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6歳1月(3)

6歳1月(1)~(23)までの23話分がひとまとまりのお話しです。

『劇場版 いうこときかない黒姫の失敗 ~探検テテの町~』

6歳1月(3)


朝起きると見慣れない天井が目に映る。

上半身を起こし、明かりの洩れる木窓を押し開けると、夜には気が付かなかった一面に広がる川面がキラキラと朝日で瞬いており、その上に浮かぶ建物の様な船から立つ柱が2本、ゆっくりと揺らめく。

そうだ。私は違う町に来たんだ。


ブランケットを跳ね除け、ベッドから飛び降りたら顔を洗い、鼻歌を唄いながらおめかしおめかし。

いつもの訓練用の服なんて着て歩いたら“どこの田舎もんだ”とか思われて悲しいもの。

とっておきのお洒落装備を一式、おタマさんとおスミさんに用意してもらったんだから!

ノースリーブで膝丈のワンピースはラミー麻製で軽く涼しい。明るい夕焼けの様な、朱色をベースに、カラフルな黄色でライオンの顏がお腹一面に描かれている。

それだけじゃない頭を飾る組紐。肩には鮮やかな緑の紋様が映えるショール。編み上げの革のサンダル。その他諸々。全身隈無くまなくお洒落完全装備よ!


「じゃじゃーん!どう?」


部屋を出て、廊下で待っていたリルカ探検隊のお兄ちゃんたちに披露すると5人とも固まっている。


「あ、あぁ、いつもと随分違うんだな。」


絞り出すように声を出したアディルは目が泳いでいる。他の4人もまともに私を見ることができないみたい。きっと可愛い私をみて照れているんだわ。


「当たり前じゃない!王都から来たのに舐められちゃいけないわ!私だけでもお洒落しないとね。」


「近所のオバちゃんみたいだす……ぐぶっ」


4人がかりで何かを言おうとしたフマを押さえつけている。


「オバちゃん? って? なに?」


私が眉を顰めて聞くと、カイサが慌てたように説明してきた。


「フマの近所にはお洒落で美人で有名な“オバ”という女性がいるのである! その人みたいにお洒落だという故郷の地元ネタであるよ。なあアディル!」


「そ、そうだな。オバは凄いお洒落さんで、動物の顏が大きく描かれた服と、目も眩むような色使いに皆クラクラだったぞ!」


「ふーん。私みたいに御淑おしとやかな雰囲気が好きな女の子には真似できないわね。」


お兄ちゃんたちは無言で怖い顔になってお互いに目線で会話している。

仕方ないなあ。私のお洒落を褒める言葉に困っているのね。


「そんなこといいから! 早く探検に行こうよ!」


みんなの後ろに回って背中を押すように建物の外へと進むと、廊下にお母様がいて捕まる。


「リルカ出かけるの? 町には危険な人が沢山いるのよ。少しでも危ない人がいたら全力で逃げること! いいわね! 全力よ! 約束しなさい!」


「お母様、そんなに何度も言わなくて大丈夫よ。ちゃんと逃げるわ。」


「探検隊のみんなはちゃんと護衛してね。少しでも危なくなったらリルカを無理やり引っ張って逃げるのよ。任せたからね。」


「「「はい!」」」


忙しそうなお母様は書類を持った兵士と共に大きな机と椅子の並んだ部屋へと消えていく。

きっとお買い物の手続きが忙しいのね。

お父様には“お母様が無駄遣いしないように見張っている”とか言ったけど、そんな暇はないわ!

さあ、交易拠点フェイラから出てテテの町を探検よ!


交易拠点フェイラから出るとそこは町の中心部で広場になっている。昨日は日が暮れる直前で人影もまばらだった広場も、今朝はまだ早い時間から屋台が並んで人が押し寄せ、賑やかな喧騒けんそうが私の心をも騒がせる。

まるでお祭りみたい!


「わては羽毛を買ってくれる商人を探してくるだす!」


フマがいきなり護衛を放棄して人混みに消えていった。

突然の行動に唖然として見送るしかなかった。

テテの町に来たことがあるのはフマだけなんだから、少しくらい案内してくれてもいいのに。


「ま、おいらの筋肉があれば護衛は十分だぜ。」


オニカが護衛のために借りてきた両手斧を背中から抜いて脇腹の筋肉を魅せつけるようにポージングを決める。

ナイスカット。脇腹にアナコンダがグルグル巻きついているくらいバキバキだわ。

アディルは大楯に短槍。カイサは弓を持っている。デデは何も装備していない両手を握って顎の下で揃えて頷いている。可愛い。

フマは特に戦闘力があるわけでもないので、オニカの中では護衛の頭数に入っていなかったみたい。他の3人もすでに諦めた様子。

仕方ないわね、リルカ探検隊マイナス1人だけど、出発よ!


