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6歳の11月(12)

【警告】今回はウン●話のため。

【警告】食事中の方は後ほどお読み下さい。


6歳の11月(12)


「さあ!次は村の衛生教育よ。リルカは衛生学をちゃんと勉強した?」


「もちろんよ!学校の成績だって良いんだから!」


「じゃあ村の人たちへの衛生教育任せたわ。私は色々準備してくるから、おタマちゃん、おスミちゃん、リルカに指導よろしくね!」


お母様が慌ただしくギンシャリに飛び乗って走り去るのを、村長を乗せたレンジャー部隊の2騎が追いかけていく。


3人でお母様を見送ると、おタマさんとおスミさんは私に向き直る。


「リルカちゃん、本当ホントに衛生教育を任せてよかと?」


おタマさんがほんわか優しい口調で心配してくる。


「大丈夫よ!おタマさん。いつもお母様やおタマさん、おスミさんに言われて、おうちで普通にやっていることよね。お外からおうちに帰ってきたら手を洗ってうがいするとか。トイレ使ったら手を洗ってちゃんと手を拭くとか。私はなんだか当たり前にやっているけど、みんなはどのくらい知らないんだろう。」


「ゼロ、だと思って。何も知らないと思って教えるの。今日の衛生教育の目標はみんながトイレを使うようになること。リルカ姫、トイレを使わない場合に発生しやすい代表的な感染症は分かる?」


おスミさんが触れると切れそうに冷たい口調で突っ込んでくる。


「コレラ・赤痢・腸チフスよ。糞便に汚染された水、食べ物を口にすることで感染するわ。ちゃんと学校で習ったんだから!」


「その対策は?」


「対策は……。えーと。ちゃんとトイレを使って手を洗うことかな?」


「それが基本。でも人に教えるなら全然足りない。水源を汚染しないトイレの設置方法や糞便の処理方法から、使う人の手洗いや手を乾かすところまで完璧に覚えて。」


「わわっ。細かいのね。」


「リルカちゃん、それで人の命が何十人も何百人も救えるけんね、応援しとるばい。」


おタマさんが鼻歌でも始まりそうなほど呑気な声で言ってくるけど、これはとっても真面目な話だから言葉以上に真剣に受け止めないと!


「が、頑張るわ!」


「一番難しいのは、現場への落とし込み。つまり“どうやってみんなに守ってもらうか”。村人の命はリルカ姫の教え方にかかっている。」


おスミさんが凍てつくような視線で見つめながらプレッシャーをかけてくるけど、これはおスミさんがいつも通り頑張っているだけ。言葉以上に深読みする必要は無いから気楽に聞いておく。


「うーん。教え方なんて学校で習ってないよ。コレラや赤痢、腸チフスがすっごく怖い病気だってことを説明して、その感染経路を説明して、きちんとトイレを使ってもらうかな。」


「いきなり病名を言われても、みんな意味が分からんたい。リルカちゃん、おうちで最初にそんなこと説明されたと?」


「私は病気の事も感染経路も説明されなかったわ。何も考えずにお母様やおタマさんやおスミさんに言われるとおりにやっていただけ。その理由を知ったのも最近だわ。」


「そうたいね。最初は意味が分からなくても良いから、言われるとおりやるのが重要たい。」


「でも“トイレ使って”って言うだけじゃ、みんな面倒くさがってやってくれないわよね。」


「リルカちゃんは教えるのが初めてだけん、複雑に考え過ぎたい。学校では衛生学はなんて習っとーと?」


「衛生のルールは全部、お母様が国全体にかけた白魔術の儀式で、守らないと神の怒りや黒魔術で死ぬって習ったわ。あれ、白魔術……?」


「そう、白魔術たい。」


おタマさんはニコニコと頷く。


「そっか、白魔術はまさに魔法の言葉なのね!みんな理由が分からなくても白魔術の儀式なら守らないといけないし、衛生のルールを守らなくて病気になるのも、白魔術の儀式を守らなくて黒魔術で病気になるのも同じ事よね!」


