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6歳1月(24)

全国36人の黒姫ファンのみなさまお待たせいたしました。

戌年なのにモフモフ成分が足らないため書きました。お楽しみください。

6歳1月(24)~(27)の4話分がひとまとまりのお話しです。

本日の9時、12時、15時、18時に各1話ずつ更新予定です。

6歳1月(24)


朝、目が覚めるとサイドテーブルからネコがこちらを見ている。

私は手を伸ばしてネコを撫でる。

ヒンヤリとゴツゴツ硬い感触。木彫りだ。


ジョイスから買った木彫りのネコは、手元に1つだけ残して、すべてお土産としてプレゼントしてしまった。

テテの町の魚屋にいたネコ、可愛かったなあ。

丸くて、柔らかそうで、暖かそうで、フサフサしていて、撫でたかったなあ。


モフモフ、なでなで、モフモフ、なでなで。

妄想の中で撫でるけど経験が無いからいまいち想像できない。


辛い。埋まらない心の隙間。ネコ肌恋しさ。

癒しを! もっと私に癒しを! 心に潤いを! トキメキを!

そうだ、私にはペットが必要なんだ!


◆◆◆


「というわけで、リルカ探検隊のペットを飼いたいと思います!」


いつもの昼休み、いつもの丘の上、いつものリルカ探検隊のお兄ちゃんたち。

いつものリルカ探検隊の定例会議において隊長として提案する私に対して、

またいつもの戯言たわごとが始まったとばかりに面倒くさそうな顔でアディルが返す。


「おーい誰か、そのへんのマイマイでも捕まえてくるんだ。」


「うわっ、ざつっ! 隊長に対してあるまじき雑さよ。マイマイは食べ物でしょ。なでなでモフモフできないじゃない。もっと真面目に考えなさいよ。」


「どうせリルカは世話をしないのである。」


「ペットは餌やトイレや散歩、家畜と同じように手間も金もかかるだす。」


「おいらも動物飼うのは面倒で嫌だぜ。」


「そんなこと言わないでよう。お兄ちゃんたちもテテの町で見たでしょ? ネコ! 可愛かったよね? リルカ探検隊で飼おうよう。」


「ネコはこの辺りにはいないぞ。テテまでまた買いに行くのか? そんな金も時間もないぞ。」


「ペットなんて、リルカの家で好きなのを飼えば良いだすよ。わてらには関係ないだす。」


「お母様に聞いたら病気が危ないからダメって言われちゃったんだもん。みんな酷いわ。デデにぃには可愛いペット欲しいでしょ? あれ? デデにぃに?」


「リルカの話の途中でどっか行っちまったぜ。」


「リルカの提案は、いつもろくな事にならないから、聞く価値が無いってことだすな。」


「うむ、自分たちも解散するのである。」


「うみゃ~! みんな待ってよ~。ネコ恋しいよ~。なでなでモフモフしたいよ~。」


お兄ちゃんたちが宿舎に戻ろうと立ち上がると、デデが帰ってきた。


「ほら! デデにぃにが帰ってきた! あれ? 何か抱えているよ?」


デデが抱えてきたのは小さな子犬。


「デデにぃにが言うには、この子の群れがハイエナの大集団に襲われて、お父さんやお母さんが身を挺して食い止めてくれたお蔭で、幸運にも逃げることができたけど、群れは散り散りになり、子供一匹では狩りもできずにお腹を空かせて震えていたところをデデに拾われたんだって。」


「見てきたような説明であるな。この丸い耳と模様は、リカオンである。犬とかジャッカルの親戚で、群れで行動する動物だから、子供が一匹でいたのは本当に珍しいのである。」


大きな丸い耳が正面を向いていて、クリッとした目が可愛らしい。模様は全体が綺麗な茶色で、目や鼻、口の周りは黒、続けて眉間から頭の天頂を通って背中の方まで黒いひと筋のライン。そして尻尾は真っ白。リカオンは一般的に黒、白、茶色のまだら模様なのだが、この子供リカオンは整った柄をしていて見分けやすい。なによりその気持ち良さそうな毛皮から目が離せない。まだ子供のせいか柔らかそうな毛に覆われていてモフモフ欲が止まらない。


