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6歳の11月(16)

【警告解除】普通のお話に戻ります


6歳の11月(16)


私たちが家に着くと、待っていたかのように雨は降り始める。

おタマさんとおスミさんも疲れていたようなので一旦休憩として下がってもらった。

家には食卓を挟んでぐったりとだらしなく座る私とお母様の2人だけ。


「リルカ、今日はどうだった?」


「とんでもない一日だったわ。お母様はいつもこんなことしてるの?」


「リルカが生まれる前にね、この国での子育てが分からなくて、近隣の村の幼い子供たちの様子を見て回ったわ。その当時はほとんどの子供たちが病気や栄養不足でね、母親たちに話を聞くと、生まれた子供が母乳を離れて普通の食事を食べられるようになるまでに、半分以上死んでしまうのが普通だって聞いたのよ。」


「それは聞いたわ。私が今日まで生きていたのは幸運だったのね。」


「そうね。幸運っていうのは間違いないわね。でも私もリルカのために何でもやったわ。リルカはこの世界で二人といない私の本当の家族だから。栄養も衛生もこれ以上ないくらい気を付けて必死だったわ。」


「ありがとう、お母様。あのおデブな母親に言われたこともちゃんと理解できたと思うわ。全部正しいわけでも、全部間違っているわけでもないって。それにお母様が私を大事にしてくれているのも理解できたわ。お母様大好き!」


お母様はきっと、今日の三段デブ母に言われたことをフォローしてくれている。

どの母親も何人も子供がいるのを見てきたからこそ、お母様の子供が私一人だけなのを不思議に思っていたけど、お母様にこれだけ大事に思ってもらえるなら余計な心配は必要ないわ。安心して甘えられるお母様って本当に大切な存在ね。


「それにリルカ、女の子は6歳になったら“女子割礼”以外にもうひとつ大事な儀式があるの。普通は6歳で婚約者を決めるのよ。」


「ええー!婚約者!?」


「そうよ、12歳くらいの男の子を婚約者に決めて、将来のお婿さんにするの。でもリルカは自分で5人も男の子を捕まえてきちゃったから困っちゃったわね。ふふふ。」


「あ、あれは違うのよ!お兄ちゃんたちはリルカ探検隊の隊員なんだから!」


「探検隊?5人もお婿さんを連れて旅をするのね。お父さんはリルカの結婚に反対だから何もしないけど、普通なら婚約者を決めるのに大変な騒ぎよ。」


「もう!そういうのと違うんだから。私は結婚なんてしないの!世界中を旅するんだから。」


「ふふふ。さっきは結婚できないの?なんて言ってたのに。まあ、それはそのうちね。」


「あ、でも今日、村を見ていて気が付いたのは、女性は小さな子供から大人まで、みんな家事を頑張ってしていたわ。広場に集まった女の子たちもみんなお水を汲むツボを持ったままだったり、薪を拾った帰りだったり。私は家事を何もしなくていいのかしら。」


王家でも他の小宮の女性たちは頑張って家事をしているみたいなのに、うちの家事や身の回りの雑事は、侍女であるおタマさんとおスミさんの2人がやってくれていて、その二人ですら水汲みや薪拾いは、商人に頼んで集めさせている。うちのお母様は家事なんて飛び越えちゃって活躍しているから対象外として。私も学校に行って訓練して、それが終わったら毎日フラフラと遊んでいるけど、他の人たちとあまりに違う生活だから、何もやっていなくていいのかなって少しだけ不安になる。


「家事はリルカがやりたければやればいいし、他にやりたいことがあるならそれをすればいいわ。せっかく王女として生まれたのだからそのくらい自由になさい。でも家事の代わりにやらなきゃいけないことも沢山あるわ。たぶんそっちの方がずっと大変よ。気にする必要は全然ないわね。」


言われてみれば、訓練でしごかれたり死にかけたり、今日みたいに散々な思いをすることもある。この先も他の人が知らないような嫌なことや、やらなきゃいけないことも沢山あるのだろう。家事をやるかどうか、なんて些細なことね。


「ありがとう。気になっていたからお母様がそう言ってくれて助かるわ。」


「それはそうと、あのリルカのトイレでプリプリの歌は、あの場で即興で考えたの?みんなにトイレを覚えてもらうための歌としてはとても良くできていたわ。」


「そうよ!歩兵部隊のアレク大隊長との模擬戦では常に歌いながらになるから、即興の歌が鍛えられるのよ。歌の前にはおタマさんやおスミさんにアドバイスも貰ったりして少し考えたわ。それに歩兵部隊の奥義、“歌と踊りで覚える集団行動”の応用よ。あのシンプルな歌と踊りなら小さな子供も覚えられるし、口ずさんでいるうちにトイレが当たり前になるわ。」


「そこまで考えてあるなら最高ね。リルカには今度から国内の色んな村で歌って踊ってもらうわ。それに次は蚊帳をみんなに使ってもらうための歌も考えておいてね。この国で初めてのアイドル誕生ね!」


