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6歳1月(15)

6歳1月(1)~(23)までの23話分がひとまとまりのお話しです。

『劇場版 いうこときかない黒姫の失敗 ~探検テテの町~』

6歳1月(15)


「あれー。君たち、パンツ穿いてないのー? このラムズィの部下ともあろうものが情けないねぇー。」


「ふん、パンツを愛せない者は中に入る資格はない! 出直せ!」


まずいわ。せっかくラムズィの作戦が成功しそうだったのに、3人のノーパンのせいで台無しになっちゃう。

でも例えここで3人にパンツを穿かせてこようと引き返しても、夜だからパンツを買うこともできない。そのあたりの家を一軒一軒回ってお願いするしかないわ。“どうかパンツを恵んでください。3枚のパンツが無いと友人の命が!”って感じで。

何件もお願いして回ったらきっと“1枚だけならあるよ”って言われて、仕方なくアディルとカイサとオニカの3人で1枚のパンツを穿いて合体して戦うという神話が生まれたり生まれなかったりするんだわ。顔が3つあって腕が6本ある神様の化身となって、バッサバッサと悪者を切って捨てる痛快英雄伝説ね。

……。

こんなことなら昼間の屋台でお兄ちゃんたちのパンツを買っておけば良かったわ。


担がれたまま妄想にふける私の足を、オニカの太い腕がギュッと抱える。

オニカの背後にいたカイサもまた、私の手を取り、ギュッと握る。

ああ、二人も追い詰められているんだわ。オニカの手もカイサの手もじっとりと汗をかき、細かく震えている。そうよね。3人が中に入れなかったら、フマとジョイスを助けられない。命がかかっているのだもの。ノーパンのお兄ちゃんたちが全部悪いんだけどね。


そんな中、アディルが一歩前に進み、オニカの前方に立ちはだかって門番へ向けて威勢良く啖呵たんかを切る。


「馬鹿な勘違いはやめるんだ。パンツはもちろん愛しているぞ! お前らのような馬鹿にはもったいないが、とっておきの大事なパンツを見せてやろう……。」


えぇ!? 3人の腰巻をまくってもパンツは出てこないわよね? 分かっていてその腰巻をまくるというの? 何なの? 馬鹿なの? 気合なの? 気合でパンツは出てこないわよ! あ、御伽話で聞いたことがあるわ。馬鹿には見えないパンツって奴ね。“このパンツは馬鹿には見えないパンツだ!”って言い張って3人で丸出しの股間を見せつけ合い、互いに確かに穿いているって演技をするのね。ラムズィや護衛さんたちも乗ってくれたら門番にも通じる可能性が……。


いやいやいや、私は演技できないわよ! どうして3人のモロ出しの股間を見て平然と“パンツを穿いているわ”なんて言えるだろうか、いや、無理! 絶対に目を背けちゃう。でもそしたらアディルの作戦は失敗してしまうわ。あ、パンツそのものを恥ずかしがる振りをして両手で自分の目を隠し、ほんの僅かに隙間を開けて見る。これだ! これ最強! いや待って、違うのよ私、決して3人のモロ出し股間が見たいわけじゃないのよ。作戦の成否を確認したいだけなんから!


「我々の大事なパンツはこれだ!」


アディルが宝物でも見せびらかすように高らかに言い放つ。

オニカとカイサの手により一層強く力が入る。

やだ。やめてよ。カイサ、手を放してよ。両手で自分の目を塞がないとチラ見できないじゃない。


私がカイサの手を振り払おうともがいている間に、アディルが私のワンピースのスカート部分をまくりあげた。オニカに担がれている私のお尻を守るものは一枚の布きれだけとなり、夜の風に吹かれて涼しい。


「むが……?」


ありのまま、今、起こった事を話すわ!

『私はパンツを見ようと思ったら、いつのまにかパンツを見せていた。』

何を言ってるのか、わからねえと思うけど私も何をされたのかわからない。


「むががーーーーーー!」


ハッと我に返ってまくれ上がったスカートを戻そうと暴れもがくも、足はオニカに強く抱えられ、手はカイサに強く握られている。最初から私が暴れるのを見越した連携だったのね! 3人ともブチ殺す!


「「ううう、うわっ! うわああああぁぁぁっ!」」


突然、門番の2人が大声をあげて激しく海老反りに倒れて苦しみだした。


「こ、こんな小さい子がボスと同じ紐パンだとおおおおぉぉぉっ! ぐわあああぁぁ! 頭がどうにかなりそうだああぁぁっ!」


頭がどうにかなりそうなのは私の方よっ!