「これでみんなに教えられると?」


「バッチリよ!おタマさん、ありがとう!」


さっそく村人が集められた広場へと荷馬車に乗って向かう。

広場は村の真ん中にあり、一段高いステージが用意されていた。


「うわー、思ったより人が沢山居るわ。500人くらいかしら。」


「周辺の村からも集まっている。リルカ姫、やれる?」


「任せて!おスミさん!実は秘密の作戦があるんだから!」


ステージに上がると前方には500人の人々の顔。

緊張してくると共に、この人たちにトイレを使ってもらいたいという使命感、

それにお母様に今度こそ良いところを見せて褒められたいっていう気持ちで気合を入れる。


後ろを振り向くとおタマさんとおスミさんがちゃんとついてきてくれている。

二人に目を合わせて頷きあう。

改めて前を向くと、500人に届くようにできる限り大きな声を出す。


「みーなさーん♪今日は白魔術の大切な儀式についてのお話でーす♪」


みんなザワザワと落ち着きがない。

ちゃんと聞いてくれる様子になるまで、仰々しく開いた両手を天に向けて、空から落ちてくる何かを受け止めるような姿勢で静かに待つ。


不思議な姿勢をしている私に注目が集まり始めて、徐々に静かになっていき、最後には500人が1つも音を出さず、固唾を飲んでステージ上の私を見つめている。


ここでさっきから胸の中で密かに温めていた作戦を行動に移す。


「トイレ♪トイレ♪プリプリ♪トイレ♪」


(トイレ、で左を向いて左手で目の上にひさしを作って、キョロキョロと何かを探す)

(トイレ、で右を向いて見つけた!と右手で指差す)

(プリプリ、で両手をガッツポーズで肩まで上げて、足を揃えて左右にお尻を振る)

(トイレ、で左ひじを大きく前に出し、水平に伸びる左手の下から右手を真っ直ぐ縦に付けて大きくTの字でトイレアピール)


私の全身を震わせた大きな声が、赤茶けた大地に陽気なリズムを刻み、雲の多い空に響き渡る。

即興で紡いだ言葉は歌に変わり、全身が楽しい感情を爆発させるように踊り出す。


「トイレ♪トイレ♪プリプリ♪トイレ♪さあ、みんなで一緒に!」


「「トイレ♪トイレ♪プリプリ♪トイレ♪」」


子供たちが乗ってきたわ!もう一息!


「「「トイレ♪トイレ♪プリプリ♪トイレ♪」」」


後ろをチラリと確認すると、おタマさんとおスミさんは突然歌い出した私を呆然と見ている。


「おタマさん、おスミさん、一緒にやって!トイレ♪トイレ♪プリプリ♪トイレ♪」


口を開けて見ていた二人は私の呼びかけで我に返り、慌てて私の真似をしてぎこちないながらも踊りだす。

二人のバックダンサーも増えて、観客のみんなもどんどん真似しはじめている。

私も身体が弾むように動き出す!気持ちが盛り上がってきたわ!


「トイレ♪トイレ♪プリプリ♪トイレ♪」


「「「「トイレ♪トイレ♪プリプリ♪トイレ♪」」」」


「トイレで♪プリプリの歌♪いっくよー♪」


(トイレで、でTの字アピール)

(プリプリの歌、で軽く脇を締めたガッツポーズをしながらお尻を左右に振る)

(いっくよー、で軽くジャンプして足を肩幅に開き、左手を腰に当てて、右手の握り拳を天に突き上げる)


「「「「トイレ♪トイレ♪プリプリ♪トイレ♪」」」」


「トイレは♪白魔術♪トイレは白魔術♪」


(トイレで、でTの字アピール)

(白魔術、で両手で自分を抱きしめる)

(トイレは白魔術、で弾けるように両手を広げて挙げるとクルリと一回転、右足を頭の高さまで振り上げて足を降ろすと同時に前方を指差すように決めポーズ)


「「「「トイレ♪トイレ♪プリプリ♪トイレ♪」」」」


「プリプリ♪したくなったら♪トイレに入れ♪」


(プリプリ、で軽く脇を締めたガッツポーズをしながらお尻を左右に振る)

