ愛の団のボスだったのね!」


「そうさぁ。あたいの野望、パンツを世界中の男に穿かせるために作ったのがパンツ愛の団さね。ここまで来るなんて大したものだよ。おまえらもパンツにしてやろうか!」


「なんでジョイスやフマを攫ったのよ! 目的は香辛料でしょ!」


「そうだねぇ。香辛料を拾ったという女を最初に攫ったんだけどね、もう売っちまったっていうから、それを買い取った商人も聞き出して攫ったのさ。」


「じゃあ、もう用はないでしょ! ジョイスとフマを返して!」


「もう用はないわねぇ。香辛料も、買い取った金も、丸ごと全部頂いちまったからね。」


「だったら!」


「だが、返すわけにはいかないね。あたいの可愛いパンツたちを随分と減らしてくれたみたいじゃないか。この男にはその補充としてパンツになってもらわないとね!」


フマが苦しそうに動きだし、息も絶え絶えに声を上げる。


「リルカ……、みんな……、逃げるだす! わては……もう……ダメだす。パンツが……パンツが気持ち良いだす。わての心はもう……パンツに首ったけだす!」


「まだあたいのパンツに抵抗できるなんてやるじゃないか。でもあと少しでこいつの心はパンツで満たされる。あたいの言いなりパンツの出来上がりだよ!」


「なんで、なんでこんな酷い事を!」


「さっきも言っただろ? あたいは世界中の男にパンツを穿かせるまで止まらない暴走カバなのさ。

まだあたいが少女だったころだよ。あたいとあの人は愛し合っていた。あの人こそ私の全てだった。

ある日、ツェンベレ川を流れるたくさんのバナナを見つけた。おそらく上流でバナナを積んだ船が落したのであろうバナナ。それを拾おうとあの人は川に入っていった。その日たまたま替えのパンツも含めて洗ってしまっていたあの人は、いつもなら穿いているパンツを穿いていなかった。

あの人は軽々と泳いでバナナを集めた。

だけどその時、悪魔がやってきた。

ツェンベレ川の主と呼ばれる怪物魚が、あの人のあそこをバナナと間違えて喰いちぎったの。

あの人は辛うじて命を取り留めたけど、傷が塞がると同時に私の前から消え去ったわ。

……。

あの日あの時あの人が、パンツさえ穿いていれば!

あたいは全てを失わなかったのに!

だから私はパンツに誓った!

世界中の男にパンツを穿かせるまで、例えこの身体が業火に焼かれても止まらないと!」


「くっ! なんという方向を間違えた誓いなの。でもフマはパンツなんかに負けないわ! 今助けるから頑張って!」


「初めてのパンツ……たまらんだす……。」


「もうフマも限界だ! あのパンツ女を倒してジョイスとフマを助け出すぞ!」


アディルが盾を構えて前に出る。オニカとカイサがそれに続く。


「ふん、何の策も無くここに迎え入れたとでも思っているのかい? パンツたち、入りな!」


パンツボスの号令で、倉庫の両側にある扉が開き、ぞろぞろとパンツ一丁の男たちが入ってくる。その数は10、20、30……。50人近い。

さっきの10人でも厳しかったのに、この人数は不意打ちでどうにかなる人数差ではない。

相変わらず背中を向けて、お尻にキリリとえくぼを作っている。


本気で不愉快だわ。


「ここまで辿り着いたあんたらに対して油断する気はないよ。最初から全力でいかせてもらうさね。パンツたち、力を解放しな!」


パンツボスはそう宣言すると、深くスリットの入ったスカートを自ら捲り上げ、腰の横を紐で結んだだけの布きれ、そう、紐パンをさらけ出した。少し恥ずかしそうに横を向いて俯く仕草がポイント高いわ。思わず10ポイントあげたくなる。


「「「うおおぉっ! ボスの紐パンだああぁっ! みなぎってきたああぁっ!」」」


50人のパンツたちから大歓声が上がる。異様な殺気が倉庫に充満する。

アディルもオニカもカイサも、尋常ではない殺気に気圧されて後ずさる。


目の前にフマが、ジョイスがいるのに手が届かない。


不意打ちもできない、油断もない、気合だけじゃどうにもならない。


どうしたらいい? 私に何ができる? 考えろ、考えろ、考えるのよ!

6歳1月(1)~(23)までの23話分がひとまとまりのお話しです。

2018年1/1の0時から、2時間毎に1話更新予定です。

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