「みゃはは!アイドルだなんて。なんだか恥ずかしいけど嬉しいな。次は蚊帳、蚊帳かあ。」


「ふふ。次の歌も考えておいてね。それにしても早く帰ってきちゃったから夕食まで時間が空いちゃったわね。雨が降っているから外にも出たくないし、いっそ贅沢にリルカと一緒にお昼寝しちゃおうか。」


「わーい。賛成よ!」


寝室に移って蚊帳に潜ってベッドに転がると、今日の疲れが胸の奥から流れ出るように溢れてくる。

今日の最低な記憶を忘れられるように、お母様に抱きついて幸せなことだけ考えよう。


ちなみにお母様がいない時はおタマさんやおスミさんに添い寝してもらうときもあるの。

みんなそれぞれ抱き心地が違っていて幸せなのよ。


おスミさんはそんなに背は高くないけど身体が細くて胸が無いの。胸が無いのは言うと怒るからおタマさんと一緒に言わないように気を付けている。

おスミさんは抱きつくと腰が細くてビックリするけど、骨がゴツゴツしない、しなやかな感じで大好き。


ちなみにおスミさんの顔は切れ長な目で鼻も小さくて美人顔。いつも冷静ですましてて、頑張ったり興奮するとちょっと棘がある声を出すけど、怒っているわけじゃない。私が悪い事をすると淡々と叱られて、軽く叩かれることもある。でも頻繁に抱きしめてくれるからおスミさんも私を大切にしてくれてるのが分かるの。


おタマさんは小柄で少しぽっちゃりしててモチモチお肌。抱きつくとむちゃーって柔らかくてこれもまた大好き。おスミさんとは姉妹なのにあんまり似てないね。

顔もたれ目で団子鼻で可愛らしい顔。いつもニコニコしてのんびり喋る。優しくてぜんぜん怒らない。一番年齢が近いからか、いつも私を甘やかしてくれるの。それでお母様やおスミさんに叱られていることもあるわ。喋り方が少し不思議な感じで訛っているけど、おタマさんが生まれた土地の言葉を大事にしているんだって。


2人ともお仕事中は髪をお団子にしているの。おタマさんは左右に団子2つ。おスミさんは後ろに団子1つ。でも一緒に寝るときには髪をほどいてくれて、それがまたまっすぐサラサラで艶やかな黒髪なのよ!日焼けしているとはいえ私達よりはるかに白い肌との対比が本当に綺麗なの。

私たちはみんなチリチリな髪の毛だから、あんなにまっすぐでサラサラな黒髪は憧れちゃうわね。


でも私が抱きつくのは誰よりお母様が一番好き!背が高くてすごく強い弓のように鍛えてあって、でもおっぱいも大きくて、いつも良い匂いがしているの。夜寝るときは今日みたいに添い寝しながら色んなお伽話をお話してくれて、一番好きなのは遠い遠い魔法の国で、私がリルカじゃなくてリカって名前でお母様と一緒に生活してるお話。考えられないくらい欲しいものがなんでもある魔法の国でお母様と楽しく暮らしているお話を聞くと何とも言えないくらい幸せになるの。いつかそんな魔法の国に行ってみたいわ。


ふわわ。お母様に抱きついて幸せなことばかり考えていたら眠くなってきたわ。

起きたらきっとおタマさんとおスミさんの美味しいご飯が用意してあるわね。

おやすみなさい。


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●今月のお母様のお取り寄せ万歳!『ラミー(ramie)』


ラミーは苧麻チョマとも呼ばれる植物。

主に麻生地の元になる繊維を取るために栽培され、紙や布生地を作ることができる。


麻とは、植物の茎や葉から作った繊維の総称で、人類が最初に作った布は麻で作られた可能性が高い。

その中でも茎の靭皮部分ジンピブブン、つまり外皮のすぐ内側にある柔らかな部分から作るものは 靭皮繊維ジンピセンイと言い、苧麻チョマ亜麻アマ黄麻ジュート大麻ヘンプなど種類がある。

それに対して葉っぱの筋、葉脈から作るものは 葉脈繊維ヨウミャクセンイと言い、サイザル麻 マニラ麻などがある。

苧麻チョマ亜麻アマは柔らかいので衣料用に。それ以外は硬いので麻袋やロープなどに使われる。


将軍がラミーをお取り寄せした理由は、ラミーが中国原産で、100年以上前に明の鄭和が率いる大艦隊がインドのカリカットを越えてアフリカ東部まで到達して以降、定期的に中国商人がカリカットまで来ていることから、ラミーも持ち込まれていると考えられた。その予想通りお取り寄せはカリカットから届いたのでそれほど時間がかからなかった。


ラミーの生産が安定するまでに2年以上かかったが、ようやく出荷量が安定したラミーによって、工作部隊では製紙や麻生地による服などの生産が盛んになり、書類が増えることで補給部隊の隊長ミンが泣くことになった。

次から6歳12月に

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