(したくなったら、でお尻を両手で押さえて小走り)

(トイレに入れ、で両手で狭い入り口を押し広げるように広げ、一歩飛び込む)


「「「「トイレ♪トイレ♪プリプリ♪トイレ♪」」」」


「トイレが♪無かったら♪土にしっかり埋めて♪」


(トイレが、で左を向いて左手で目の上にひさしを作って、キョロキョロと何かを探す)

(無かったら、で両手の拳を顎の下にそえて困ったように身体をイヤイヤと左右に振る)(土にしっかり埋めて、で両足を左右に開いて、土が被さってくるのを表現するように左右の腕を順番に、身体の横から頭の上まで大きく振りかぶる)


「「「「トイレ♪トイレ♪プリプリ♪トイレ♪」」」」


「ウンチが♪お外にいると♪恐ろしい精霊に変わる♪」


(ウンチが、で軽く膝を折り、しゃがみながら両腕で頭の上に山の形を作る)

(お外にいると、で両手を左右に開いて膝を伸ばし、伸び上がる)

(恐ろしい精霊に変わる、で足をガニ股に開いて足踏みしながら、両肘を肩の高さまで上げて手は襲い掛かるように何かを掴む)


「「「「トイレ♪トイレ♪プリプリ♪トイレ♪」」」」


「ウンチは♪恥ずかしがり屋♪土にしっかり埋めて♪」


(ウンチは、で軽く膝を折り、しゃがみながら両腕で頭の上に山の形を作る)

(恥ずかしがり屋、で両手の掌で顔を隠してイヤイヤと左右に振って恥ずかしがる)

(土にしっかり埋めて、で両足を左右に開いて、土が被さってくるのを表現するように左右の腕を順番に、身体の横から頭の上まで大きく振りかぶる)


「「「「トイレ♪トイレ♪プリプリ♪トイレ♪」」」」


「恐ろしい♪精霊で♪村のみんなが病気になるよ~!」


(恐ろしい精霊で、で足をガニ股に開いて足踏みしながら、両肘を肩の高さまで上げて手は襲い掛かるように何かを掴む)

(村のみんなが病気になるよ、で左右の腕を順番に額に当てて、左右にのけ反る)


「「「「トイレ♪トイレ♪プリプリ♪トイレ♪」」」」


「でもトイレは♪白魔術♪トイレは白魔術♪」


(でもトイレは、でTの字アピール)

(白魔術、で両手で自分を抱きしめる)

(トイレは白魔術、で弾けるように両手を広げて挙げるとクルリと一回転、右足を頭の高さまで振り上げて足を降ろすと同時に前方を指差すように決めポーズ)


「「「「トイレ♪トイレ♪プリプリ♪トイレ♪」」」」


「聖なる♪トイレに♪ウンチを隠そう♪」


(聖なる、で両腕を頭の上に挙げて、両掌をヒラヒラさせながら左右に降ろす)

(トイレに、でTの字アピール)

(ウンチを隠そう、で両腕で頭の上に山の形を作り、そのままゆっくりとしゃがみこむ)


「「「「トイレ♪トイレ♪プリプリ♪トイレ♪」」」」


「トイレで♪プリプリ♪恐ろしい精霊とさよなら♪」


(トイレで、でTの字アピール)

(プリプリ、で両手をガッツポーズで肩まで上げて、足を揃えて左右にお尻を振る)

(恐ろしい精霊とさよなら、でお尻を左右に振りながら両手を開いてバイバイと手を振る)


「「「「トイレ♪トイレ♪プリプリ♪トイレ♪」」」」



大人も子供も男も女も、みんなが私の踊りを真似して歌っている!

手を叩いて足を踏み鳴らしてお尻を振ってもうみんなで馬鹿騒ぎだわ。

トイレを使う使わない以前に、私はこの馬鹿騒ぎ自体が楽しくなってきちゃった。

調子に乗って2番もいってみよう!



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