「しかも可愛いふさふさ毛のネコの絵だあああぁぁっ! 精神を喰い尽くされるうううぅぅっ!」


ライオンだから! ネコじゃないからね! おタマさんとおスミさんが用意してくれた、ワンピースとお揃いでとっておきのお出かけ用。お洒落可愛いライオンさんパンツだからね! いやそんなことより何故に精神ダメージ!? あ、片方の門番が白目で泡を吹いて痙攣している。精神を喰い尽くされたのね。


「もういい! 早く行け! そのパンツは我々とは格が違いすぎる! ボスでなければ相手できん!」


え? 通してくれちゃうの? 3人のパンツはもうどうでもいいの? しかもライオンさんパンツにやられたような言い方じゃない? 中身の私はどうでもいい感じ?


私が頭の上にたくさんの疑問符を浮かべている間に、ラムズィが扉を押し開く。

苦しみ続ける門番たちを置き去りにして、みんなで中に進み、扉を閉める。


「なーんだー。僕の作戦なんて必要なかったねー。リルカちゃんのパンツであの屈強な門番を2人もイチコロなんて凄い破壊力だよー。最初から見せれば良かったのにー。」


「むががー!」


「リルカちゃん、いいかーい? ここは敵の拠点の中だー。絶対に暴れるんじゃないよー? 大声も出さないようにねー。静かにするって約束できるなら拘束を外して下に降ろすよー。約束できるー?」


「むが!」


私が頷くとラムズィがお兄ちゃんたち3人に促す。

アディルは恐る恐るといった様子で私の口を塞いでいた猿轡さるぐつわを外す。

でもまだオニカとカイサの手は力が入っている。


「リルカ、すまない! 仕方なかったんだ。フマとジョイスの命がかかっていたんだ。」


「自分も合理的な判断だったと思うのであるよ。フマとジョイスの命に比べればリルカのパンツを見せることなんて些細なことである。“象との戦い、足元のウサギを追わず”ってやつであるな。」


「リルカらしい可愛いネコパンツだったぜ!」


「ふう……。いいから降ろしなさいよ。怒らないから。」


緊張した面持ちでアディルがオニカに頷くと、オニカも黙って頷く。

オニカが私を降ろすのを待って、手足の縄を解く。

そのまま無言で手足の具合を確かめるように足を曲げて手首をほぐし、準備運動を始める。

そして3人に背を向けて倉庫の奥を指差す。


「さあ、3人とも、()()わよ。」


お兄ちゃんたちが許されたと思い、ホッとして歩き出そうとする刹那、電光石火のように振り向き、油断した3人の水月すいげつを撃ち抜く。いくら筋肉を鍛えても関係の無い急所のひとつ。軽くでもそこを打たれれば内臓の一部が痙攣けいれんして呼吸困難におちいる。3人は声を上げることもできずに両膝を折り、悶え苦しむ。


「ラムズィ、ちゃんと3人に暴れさせてないし、大声も出させてないわ。約束は守っているよね?」


私は悪い顔になってラムズィに確認する。


「あ、ああー。約束守って偉いねー。」


「アディルにいさん、カイサあにき、オニカあんちゃん、とりあえずここは1発で許してあげる。でもフマとジョイスを無事に助けたら、本番のお仕置きが待っているからね。乙女のパンツは代償が高くつくから二度と使っちゃダメよ? あ、怒ってないわよ。怒ってないわ。私を怒らせたら大したものなんだから。でも後でお仕置きの時には本気で怒るから覚悟しなさいよね。」


「「「……。」」」


まだ声が出せない3人が何度も頷いている。

よし、暴れてもいないし、大声も出してないし、怒ってもいない。約束は全部守ったわ!


「さあ、早く立って! ボスは目の前よ!」


3人を引きずり起こして肩で支えながら前に進む。


「フマ、ジョイス、もうすぐ助けに行くからね! 例えこの身体がボロボロに傷付こうとも、絶対に負けないんだから!」


お兄ちゃんたちがパクパクと口を動かしているけど声に出してないから大したことじゃないんだろう。


こうして大ダメージを負いながらも友達を救うために突き進むリルカ探検隊なのであった。


6歳1月(1)~(23)までの23話分がひとまとまりのお話しです。

2018年1/1の0時から、2時間毎に1話更新予定です。

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