「ねえ、デデにぃに。私も触って大丈夫かな?」


子供リカオンは怯える様子も無く、興味深そうに私たちを見ている。

デデが頷くので、そーっと手を伸ばす。


手が毛皮に触れる。

ふわっとした毛が手を包む。

子供リカオンのぬくもりが伝わってくる。

ゆっくりと撫でるように手を動かす。

手に幸せな感触が残り、心が満たされていく。


子供リカオンが嬉しそうな顔をする。

気持ち良さそうに細めた目と私の目が見つめ合う。

優しそうな目。もっと撫でて欲しいという目。

私の乾いてささくれ立った気持ちが潤い、癒されていく。


もうダメ。

私の心は、この子に陥落してしまった。


「ねえ、デデにぃに、この子をリルカ探検隊のペットとして飼っていい?」


デデはニコニコしながら頷く。

私は問いかけながらもモフモフが止められない。


「みんな! 今日からこの子がリルカ探検隊のペットよ!」


「おい、勝手に決めて、誰が世話するんだ?」


「誰の金で世話をするだす? わては持ってないだすよ!」


「おいら、面倒なのは嫌だって。」


「リカオンなんてその辺にいくらでもいるのである。わざわざ飼う必要なんてないのであるよ。」


「なによ! みんなこれを味わってから言いなさいよ!」


私はデデの抱く子供リカオンを受け取って、アディルに抱かせる。


「みんな一回でいいから、なでなでモフモフしてみてよ!」


言われるままになでなでモフモフするアディルに、子供リカオンは気持ち良さそうに鼻面を擦り付ける。

アディルは微妙な顔で、子供リカオンをフマに渡す。


「ああ、こいつはメスだぞ。俺は用事があったんだ。先に帰るぞ。」


「アディルにいさん……。」


足早に丘を下っていくアディルを見送る。そんなに嫌だったかな。

その間にもフマはひとしきりなでなでモフモフして、子供リカオンをオニカに渡す。


「リルカはこれで満足だすか? わても仕事があるだす。お先だす。」


「フマあにじゃまで……。」


フマはプイっと背中を向けて、逃げるように小走りで去っていく。

オニカはぐりぐりと強めになでなでモフモフして、子供リカオンをカイサに渡す。


「おいらは細々と面倒をみるのが苦手なんだって。日課の筋トレがまだ途中だったぜ。」


「いつでも面倒見の良いオニカあんちゃんが、こんなに嫌うだなんて……。」


オニカは腕のストレッチをしながら歩き去る。

カイサは体格を調べるようになでなでモフモフして、子供リカオンをデデに渡す。


「自分は興味ないのである。今日は弓の練習に行く予定である。」


「カイサあにきは可愛いと思わなかった? モフモフ気持ち良くなかったの?」


カイサは問いかけに答えることもなく、弓を確認しながら去っていく。


「なんでみんな逃げるのよ!」


哀しそうな顔しているデデの顔に、抱っこしている子供リカオンが鼻面を擦り付ける。

こんな優しい子を諦めるわけにはいかないわ。


「デデにぃに、2人でこの子を飼おう。私がなんとか頑張ってみるから!」


デデと子供リカオンが嬉しそうにこちらを見る。二人ともすごく可愛い。

このあと滅茶苦茶モフモフなでなでした。


◆◆◆


まずは子供リカオンを洗おう。ちょっと臭いわ。

大きなタライに水を入れて、じゃぶじゃぶじゃぶ。

子供リカオンは嫌がることもなく気持ち良さそう。

タライから出るとブルブルブルンと身震い。

私もデデもびしょ濡れになって笑ってしまった。

綺麗になってさらに可愛さアップね!


次は餌。

リカオンは肉食らしいから、肉がいいのかな。

家の厨房に戻って、おタマさんにお肉を頂戴ってお願いする。

何のお肉? と聞かれて、何でもいい! というと不思議な顔をしていたけど、鶏肉をくれた。

まだ子供だから小さく切った方が良いよね。

包丁で細かくしてから葉っぱで包んで戻る。


戻るとデデが子供リカオンに何か教えていた。

おすわり! おて! とってこい!

どれも楽しそうに完璧にこなしている。

凄いわ、この子は頭が良いのね!


まて!

お肉を子供リカオンの前に広げると、

まだ? もういいよね?

といった顔で肉と私の顔を交互に見てくる。

鼻血が出そうに可愛い。

よし!

ガツガツと良い食べっぷり。

食べている間も私のモフモフなでなでは止められない。


デデが教えていた命令を何度も繰り返して一緒に遊ぶ。

心ゆくまで、なでなでモフモフする。


気が付くとそろそろ日が暮れてしまう。

この子をどこで寝かせよう。

私のおうちに連れてくるわけにはいかないわ。

きっとお母様に追い出されちゃう。


この子は全然吠えなくて大人しいから、みんなに気づかれないように幼年兵が寝泊まりする宿舎のデデの寝床へ連れて行くのが一番いいかな。

バレないうちに、この子のために小屋を作らなきゃ。


6歳1月(24)~(27)の4話分がひとまとまりのお話しです。

本日の9時、12時、15時、18時に各1話ずつ更新予定です。

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