とりあえずフマの事は忘れて、川の上流に向かって道を進み、気になった場所を覗いていく。

早朝なのにお日様は王都周辺よりも遙かに強く照りつけてきて、痛いくらい。

でも何もかも初めて見る物で、暑い事なんて全然気にならない。


だって町を歩く人を見ているだけでも飽きない!

頭に布を巻いたアラブ人! 帽子を被ったポルトガル人! 見たことない装飾の他部族の人たち!

アラブ人は少し浅黒い感じに肌の色が薄くて、髭を生やしているので分かりやすい。たいてい頭に布を巻いている。そしてポルトガル人も初めて見たわ! 白いと聞いていたけど、少し赤みがかっているのは日焼けかしら。おタマさんやおスミさんも日焼けして赤くなった後に少し黒くなるからそんな感じなのかも。

どちらにしても私たちの黒い滑らかな肌が一番美しいわね!


「きゃー! ラクダよ! ラクダ! 荷物を積んで歩いているわ!」


「そんなに騒ぐようなものじゃないのである。ラクダも見たことないのであるか? 行商でたまに王都にも来るのであるよ。」


「私には初めて見るラクダよ! 仕方ないじゃない!」


ある程度道を進むと家もまばらになって、人通りも無くなった。


「これ以上先に進んでも何もないみたいだ。引き返すぞ。」


アディルの号令で皆が振り返ると、そこには炭の様に黒い顔の2人組が立っていた。


「ひゃっはー! ここは通さねえぜ! 穿いているパンツを見せるか、持ち物を全部見せな!」


通せんぼの様に両手を広げている男は頭の両脇が剃られており、中心部だけに髪の毛が立ち並んでいる。このヘンテコな髪型は、いったいどこの部族だろう?

もう一人はよく見るスキンヘッドだけどゲスイ笑みを浮かべて、掌を広げたより長い木の棒が貫通している上唇を左右にレロレロと舐めまわしている。あれは飾りなの? どうやってご飯食べるんだろう?


しかもパンツ? この男はいまパンツを見せろと言っただろうか。乙女である私に向かってなんという無礼な変態野郎。見せるわけないじゃない!

かといって、持ち物も見せてはいけないわ。見るだけとかいって盗むに決まっているんだから。騙されないわよ!

お父様から貰ったお小遣いが盗られたら探検記念のお土産が買えなくなってしまうじゃない。


「おいらパンツなんて穿いてないぜ! 変態野郎共!」


「パンツの代わりに弓矢の腕なら見せてやるのである!」


オニカが両手斧を振り回して変態の前に立ち塞がる。

カイサもオニカの後ろに立ち、弓に矢を番える。


オニカ……カイサ……。パンツ穿いてないの?


「ぎゃはは! おめえらみてえなガキどもじゃあ俺たちを止めらんねえな! この気合の入ったパンツを見ろ!」


変態の2人は突然お尻を向けて腰巻を捲り、汚い生尻を突きだしてきた。その尻には股間から白く捻じれた太い紐がお尻の割れ目に沿って見えている。


「このやべえ食い込みのネジリパンツを見ろ! こいつがパンツ愛の団だあ! 気合入りまくりだろうがあ!」


変態が露出狂にクラスチェンジだわ。

こんな危ない人たちと関わりたくない。

唐突に思い出したお母様の言葉。そう、全力で逃げなきゃ!


「オニカあんちゃん! カイサあにき! 後は頼んだわよ。」


そう言い残した私はアディルとデデの腕を掴んで逃げ出す。


「お、おい! おいらたち置いて逃げるって!?」


「お母様に逃げるって約束したもの! 2人とも私が逃げられるように食い止めておいてね!」


「自分たちを捨て駒に逃げるなんて酷いのである! こんな変態、相手にしたくないのである!」


「大丈夫! 二人ともちゃんと英雄“パンツバスター”として永遠に語り継いであげるわ!」


後ろを何度も振り向きながら必死に走る。ようやく中心部に戻り、人混みに紛れてひと息つく。泣き言を言いながらもちゃんと変態たちを牽制してくれたオニカとカイサのお蔭で逃げることができたみたい。護衛がアディルとデデだけになってしまったけど、目立たなければきっと大丈夫。


あんな危険な人たちが沢山いるのかしら。テテってやっぱり怖い町ね。

気をつけなきゃ!


6歳1月(1)~(23)までの23話分がひとまとまりのお話しです。

2018年1/1の0時から、2時間毎に1話更新予定です。

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